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    IKUOが振り返るキャリア30周年の歩みと、3作目のソロ作『SLAPPIN’ DAZE』【後篇】

    • 取材:加納幸児(ベース・マガジン)

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    これはT.M.Rに初めて参加した年のツアーでやっていた曲で、そういう特別な思い入れもありました。T.M.Rでも演奏する際は全部スラップで、ベース・ソロもあるので、これをさらに自分風に、T.M.Rへのリスペクトも込めてアレンジさせてもらいました。オリジナルの音源では打ち込みベース、ライヴでは生ベース、そして今回は新アレンジのスラップで弾いているので、いろいろなバージョンが楽しめると思います。

    サビ前にフレーズを入れ込んだりしていて、シンプルな3コードでバキバキに弾ける曲だからこそ、ベースをフィーチャーできるんじゃないかなって。加えて、当初からベース・ソロをどんどん入れてしまおうってイメージもありました。T.M.Rのファンの人が聴いても、ライヴっぽさを感じてもらえるんじゃないかな。

    本来もっとバキバキにフレーズを入れられるところをあえて入れてないんですよ。そういうのは新たな勉強になりました。僕って基本的に弾きすぎなので(笑)。歌いながら弾けるギリギリのところを狙ったというか、逆にシンプルなカッコよさをイメージした曲です。

    スラップの醍醐味って、詰め込むことではなく曲とバチっと合ったときの空気感だったりする。そういう部分で自然と曲が求めているアレンジのベースになりましたね。基本的に歌メロとフレーズがリンクしていれば少々複雑なフレーズでも歌うことは可能だと思っているので、今回はそういうフレーズが多いと思います。

    作品全体のコンセプトとして、歌がない部分は派手に弾こうと思っていました。サビ前は歌が入っていなくてベースに集中できるので、凸凹にベースと歌の主張が出たり入ったりするイメージで、そういう主張をすることでベースがより印象に残るんじゃないかなと。本来こういう部分ってドラムのフィルとか、シンセでアレンジしたりすると思うんだけど、歌との関係性を考えながら、歌の隙間にベースを嵌み込むという。

    それは歌っていないセクションだからこそ可能だったりするので、そういったスペースにフレーズを入れ込むというのはコンセプトとして持っていました。そして必ず全曲にベース・ソロを入れる。それはプライドというか、あくまでもベーシストのアルバムだという主張ですね。

    実はこの曲もカバーなんです。今作はプロデューサーとしてSHINGOMANに参加してもらったんですけど、この曲は彼が昔やっていたAgitatoというバンドの曲なんですよ。僕はこの曲がすごく好きで、歌わせてもらったこともあるからこそ、この曲をカバーさせてほしいとお願いしました。ベース・プレイとしては、シンプルに原曲の良さを生かした形で、ベースだけスラップにアレンジさせてもらい、ベース・ソロを入れてという感じです。おっしゃるとおり、この曲はそこまで“ベースベース”という感じではなく、ライヴで盛り上がるイメージで、フレーズの塩梅を意識したつもりです。

    ここはギターっぽいソロにしましたね。メジャー・キーなので、メジャー・ブルースのような動きが合うと思ったし、段々激しく展開していくフュージョン・ライクなソロというよりも、“ギターだとこう弾くかな?”ってフレーズをスラップで弾いてみたイメージです。

    今作にはメジャー・キーの曲が多いので、こういうイメージのソロが多いかもしれない。メジャー・キーでのブルースっぽいプレイは意識した部分なんですけど、これは自分としても新しい発見でした。

    ベーシストのルールとして、ソロってジャズ・フュージョンでなければ一拍目は絶対ルート音から入ったほうが耳馴染みがいいと思うんです。なので、ジャズっぽいスリリングさというよりも、ルートから広げていくというシンプルな方向性にしています。あとバッキングからベース・ソロに流れるセクションが多いので、一拍目はルート音で音程を安定させてからフレーズに入るという、バッキングからソロに移行するなかでスムーズに流れるよう構成したつもりです。

