プランのご案内
  • SPECIAL

    UP

    プロのベース練習、覗いてみた。–第9回:KOBY SHY × Spark NEO

    • 取材:伊藤大輔
    • 撮影:小原啓樹
    • デザイン(ロゴ):猪野麻梨奈
    • Presented by Positive Grid

    プロのミュージシャンは、どんな練習を積み重ねてきたのか?──本連載では毎回、異なるベーシストに登場いただき、自身の練習遍歴や現在のルーティンについて語ってもらう。

    今回登場するのは、Fujii Kazeのバンドマスターを務めるほか、Furui Riho、Ado、小袋成彬らのライヴやレコーディングでも活躍するKOBY SHY。教則本をゲーム感覚で“攻略”し、ヴィクター・ウッテンやアドリアン・フェローの超絶技巧をコピーした少年時代から、ビッグバンドやプロの現場で音色、タイム感、タッチの重要性に気づき、“自分を見せる演奏”から“曲全体を良くする演奏”へと変化するまでを振り返ってもらった。

    その過程で見えてきたのは、練習とは手を動かすことだけではなく、自分がどんな音に惹かれ、何に感動するのかを育てていく行為でもある、という現在の考え方だという。

    さらに、自宅練習用アイテムとして話題の多機能型スマート・ヘッドフォン Positive Grid “Spark NEO”も試奏してもらい、そのインプレッションと活用法についても語ってもらった。アプリの生成AI機能を使ったサウンドメイクにも挑戦してもらったが、 その実力は……?

    目次
    ・KOBY SHYが語る、プロ・ベーシストの“自宅練習”
    ・KOBY SHY × Positive Grid “Spark NEO”

    KOBY SHYが語るプロ・ベーシストの“練習”

    「いわば野生児タイプというか、理屈よりも感覚でひたすら真似しながら身につけてきたんです」

    KOBY SHY 試奏風景

    ◎Profile
    KOBY SHY(こーびー・しゃい)●1990年生まれ、静岡県出身。幼少期からピアノに親しみ、中学時代にベースを独学で始める。大学進学を機に上京し、山野ビッグバンド・ジャズ・コンテストで優秀ソリスト賞を受賞。卒業後は小林修己(こばやし・なおき)名義で、さまざまなライヴやレコーディングに参加。現在はFujii Kazeのバンドでバンドマスターも務める。Furui Riho、Ado、Yaffle、小袋成彬、adieu、WurtSらのサポートに加え、プロデューサー/リミキサーとしても活動し、Fujii Kaze「真っ白 (KOBY SHY Remix)」などを手がけている。
    Instagram X

    最初に始めたのはピアノでした。ベースを手にする少し前からギターを触ったりもしていましたね。ただ、音楽を聴くと歌よりもベース・ラインを追いかけてしまうタイプで、もともと“ベース耳”だったと思います。

    ベース・マガジンから出ていた『究極のベース練習帳』を使っていました。付録CDが付いていて、1冊やり切ればさまざまなテクニックを学べる内容だったので、とにかく最初から最後まで全部取り組んで、基礎を身につけました。

    難しかったですね。でも、当時はゲームを攻略するような感覚でベースを弾いていたというか、課題をひとつずつクリアしていくのが楽しかったんです。

    ちょうどその頃にYouTubeが登場して、ヴィクター・ウッテンの教則映像を見つけたんです。そこからさらに、さまざまなテクニックへの興味が強くなりましたね。

    ▲KOBY SHYが練習していたというヴィクター・ウッテンの教則映像

    本当に難しくて、最初はどう弾いているのかすらわかりませんでした。しかも当時のYouTubeは再生速度を変えられなかったので、数秒のフレーズを何度も繰り返し見ながら、少しずつコピーしていました。

    アドリアン・フェローですね。変則的なクロマチックのパターンなど、ものすごく弾きづらいフレーズがあって、それを繰り返し練習していました。

    ▲KOBY SHYが練習していたというアドリアン・フェローの教則映像

    『究極のベース練習帳』に薬指と小指を鍛える練習があったので、それはやっていました。ただ、それ以外はあまりやっていなかったですね。

    それもほとんどやっていませんでした。それよりも、好きなプレイヤーの演奏を真似している時間のほうが圧倒的に長かったです。今振り返っても、練習していたという感覚はあまりなくて、ただ遊んでいたような感じでした。いわば野生児タイプというか、理屈よりも感覚でひたすら真似しながら身につけてきたんです。理論的に考えるタイプでは、まったくなかったですね。

