PLAYER
国内最高峰のベース・プレイヤーIKUOが、自身のデビュー30周年を記念する3枚目のソロ・アルバム『SLAPPIN’ DAZE』を発表した。K-POP を独自のフィルターで昇華させたデジタル・サウンドには IKUO のテクニックが存分に詰め込まれ、ベーシストなら誰しもが驚愕する内容に仕上がっている。キャリアを重ねた IKUO が30 周年のタイミングで提示したかったものとは? 30年にわたる活動の歩みを振り返るとともに、本作で魅せた低音名演の裏側に迫った。
※本インタビューは『ベース・マガジン2026年8月号』掲載のインタビューとは別内容のWEB版インタビューになっています。8月号の記事とあわせてお楽しみください。

雑誌をAmazonで購入する
WEB「バックナンバー読み放題」で読む
30周年という節目が来たので、また何か記念すべきものを作ろうと
⸺2026年はIKUOさんのデビュー30周年イヤーということですが、遡るとEx-iTでのメジャー・デビューを起点とした30年になると思います。改めて、当時をどのように振り返りますか?
当時はバンドでデビューすることを第一に、ソロ活動なんて一切考えてなかったし、バンドで成功するためにデビューしたような感じでした。“このバンドで売れるんだ”という気持ちでデビューしたものの、いろんな事情もあって一年半くらいでEx-iTは終わってしまい、思い描いていた形にならなかった。
その後メンバー・チェンジをして、2年後にLapisLazuliというバンドでもう一度メジャー・デビューしました。2000年代にはCube-rayというバンドでも活動していたんですけど、その時期にはもうT.M.Revolution(以下、T.M.R)のサポートのほか作家としても活動していて、活動の基盤がサポート・ワークになっていましたね。

◎プロフィール
IKUO(いくお)●9月24日生まれ、島根県出身。1996年からEx-iT、Lapis Lazuli、CUBE-RAYといったバンドで活動し、2004年からはT.M.Revolutionをはじめ、数多くのアーティストのレコーディング/ライヴでも活躍する。現在、自身のバンドとしてはBULL ZEICHEN88、Rayflower、THE CHOPPERS REVOLUTION、I.T. Revolutionに所属する傍ら、精力的なセッション活動も展開。自身のソロ・アルバムも、『R.E.D. ZONE』、『Easy come,easy core!!』の2作に加え、3作目となる『SLAPPIN’ DAZE』を7月29日に発表するなど、多方面で活躍している。
Official HP X Instagram
⸺では、IKUOさんにおけるソロ活動の原点とは?
“IKUOソロ”って名義だと、2003年にTVアニメ『テニスの王子様』の作家として、第4期の主題歌「LONG WAY」で歌でデビューしたんです。そこが僕のソロ・デビューという扱いで、その10年後にソロ・デビュー10周年として1枚目のソロ・アルバム『R.E.D. ZONE』をリリースしました。
その後、2019年に2ndアルバム『Easy come,easy core!!』を、そして今回の30周年のタイミングで3枚目の『SLAPPIN’ DAZE』につながるわけです。
⸺『SLAPPIN’ DAZE』の話に行く前に、『R.E.D. ZONE』と『Easy come,easycore!!』について振り返りたく、それぞれどんな作品だったのか教えてもらえますか?
『R.E.D. ZONE』はソロ・デビュー10周年ということで、メモリアルなもの、それまでの自分の活動の集大成みたいなものを作りたいという思いがありました。僕のツールには、アニソンからヴィジュアル系、ラウド、ジャズ・フュージョンなどいろいろなものがあって、サポートや作家をやったり、六本木ピットインに出ていたジャズ・フュージョンの頃など……そういった活動をまとめてひとつにしたいという、思い付く自分のすべてを注ぎ込んだのが1枚目になります。そういうコンセプトだったこともあって、その後も自分のソロをコンスタントにやり続けるって感覚ではなく、記念アルバムみたいなイメージでした。
⸺そこからどういう経緯で『Easy come,easycore!!』につながっていくんですか?
僕のメインのサポート現場であるT.M.Rが、2017年に西川貴教名義での別プロジェクトを始めるということで、T.M.Rの活動が止まったんです。自分のスケジュールの多くをT.M.Rが占めていたこともあって、一定期間スケジュールに空きができまして。そこでまた自分のソロをやりたいなという気持ちが湧いてきたんです。それで2枚目の『Easy come,easy core!!』の制作に取りかかりました。
当時の僕はイージーコアのサウンドがすごく好だったこともあって、当時流行っていた8弦ギターを使った“ジェント”を取り入れたポップ・ロックをやりたいという明確なコンセプトがありました。自分の好きなギタリストを呼んで、ラッシュのようなトリオ形態のバカテク・バンドを自分のサイドワークとして続けていきたいなと。そういうスタンスが『Easy come,easy core!!』になるわけです。
リリース・ツアーも2回行なって、今後もこの形態で活動を続けていきたかったんだけど、コロナ禍に入ってしまって、続けることができなくなってしまい……そこで一回自分のなかにあるソロに対する火が消えてしまったんです。それがあるとき、ふとまたIKUOソロをやってみたいなと。

⸺そこにはどのような心境の変化が?
僕個人のファンの方々やオンライン・サロンに参加してくれている方々に喜んでもらえるもの、そして一緒に盛り上がれるものを作りたいなと思ったんです。それこそ初心に戻って、若いミュージシャンと共に自分がヴォーカルをやるバンドをやりたいなって。自分のソロをもっとたくさんの人に聴いてもらいたいと思い、もう一度『Easy come,easy core!!』のときのようなコンセプトでリスタートを切ったんです。
それでまたコンスタントにライヴをやっていくようになったんですけど、そしたらどんどん欲が出てきまして(笑)。ヴィジュアル系バンドから対バンのオファーをいただくようになったこともあって、月イチくらいでそういったライヴ活動を実施するようになりました。そんななか30周年という節目が来たので、また何か記念すべきものを作ろうと『SLAPPIN’ DAZE』の制作に取りかかりました。
バンドっぽさよりも、全部が一貫して同じ音像でテイストが近いものを目指しました
⸺『SLAPPIN’ DAZE』を制作するうえでのコンセプトとは?
近年僕は K-POP が好きなこともあって、ああいった打ち込み音楽のなかに生ベースを入れてロックっぽくしたら面白そう、というイメージがありました。スラップをフィーチャーしたK-POP のようなアレンジの歌モノをやりたかったんです。そのなかで歌うこともどんどん好きになってきていて、歌とベースを同時にどう表現すればわかりやすいか、ということは考えたポイントでした。
ベースに特化したインストでもイージーコアでもなく、近年自分が好んで聴いている“K-POP”を自分なりに昇華させるという明確な方向性があって、それがドンピシャに30周年とハマったので作品を出そうと。全体を打ち込みドラムで構成し、全体の質感を統一させました。EDMをベースとしたロック・サウンドに生ベースと歌があり、なおかつベースの音像も全体をとおして統一。バンドっぽさよりも、全部が一貫して同じ音像でテイストが近いものを目指しました。
⸺『SLAPPIN’ DAZE』にはT.M.Rのカバー曲「TO・RI・KO」が収録されていますね。
これはT.M.Rに初めて参加した年のツアーでやっていた曲で……(インタビュー後篇につづく)
『SLAPPIN’ DAZE』を解説した
インタビューの後篇はこちら!
(有料会員限定)