プランのご案内
  • PLAYER

    UP

    んoon 積島直人が語るルーツと“多弦を多指で多動する”奏法【後篇】

    • 取材:辻本秀太郎(Bass Magazine WEB)
    • 写真:宮下夏子 XFacebookLine

    記事の前篇はこちらから。

    僕は右手の多指奏法のなかにある、密度がすごく詰まるところと、伸びるところの“弛緩”のほうが重要だと思っています

    んoonを始めた初期、インスト・バンドだった頃は、NS Design製のチェロを買ってベースのチューニングで演奏したり、フレットレスの4弦ベースを弾いたりしていました。

    でも、JCが加入する前後くらいから、メロディから和音まで、全員で役割をくるくると入れ替えていくようなアンサンブルを目指すようになったんです。そうなると、4弦では足りないなと思って。

    ヤフオクで6弦ベースを買ったのが、2016年頃でした。6弦だったら高い音域のメロディも弾けますし、ハープも鍵盤も含めて、みんなが全帯域をカバーできる。そういうアンサンブルを作るうえで、6弦ベースが必要になっていったんです。

    そうだったんですけど、アンサンブルの練習自体は楽しいものの、録音して聴いてみると、そこまでパキッとおもしろいものにはなっていなかったんです。完全にアンサンブルのボトムを支えるには、ハープの音などは少し弱かったりして。

    以前使っていた6弦ベースが、ダミアン・アースキンという人のシグネイチャー・モデルだったんです。それで彼について調べるなかでいろいろな動画を観ていたら、ブリッジ寄りでパーム・ミュートしながら、スリー・フィンガーや親指を大胆に使う奏法を知りました。

    そこからゲイリー・ウィリスなど、指を寝かせて弾くタイプの人たちを観始めて、“こういう奏法があるのか”と思って。そのうち、そうした奏法の極めつけとも言えるドミニク・ディ・ピアッツァの奏法を知ったんですけど、あれは衝撃でした。フラメンコやクラシック・ギターじゃないかと思うような、ボトムへの配慮のなさがおもしろいと思いましたね(笑)。

    そういう曲芸のような人たちを、ふざけながらモノマネして完コピするのがすごく好きなんです。マイケル・マンリングやヴィクター・ウッテンもそうですが、彼らはひとりで成立してしまう奏法が多いですよね。そういうソリストたちがソロでしか使わないようなテクニックを、どうやってアンサンブルの奏法に組み込めるかというのは、わりとずっと自分のテーマです。

    ピアノをやっていたときに、小学校の音楽の授業で習うような和声的な知識は少しありますけど、きちんとジャズの理論を学んだり、触れたことはないですね。

    これは最近になってようやく言語化できていることなんですけど、例えばアドリアン・フェローなどが速く弾いているところを思い浮かべてほしいんです。あれは、いろいろなスケールを弾いているんですけど、リズム的には音符自体がずっと同じ16分だったりするんですよ。

    それよりも、僕は右手の多指奏法のなかにある、密度がすごく詰まるところと、伸びるところの“弛緩”のほうが重要だと思っています。多指奏法で右手の指を4本まで使えるとして、例えば“3本・4本・4本・2本・2本・3本・3本”というような運指をするだけで、使う指が変わるので音質も少し変わるんです。

    それを16小節くらいのタイム感のなかに流し込むと、話すような、ラップをするようなタイム感になる。そういう抑揚のほうが重要だと思っています。同じ音を連続して弾く場合でも、音の粒立ちを揃えないほうが、発音の質が妙に変わってくるんです。

    そうです。例えばビリー・シーンは、3フィンガーの教則ビデオなどで、3本の指から出る発音を揃えるコツを語っているんですけど、僕はそこはむしろ離れていたほうがいいと思っています。各指の発音を揃える方向のテクニックもあると思うんですけど、自分にとっては何が一番重要かというと、誰が聴いても採譜できないことなんです。

    採譜できなければ盗まれないし、AIも学習できないと思うので。機械的な正確さはこれから終わっていくと思っていて、何かしらのヨレをどう担保できるかが重要だと思っています。

    それと先ほどの話に戻ると、スケールの上昇下降も、ダイアグラムとして捉えているわけではないんです。指のクセから、“人差指、薬指、小指と使ったから、次は中指を使おうか”というように考える。単純に4つの四角がランダマイズされて、指板上でヘンな図形が動いていくようなイメージで練習することはあります。ノートに対してどう行くか、というアプローチは全然していないですね。

    関連記事