    「とにかくまわりの音をオープンに聴いていろんな人と話しました」

    KOBY SHY 試奏風景

    そうなんですよ。当時はベースオタク全開で、練習で身につけたテクニックをジャム・セッションで試すこと自体が楽しかったんです。ただ、その意識が変わってきたのは大学でジャズのビッグバンドに入ってからでした。そこで、“ベースはもうちょっと後ろだね” みたいな概念が出てきて、最初は何のことかも分からなかったです。グルーヴという奥深い世界を初めて知った瞬間でした。

    プロになってポップスの歌モノやロックを演奏するようになると、大学時代に初めて知った“グルーヴ”というものが、よりリアルな課題として自分に返ってきた感覚がありました。それまではテクニックをひたすら磨いてきましたが、歌モノのなかでは、それだけではどこかしっくりこなかったんです。

    もちろん、どんな音楽でも音色やフィールは大切ですが、歌を支える演奏では、自分の音の粘りや重心、リズムの置き方が、楽曲全体の印象に直結します。技術以外の感性や引き出しがまだ十分に育っていなかったことで、その違和感が生まれていたのだと思います。

    とにかくまわりの音をオープンに聴いていろんな人と話しました。“俺は今こういうことを考えて弾いたんですけど、どう思いますか?”みたいな。音での会話もそうだし、実際の会話でもコミュニケーションをたくさん取りました。

    まさしく。シンプルなはずの8分弾きを格好よく聴かせることがなぜこんなに難しいのだろうかと。そのときはいろんなロック系のベーシストの映像を見まくってました。

    でも、YouTubeを漁っても答えは得られませんでした。だから結局は自分でバンドのアンサンブルのなかでトライして、録音を聴いては“これはいい感じになってきた”みたいなことを繰り返して、時間をかけて見つけていきました。

    KOBY SHY 試奏風景

    楽曲を聴いたときに、ベース・ラインをどのようなものにするか、シンプルにするか動かすか、という大まかなイメージはありました。ただ、どのような音色、重心、タイム感、フィールを選択するかという引き出しがまだ少なかった。そうしたセンスの部分が十分に成熟していなかったことが大きかったのだと思います。

    いろんな音楽をより幅広く聴くようにしました。ベースだけでなく、ほかの楽器も含めて、楽曲全体がどのようなサウンドで鳴っているのかに興味を持ち、研究するようになりました。その結果、楽曲を聴いたときに、そこに一番マッチしそうなプレイや音色が以前よりも自然にイメージできるようになっていきました。その頭のイメージを自分の演奏で実現しようとして、自然と右手のタッチを楽曲によって変えたり、左手でニュアンスを付けたりできるようになっていきました。

    最近はバンマスやプロデュースをするようになったこともあって、よりトータルのバランスを聴くようになりました。良い意味で、ベース単体だけに興味が向かなくなっています。もちろんベースは大好きなんですけど、それ以上に、“曲全体のクオリティを上げる”ためには自分のベースはどうあるべきか? という発想で考えるようになっていますね。

    そうですね。若い頃はとにかく自己実現というか、自分の実力をたくさんの人に知ってほしいって気持ちが強かったと思います。でもその欲が抜けてくると、自分のプレイよりも一緒に演奏しているアーティストが喜んでくれたり、聴きに来てくれたお客さんが喜んでくれるほうがいいじゃんみたいな、喜びのポイントが変わってきたのかもしれないですね。

    技術を磨くことはもちろん大事ですが、その技術をどこで、どう使うのかを決めるのは感性だと思います。自分が何に感動して、どんな瞬間に喜びを感じるのかを知ることも、今の自分にとっては大切な練習ですね。

    KOBY SHY ×
    Positive Grid “Spark NEO”

    スマート・アンプでおなじみのPositive Gridが手がけたSpark NEOは、ヘッドフォン・スタイルで自宅練習の自由度を大きく広げてくれる注目アイテムだ。Spark NEOを使った“練習”の可能性について、KOBY SHYに聞いた。

