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【最強のリズム・セクション extra】金廣真悟(b)× PEGGY(d)- Asuralbert Ⅱ

  • Interview:Koji Kano
  • Photo:Shota Kiyono

一音聴いただけで僕たちだってわかるバンドでありたい
(金廣)

――グドモとして12年間一緒にプレイしてきて、お互いのタイム感や人間性などを把握できているからこそ、ふたり組になっても柔軟に対応できたということですね。

金廣:そうですね。正直今は完全に新しいことをやっている自負があるので、あまり迷う必要性もないというか、何をやってもびっくりするのは当たり前なので、次はその先を考えないといけない。本質的な部分を追求していくのはこれまでと変わらない部分でもあるので、この体制になっても一番いい形を模索していくだけだし戸惑いとかは特にありませんね。

PEGGY:ふたり体制では3本ライヴをやったんですけど、曲の終わり方とかを一切決めずにやったんです。グドモのときはガチガチに決めてはいつつ、そのなかで自由にやってた部分もあったので、そういう部分でもお互いのタイム感を培ってこれたのかなと思います。でもやっぱり曲の終わり方とか締めなどまったく考えなかったので、どうなるんだろうと不安に思う反面、それが楽しみにも感じてたんです。

金廣:うん。その緊張感が楽しいんですよ。

PEGGY:合わないときはまったく合わないんですけど、どこかバッチリ合うところもあって。それはやっぱりお互いがお互いのタイミングを感じながら12年間やってきたことが大きいのかなと思います。一曲、ドラム始まりの曲にアレンジした曲があるんですけど、そうなると尺とか拍がめちゃくちゃになるんです。“スネアを連打したら入りましょう”って感じで、ラフに打ち合わせただけなんですけど不思議と合うんです。それはやっぱりふたりのリズム感、タイム感がちゃんと共有できているんだなって感じられた瞬間でもありましたね。

金廣:さっきも言ったけど、今は新しいことを実験的に試している段階なので、合わなかったら合わなかったでそれもおもしろいんですよ。

PEGGY:そうですよね。ドラムのフレーズもこの体制になってからはあまりガチガチに決めてなくて、結構揺れてもいいし、遊びを入れてもいいかなとも思ってるんです。そこって普通心配になる部分だと思うんですけど、何にも考えずに“何とかなるだろ”って感じで思い切ってプレイしてて。でも不思議と“絶対いい結果になる”って確信できるんですよ。

――阿吽の呼吸であり、このふたりだからこそ生み出せるグルーヴがあるということですね。

PEGGY:そうですね。それが余裕感でもあって、そこから出てくるタイム感、アタック感はこのふたりにしか出せないものだと思っています。

金廣:もともとグドモのときはライヴ中に一回もドラムを見ずにやってたこともあるので、それも今の安心感につながってると思います。だから今はちょっとでもドラムが見えるので、むしろやりやすいんです(笑)。

――最後に、“ロック・デュオ”として今後どういったバンドになっていきたいか教えてください。

金廣:今の時点でわりと目指すべき形になっているとは思うんですけど、今後はこのバンドにしか出せない“音像”を作り出せるようになりたいし、一音聴いただけで僕たちだってわかるバンドでありたいなって思います。それがいい音なのか悪い音なのかは置いといて、とにかくカッコいい音、そして感動する音を目指していきたいですね。僕はふたり体制になったということで、シンプルになったとも思っているんです。基本的に僕たちは出音ひとつでシンプルに勝負しているので、その考え方はこれからも大事にしつつ、今後は変拍子とかも取り入れていこうと思ってはいるんですが、そういう細かいこともリスナーに難しく聴かせない“シンプルさ”をさらに追求してやっていきたいと思っています。

PEGGY:ふたり体制でライヴを3本やって、何ていうか、個人的にすごく自信があったんです。対バンにはアルカラっていう大先輩もいたんですけど、まったく萎縮もしなくて。それってある意味“爆音だから”っていうのもあると思うんです(笑)。

金廣:(笑)

PEGGY:なんか男らしい感じがするんですよ。音がすごいから。一音で“ドカーン”と出したとき、やっぱり男の子なんで気持ちいいって感覚があるんです。このバンドのコンセプトが今後どうなっていくかはわかりませんけど、いずれにしてもこの爆音の感じは大事にしていきたいなって思います。一音目を鳴らしたときにライヴハウスがぶっ壊れるくらいの感じで、金廣さんはアンプを3つ並べてますし、僕も口径の大きいドラム・セットを使っているので、男らしく大きい音を出していきたいなって思います。

金廣:ライヴだとヴォーカルの音量を少しでも稼ぐために、足下のモニターは外に向けてますからね。外タレみたいなスタイルでやってるんです。

PEGGY:そういったところも男らしさですよね。音が大きいところとか、ドラム・セットが大きいところとか、このスタイルを貫いてきたいと思っています。ある意味自己満足な部分もあるかもしれませんけど、バンドですから、ロックですから!

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私的リズム体名盤 −金廣真悟

ジャミロクワイ『Travelling Without Moving』

 ブリット・ポップばかり聴いていた学生当時、この作品でアシッド・ジャズに出会いました。もともと僕は吹奏楽をやっていたこともあって、ギター、ピアノ、パーカッションなどの楽器も“リズム体”という認識を持っているんですけど、そういう意味でもこの作品からはいろいろな楽器のリズムのハネる感じが伝わってくるし、その喜びが音源からも伝わってくるんです。自分が初めてベースっていう楽器を意識して聴いたのもこの作品なんです。

私的リズム体名盤 −PEGGY

オーレ・ブールード『Shakin’ The Ground』

 ノルウェーのシンガー・ソングライターの作品で、10年くらい前によく聴いていました。ずっと同じリズム体コンビでやってるみたいなんですけど、このドラムの感じが、叩けないけど一緒に合わせられるというか、リズムに乗れるビートなんです。なかでも「The Vow」という曲はそのドラムのうえにハネ感のあるベースが乗っかって完璧なグルーヴになっています。何をやっても合っている感覚にさせられてしまう、リズム体のコンビネーションが堪能できる一枚です。

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