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【最強のリズム・セクション extra】金廣真悟(b)× PEGGY(d)- Asuralbert Ⅱ

  • Interview:Koji Kano
  • Photo:Shota Kiyono

この体制でドラムを叩くことに自信を持っています。
(PEGGY)

――PEGGYさんはこの体制になったことでドラマーとして考え方やプレイに変化はあったのでしょうか?

PEGGY:いろいろありましたけど、まず3人からふたりになるってタイミングで金廣さんから“少し考えさせてくれ”と言われたんです。

金廣:はい。1ヵ月間ベースを触らせてくれとお願いしたんです(笑)。もともと宅録でちょっと触るくらいしかベースの経験はなかったので、ベースをちゃんと知るところから始めたいなと。

PEGGY:そのなかで自分としてはひとり減ったということで、ドラムで埋めていた部分とかごちゃごちゃした部分をあえて削いだほうがいいのかなとか考えたりして。だから曲ごとに削いだバージョンと埋めていくバージョンなど、いろんなドラムの引き出しを用意しつつ、そのうえでスタジオに向かう準備をしていました。初めてスタジオに入った際、金廣さんから想像以上にいろんな音が鳴っていたので、リズムはシンプルにしたほうがいいかなとも思ったんですけど、合わせていくなかで金廣さんが“シンプルにするんじゃなくて、むしろ音が増えている分、今までどおりでいいし、埋めてくれてもいいよ”と言ってくれたので、一曲ずつ確認しながら、試行錯誤しつつドラムを組み立てていきましたね。ただ結果としてシンプルになっている部分もあります。

――ここで言うシンプルとは?

PEGGY:例えばこれまでベースが動いていた部分では、同じく自分もドラムの手数を増やしてフィルを入れていた部分があったので、ベースが動かなくなったことでドラムが浮いてしまうことも考えられる。だからそういった部分はちょっとだけ削いでベースに寄り添う形にしました。ただ、基本的にはドラムのフレーズは以前とあまり変えずにやるようにしています。

かねひろ・しんご●1983年4月30日生まれ。中学時代にギターを始め、高校時代にロック・バンドfor better,for worseを結成する。2007年にバンド名をグッドモーニングアメリカに改名し、楽曲やサウンドを方向転換させる。2013年に『未来へのスパイラル』でメジャー・デビューし、6枚のフル・アルバムをリリース。2015年には日本武道館での単独公演も成功させている。2020年のバンド活動休止後からは、自身がベース・ヴォーカルを務めるAsuralbert Ⅱのほか、“Shingo Kanehiro”名義でのソロ・プロジェクトも展開し、2枚のEPを発表している。

――では金廣さんはギターからベースに転向したことで心構えなど変わった部分はありますか?

金廣:うーん……実際まだ転向して3ヵ月くらいなので、正直まだ模索している段階なんです。ただ、グドモのときはベース・ラインを考えたりしてましたし、バッキング・ギターを弾く際もルート音は意識していたので、ベースに転向した今もリズムで遊ぶというよりは、どちらかというと“音程の一番下を支えるもの”っていうスタンスでやっているんです。だから今後はもっと休符を意識したフレーズなどを取り入れて、ベーシストとしてもっとプレイをブラッシュアップしていきたいと思っています。フレーズもギタリストっぽいフレーズだったりするので、よりベーシストらしいフレーズにしていきたいし、僕はその音を同時に“ギターの音”としても鳴らすので、そこの兼ね合いは考えつつ、“ウネってウザくない感じ”を意識していきたいなと思っています。

――ベースを弾きながら歌うのにも慣れが必要ですよね。

金廣:はい、難しいですよね。ルートだけだったらまだいいですけど。裏拍のフレーズとか、メロディとどうしても合わない部分には慣れが必要だし、こういうフレーズを入れたいと思ってもメロディと合わないときは難しさを感じつつ、日々試行錯誤しています。フレーズによってはそれが歌うことにおいて邪魔になってくる場合もありますからね。それにギターと同じピック弾きでも、肩で弾く感じとかピッキングひとつにしてもギターと乖離している部分もあるので、大変ではあるけど、それがおもしろいなとも感じています。だから肩でリズムを感じながら歌う練習をしています。