    KOBY SHY 試奏風景

    ▼ Positive Grid “Spark NEO”の詳細はこちら

    「準備の煩わしさがなく、必要なときにすぐ音を出せる」

    めちゃくちゃ良かったです。ヘッドフォンとスマートフォンさえあれば、すぐに演奏を始められる。その手軽さが何より嬉しかったですね。

    普段、ホテルや楽屋で練習するときは、コンピューターを開いて、オーディオ・インターフェイスにベースをつないでいます。特に楽屋では、ほかのメンバーに気を遣うのでアンプを鳴らすわけにもいきませんし、リハーサル音源を聴きながら個人練習ができる環境が必要なんです。

    Spark NEOなら、そうした準備の煩わしさがなく、必要なときにすぐ音を出せる。そこが一番気に入ったポイントですね。

    レスポンスが良くて弾きやすいです。アンプ・モデリングを通した音で弾けるのもメリットを感じました。

    僕が普段からやっているインターフェイス経由とかヘッドフォン・アンプを介しての練習だと、ライン直の音になりがちで弾きづらいんですよね。やっぱりアンプを鳴らしているのがベースを弾くうえでは自然だし、これなら本番で鳴らしているイメージに近い状態で練習できるので、モチベーションも上がりますね。

    KOBY SHY 試奏風景

    フィット感が良いし、付けたときに安定感があり、ヘッドフォンとしてのクオリティが高い印象でした。遮音性が高いので楽屋とかで演奏するのにも向いていますね。

    一番好きだったのは“RB-800”です。自分としては、このアンプ・モデルだけで十分で、エフェクターを加えなくても気持ちよく弾けました。

    KOBY SHY 試奏風景 スマホアプリ画面
    ギャリエン・クルーガー製800RBのトーンにインスパイアされた“RB-800”。

    普段はEDENのアンプを使っているのですが、“WT600”は、そのEDENらしさを少し強調したような印象でしたね。どのモデルもキャラクターがはっきりしていて、それぞれのアンプ特有のクセまできちんと再現されていると感じました。

    おもしろかったです。“Marcus Miller”というプリセットを試してみましたが、かなりいい感じでした。プリセットによってダウンロード数が表示されるのもどれが人気なのかがわかっていいですね。

    KOBY SHY 試奏風景 スマホアプリ スクリーンショット
    KOBYがTone Cloudからダウンロードしたプリセット“Marcus Miller”の画面。

    「試しに“「Them Changes」のような音”と入力してみたんです」

    サンダーキャットのベースの音は特徴的なので、試しに“「Them Changes」のような音”と入力してみたんです。提案された音色を鳴らしてみると、最初の段階でもかなり近い印象でした。そこから自分で細かく調整していくと、原曲の雰囲気にかなり近づけられましたね。

    歪み系の音色も作ってみました。“中域が少し持ち上がった歪み”とリクエストしたところ、最初は少し歪みが強すぎたのですが、そこを抑えるとかなり好みの音になりました。

    Sparkアプリでは、提案された音色のエフェクト・チェインや設定をひと目で確認できます。どんなエフェクトをどう組み合わせればその音になるのかがわかるので、音作りの勉強にもなりますね。

    KOBY SHY 試奏風景 スマホアプリ スクリーンショット
    AIが生成したサンダーキャット「Them Changes」をイメージした音色の画面。コーラス・エフェクト“Digital Chorus”が採用されている。
    KOBY SHY 試奏風景 スマホアプリ スクリーンショット
    AIが生成した“中域が少し持ち上がった歪み”の音色の画面。歪みエフェクト“Bass Muff”が採用されている。

    バッキング・トラックに合わせて弾く練習を、昔からよくやっていました。YouTubeの動画に合わせて弾くことも多かったのですが、SparkアプリならYouTubeと連携して、再生速度だけでなくループする位置まで自由に設定できる。それはすごく便利だと思いましたね。

    YouTube動画に合わせて練習していると、ようやく自分が乗ってきたところで動画が終わってしまうことがよくあったんですよね(笑)。Sparkアプリなら好きな部分をループして、納得がいくまで延々と弾き続けられる。これは最高ですね。