    このセクションは決め打ちフレーズで、“テーマ”を弾いているイメージです。こういう曲も作りたかったんですよ。ベースも歌と同じように聴かせるというか、ギターってこういうわかりやすいテーマを弾くじゃないですか。でもベースって、そもそもバッキングをする楽器だからテーマを弾く機会が少ない。だからこそ、バッキングはシンセ・ベースに任せて、エレキ・ベースがテーマを弾くというニュアンスに持っていきたかったんです。

    そうですね。でも正直、このテーマを作るのは難しかったです。“決め打ちがこんなに難しいとは……”って感じで、何種類かフレーズを試したなかで、苦悩した挙句これを採用しました。メロディ感があり、スラップであり、そして“ベース・ソロではなくテーマだよ”とわからせるよう、ピッチシフターとコーラスもかけていて。そういった意味ではこれもギター・ライクなイメージです。このテーマを作るのは本当に難しかったですね。

    今回はライヴのなかで音作りを煮詰めて行ったので、ライヴで使った音をそのままパッケージにしたイメージです。キャビシミュも一切通さずラインのみ、そこからSHINGOMANがDAW上で音を作り込むことでグレードアップさせていきました。SHINGOMANとは音作りに関してかなり試行錯誤していて、“もうちょっと2kHzを減らして”とか、“ここまでいくと耳に痛いよね”とか、そういうせめぎ合いのなかで微調整していきました。最後の最後まで試行錯誤したことで上手くいったと思っています。

    ベースのレベル(音量)もかなりデカいんですけど、あくまでも歌モノを目指したつもりです。例えばこの作品が多くのミュージシャンの作品と並んだとき、“このアルバム、ベースの音めちゃデカいな”って思われたいというか。俯瞰で聴いてもらったとき、“ベーシストのアルバム”って思われたくないというか、“ベース、カッコよくない? なんてバンド?”って思ってもらえるようなものをイメージしたんです。“ベーシストの”って聴いてもらうとそりゃそうでしょって感じなんだけど、一般のヒットチャートに並べられるような気持ちで作った一枚です。

    30周年まで来てしまったし、年齢的なものもあるので、これ以上新しいコンセプトでアルバムを作るっていうことは今のところ考えられないです。だから現在はこれ以上ソロ・アルバムを作る気はないというか、やり切った感があります。基本的に僕はサポートだったり、バンドがメインなので、まずはベーシストとしての仕事が自分のまっとうすべきことだと思っています。

    そのなかで今自分がやっている活動って誰もができることではないと思っていて、それが自分らしさだとも思うので、今までのようにこのスタイルを続けていくことも大事なことだと思います。現状維持という守りに入っているように捉えられるかもしれないですけど(笑)。常に新しいテクニックを吸収したいと思いながらも、とてもじゃないけど追いつけないようなものばかり出てきているけど、30年間このスタイルでやってきたからこそ、高いレベルで現状を維持していくことが大事だと思っています。

    そのうえでまたソロをやりたいと思うかもしれないけど、主軸にあるサポートやバンドは相変わらずノンジャンルで続けていきたいですね。まわりの人たちも一緒に歳をとっていくわけだけど、みんなモチベーションが高い人たちばかり。すごくいい環境にいると思っているので、そういう人たちと一緒に歳を重ねていきたいと思います。僕は僕なりにマイペースでやっていけたらいいですね。唯一無二の気持ちで、流行りやトレンドに惑わされないように進んでいきたいです。

    ◎プロフィール
    IKUO(いくお)●9月24日生まれ、島根県出身。1996年からEx-iT、Lapis Lazuli、CUBE-RAYといったバンドで活動し、2004年からはT.M.Revolutionをはじめ、数多くのアーティストのレコーディング/ライヴでも活躍する。現在、自身のバンドとしてはBULL ZEICHEN88、Rayflower、THE CHOPPERS REVOLUTION、I.T. Revolutionに所属する傍ら、精力的なセッション活動も展開。自身のソロ・アルバムも、『R.E.D. ZONE』、『Easy come,easy core!!』の2作に加え、3作目となる『SLAPPIN’ DAZE』を7月29日に発表するなど、多方面で活躍している。
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