PEGGY:試行錯誤してる感じはめちゃめちゃ伝わってきますよ。僕は金廣さんを信じて待つしかないんですけど、金廣さんはこのスタイルとしての楽曲の見せ方を構築してくれて、短期間でライヴができる状態にまでしてくれた。そこには想像もできないような苦労があったと思うんです。実際エフェクター・ボードもとんでもないくらい大きいものを使っていて、ベースへの転向をきっかけに揃えてくれた機材も多くあるので、そういった部分も含めてすごい労力を費やしてくれたんだなと感じています。

――PEGGYさん的に、金廣さんのベース・プレイはどのように映っていますか?

PEGGY:もちろんまだ3ヵ月なので弾けていないと感じる部分もありますけど、それも気になるかと言えば特に気にならなくて。なんかふたりになったからこそ、自分はもっとちゃんとリズムを叩かないといけないなと思うし、しっかり叩けるドラマーじゃないとこのバンドは成立しないので、自分自身も成長しなきゃいけないという意味でも、これからが楽しみなんですよ。僕はわりとリズムを叩くことには自信があるので、だからこそ自分の腕の見せどころだし、金廣さんに“自由に弾いてください”と言えるほど、この体制でドラムを叩くことに自信を持っているんです。

――ちなみに初めてふたりで合わせた際、どんな感じだったか覚えていますか?

PEGGY:爆音でした(笑)。僕は自分のドラムの音量には結構自信があるんですけど、自分の音がまったく聴こえなかったです。それぐらいデカくてわけがわかんなかったです(笑)。3人でやってたときの倍くらい音量が大きかった印象でした。

金廣:そうだね(笑)。個人的にライヴのときベーシストの人ってわりと中音が小さいなって思っていて。だから自分の立ち位置から客観的に見つつ、PEGGYのドラムとアンプの音量を相対的に考えて音量を出してみたんです。ただライヴハウスでゲネプロをやった際、ちょっとデカすぎたかもと思って下げましたけど(笑)。僕はモニターからの返しが好きじゃなくて、自分の立っている位置で感じるアンプからの生のサウンド感を大事したいので、そうすると必然的に中音のベースの音量も大きくなってくるんです。

PEGGY:でも僕も音量は大きいほうが好きで。そのほうが迫力が出るし、ふたりでやってるからこそのダイナミクスが表現できると思ってるんです。だからライヴでは爆音のなかでのふたりのコンビネーションにも注目してもらえたら嬉しいですね。

――ふたり体制になったことで、リズム体としてのコンビネーションも重要になってくるかと思います。そのコンビネーションを高めるためにお互い意識していることはありますか?

PEGGY:金廣さんとは長年一緒にやってきたこともあって、僕は金廣さんの歌を聴いてリズムを合わせている部分もあって。なので“ベーシストとドラマー”っていうリズム体の形というよりは、金廣さんの歌も込みでリズムを作っているイメージなんです。だから自然とそこにも意識を向けているし、歌が全体の軸になっている印象もあるんです。

金廣:例えばレコーディングのときとか、今後は今PEGGYが言ったような考え方でやっていきたいなと思っていて。ドラムとベースのうえに歌が乗っかるっていうイメージじゃなくて、まず大前提として歌があって、そこにベースとドラムが乗っかってくていうほうが僕らにとっては正しいんじゃないかなと考えています。ロック・バンドだけど、あくまでも“歌”が一番大事なので、そういう部分はグドモとも共通した部分だと思っています。

ペギ●1984年11月2日生まれ、岡山県出身。2008年7月にグッドモーニングアメリカに加入する。バンドが活動休止した2020年からは金廣真悟(vo,b)とともにAsuralbert Ⅱで活動するほか、サポートやセッション・ドラマーとしても活動しており、藍井エイルをはじめとした多くのトップ・アーティストのレコーディング/ライヴをサポートしている。また2020年からは音楽専門学校で特別講師を務めるなど後任の育成にも従事する傍ら、2021年には自身が代表を務めるドラム・スクール“SCHOOL525”を開校。東京、名古屋、大阪の3エリアにてスクールを展開している。

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