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    んoon 積島直人が語るルーツと“多弦を多指で多動する”奏法【前篇】

    • 取材:辻本秀太郎(Bass Magazine WEB)
    • 写真:宮下夏子

    ハープ、キーボード、ヴォーカル、ベース。その編成だけを見ても、んoonというバンドがいかに特異な存在であるかは伝わってくる。R&B、ジャズ、ポストロック、アンビエント、現代音楽などの要素を自然に溶け合わせながら、彼らはどこか都市的で、どこか異国の風景を思わせるサウンドを鳴らしてきた。

    2026年4月には2ndアルバム『Zoo』をリリースし、FUJI ROCK FESTIVALへの出演も決定。さらに注目を集めるなかで、その低音を担う積島直人は、6弦ベースを駆使しながら、時にメロディを奏で、時に和音を響かせ、時にアンサンブルの深部を揺らすようなベース・ラインを描く。

    本誌初登場となるここでは、積島の音楽的ルーツから現在の奏法観までを掘り下げる取材を実施。記事の前篇では、ベースとの出会いから、学生時代のノイズ・ユニットやジャパノイズ研究、そしてんoon結成へと至るまでの歩みを聞いた。

    有料会員向けに公開する後篇では、4弦ベースから6弦ベースへと持ち替えた理由、ドミニク・ディ・ピアッツァやサンダーキャットら多弦ベーシストからの影響、さらに“採譜できないこと”を重視するという、積島ならではの奏法観を深く掘り下げていく。

    また、別インタビューでは2ndアルバム『Zoo』の制作について語ってもらった。こちらもあわせてチェックしてほしい。

    フィッシュマンズの柏原譲さんからは、すごくコアな部分で影響を受けている

    両親は楽器を弾けないんですけど、子供にはやらせたかったみたいで、4〜5歳の頃にピアノを始めました。でも小学5〜6年生くらいになると自我が芽生えてきて、「音楽はやりたいけどピアノではないな」と思うようになったんです。それで最初は、お年玉でアコースティック・ギターを買いました。

    その頃からいろいろなバンドも聴き始めていて、中学生に入るくらいのときに「今度はベースをやってみたい」と思ってアリアプロIIのマグナ・ベースを買いました。

    初心者向けのギター教本で、メジャー、マイナー、セブンスくらいまでのコードは覚えました。でも、そのあとはいろいろなロック・バンドのアコギやベースを耳コピしていましたね。

    最初はL’Arc-en-CielやLUNA SEAなどをコピーしていたんですけど、同時期(中学校入学)くらいの頃に、NHKラジオの『ミュージックスクエア』を聴き始めたんです。そこでフィッシュマンズの「BABY BLUE」がフル尺で流れてきて、それまで聴いていた音楽とは構造がまったく違うと思いました。

    展開もないし、ギター・ソロもない。異常な反復のフレーズがすごくやばいなと思って、そこからそういう方面の音楽を聴き始めました。ベースもそういうものをコピーしながら独学でやっていった感じですね。

    そうですね。例えば、ラルクのtetsuyaさんのベース・ラインは歌うようで、練習していて楽しかったですし、そういうフレージングには今も影響を受けています。

    一方で、柏原さんのベースは、ある意味では耳コピ自体はすぐにできるんですよ。ほぼ反復なので。でも、禅というか、ずっと音源に合わせて弾いているとトリップしてしまうような感覚があって、それがすごくおもしろいなと思っていました。

    当時はそこまで意識していませんでしたが、すごく太い低音だったり、グルーヴだったり、後期の音響処理だったりが、空間を彫刻するようなとんでもないことになっているんですよね。小手先の奏法というよりも、そういう音楽の捉え方を柏原さん経由で知っていったので、自分にとってはすごくコアな部分で影響を受けているベーシストです。

    ベースは中学で始めたんですけど、周りに楽器をやっている人が誰もいなかったんです。高校に入っても軽音部がなかったので、吹奏楽部に入りました。そこでコントラバスをみっちりやって、弓の奏法なども習得しました。

    その頃は、ドラムを叩けるメンバーと学園祭に出たりはしていましたが、そのままバンドになることはありませんでした。そのあと大学に進学すると、めっきり楽器を弾かなくなったんですけど、高校の同級生で別の大学に進学した、現在んoonのMVを作っている谷口暁彦と、大学時代にノイズのユニットをやっていました。

    ▲谷口が監督した「HEBITORA」のMV

    そうなんですよ。中学の頃に「フィッシュマンズいいよね」と周りに話しても誰にも通じなかったんですけど、高校に入ってから「俺、フィッシュマンズ好きなんだよね」と言ったときに、初めて「いいよね」と返してくれたのが谷口でした。彼はいろいろな音楽に詳しかったですね。大学時代に彼とやっていたのは、自作楽器でノイズを演奏するユニットでした。

    当時、その界隈で「グランド・ハープの柱にスピーカー・ユニットを螺旋状につけて、2人が両サイドからドライバーで叩いて演奏するユニットがいるらしい」という噂を聞いたんです。そのひとりが、現在んoonのメンバーであるウエスユウコでした。

    大学時代の演奏写真
    大学時代、ノイズ・ユニットで演奏する積島。楽器は自作で、ホームセンターで買ったアルミ板やスチールラックに、片側にはコントラバスの指板、もう片側にはチェロの指板を貼り付けられており、回転させながら演奏することができる。

    その頃は、ノイズ音楽の成立過程などをアカデミックに研究しようと思って博士課程に進んでいました。80年代、90年代のメルツバウや大友良英さん、灰野敬二さんなど、ジャパノイズを中心に研究していて、その時期は演奏活動はせず、普通に研究をしていました。

    んoon アーティスト写真
    左から、ウエスユウコ(harp)、江頭健作(k)、積島直人(b)、JC(vo)。

    結局、博士論文までは書けずに退学してしまったんですけど、博士課程の最後のほうでふと思い出して、ウエスに「意外と俺ら普通にも弾けるから、バンドやらないか?」と声をかけたんです。それがんoonの始まりで、2014年のことですね。その後、ウエスがJCを連れてきて、2016年にヴォーカルとして加入しました。

    んoon 積島氏 ライヴ写真

    んoonを始めた初期、インスト・バンドだった頃は、NS Design製のチェロを買ってベースのチューニングで演奏したり、フレットレスの4弦ベースを弾いたりしていました。

    でも、JCが加入する前後くらいから、メロディから和音まで、全員で役割をくるくると入れ替えていくようなアンサンブルを目指すようになったんです。そうなると、4弦では足りないなと思って……(後篇に続く

    「僕は右手の多指奏法のなかにある、密度がすごく詰まるところと、伸びるところの“弛緩”のほうが重要だと思っています」

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    んoon 積島直人が語るルーツと“多弦を多指で多動する”奏法【後篇】

    INFORMATION
    んoon:HP X Instagram
    積島直人:X Instagram

    2nd Album『Zoo』Release Tour 2026 Zoo Fantástica
    6月11日(木)名古屋 CLUB QUATTRO
    6月12日(金)梅田 CLUB QUATTRO
    6月24日(水)恵比寿 LIQUIDROOM
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    FUJI ROCK FESTIVAL ’26
    7月26日(日)に出演
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