    Smart Jamは、自動でバッキング・トラックを生成して、そのうえでアドリブを楽しめる機能なんですよね。演奏中にはコード譜も表示されますし、トラックに合った音色まで提案してくれる。これはすごいと思いました。気軽にセッション感覚を味わえるので、練習も楽しみながら続けられそうですね。

    KOBY SHY 試奏風景

    ビギナーからプロまで使えるアイテムですね。いろんな練習バリエーションに使えるから楽しめるし、本当に僕も若いときにこれがあったらどれだけ効率良く練習できたんだろうって思います。

    最初から派手な音色で弾くのも楽しいですが、まずはシンプルなアンプ・サウンドで、自分のタッチによって音がどう変わるのかを聴くのもおすすめです。いろいろな音色をすぐ試せるので、単に便利というだけでなく、自分がどういう音に反応するのかを確認する道具にもなると思います。

    やっぱりツアーに持っていって、ホテルや楽屋での予習・リハに使いたいですね。とにかく僕は煩わしさから解放されたくて、これならヘッドフォンとスマホ中心で、かなり身軽に使える。とことんミニマルにいけるっていうのが最大の魅力です。

    音質も良いし、エフェクトなどに関しては僕はシンプルな音色で良いから、アンプ・モデリングだけでも全然良いです。あとアプリがなくても、ヘッドフォンに音色を保存して切り替えられるんですか?それならさらにミニマルになれて、より理想的ですね。

    KOBY SHY 試奏風景
    KOBY SHY 試奏風景
    トランスミッターとのセットで接続も簡単。低レイテンシー設計により音切れもなく、快適なプレイが可能。ヘッドフォン、トランスミッターともに付属のUSB-Cケーブルで充電して使用する。
    KOBY SHY 試奏風景
    専用アプリSpark Appと接続すれば、音作りからジャム・セッションまで多彩な機能が利用可能だ。33種のアンプと43種のエフェクト、10万以上のToneCloudトーンにアクセスでき、ベース用のアンプやエフェクターもラインナップされている。

    専用アプリ Spark Appをチェック!

    Positive Grid Spark アプリ画面
    ギャリエン・クルーガー製800RBのトーンにインスパイアされた“RB-800。”
    Positive Grid Spark アプリ画面
    Sunn製300Tのトーンにインスパイアされた“Sunny 3000”。
    Positive Grid Spark アプリ画面
    定番ベース用コンプを彷彿させるトーンを再現した“Bass Comp”。
    Positive Grid Spark アプリ画面
    多彩なプリセットが並ぶクラウド、“ToneCloud”の画面。“ToneCloud”からダウンロードした音色は、Spark NEO本体に保存も可能だ。
    Positive Grid Spark アプリ画面
    Sparkアプリには、リアルタイムでコード表示する“Auto Chords”や、思い描いたトーンを言葉で伝えるだけで最適なサウンドを提案する“Spark AI”といったAI機能も搭載。練習やジャムセッションを彩る、多彩なバッキングトラック機能にも注目だ。
    Positive Grid Spark アプリ画面
    ユーザーの“リクエスト”に24時間応えてくれる“Spark AI 2.0 Betaも搭載。「〇〇風の音に」というような日本語イメージからの音作り、ニュアンスなどの微調整、既存の音の解析から技術的な質問まで、 テキスト対話型のAIが演奏をサポートしてくれる。詳細はこちらから。

    ◎ NEWS
    ケーブル1本で接続! 新ヘッドフォン“Spark NEO Core”が登場。

    Positive Grid “Spark”シリーズに、有線ヘッドフォンの新モデル“Spark NEO Core”が追加された。標準的な1/4インチ・ケーブルを楽器から直接挿すだけで、内蔵されたSparkの高機能なギター/ベース・アンプをそのまま利用できる、“ワイヤレスより有線派”のユーザーには嬉しいモデルだ。価格もSpark NEOに比べて手頃な27,500円(税込)に設定されている。

    Spark NEO Core

    製品詳細

    Positive Grid / Spark NEO
    Positive Grid / Spark NEO Core

    付録:KOBY直伝の練習フレーズはこちら!

    EX-1(0:12〜0:31) 

    練習フレーズ Ex-1

    EX-2(0:35〜0:46)

    練習フレーズ Ex-2

    ▼ 連載の過去回はこちら ▼

    BASS MAGAZINE WEBプラン案内