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    マーティ・ホロベックが石若駿、渡辺翔太と作り上げた最新トリオ作『Trio IV: The City, It Whispers』を語る!【前篇】

    • 取材:辻本秀太郎(ベース・マガジンWEB)
    • 写真:Kana Tarumi

    マーティ・ホロベックが盟友である石若駿(d)、渡辺翔太(k)とのトリオ = “Trio IV”で作り上げた前作『Trio IV: The Mountains, They Listen』(2025年)に続き、同メンバーでの続篇となる『Trio IV: The City, It Whispers』がリリースされた。全篇をアコースティック・ベース・ギターで録音するという挑戦的な取り組みによって、生音ならではの手触りを色濃く収めた前作に対し、今作ではエレキ・ベースとコントラバス、エフェクトを操りながらマーティが追求してきた“空間”へのこだわりを、都市的でモダンな音像へと昇華している。

    実は、本作が録音されたのは『Trio IV: The Mountains, They Listen』よりも前の2023年末だったという。それぞれ別のライヴを終えた石若駿、渡辺翔太とマーティが深夜にスタジオへ集まり、わずか一夜でセッションを完遂。朝方に持ち込まれた楽曲を初見で仕上げたテイクも収められており、長年にわたって演奏を重ねてきた3人の高いミュージシャンシップと、阿吽の呼吸で反応し合うトリオならではの即興性が刻まれている。

    そんな本作は、いかにして生まれたのか。マーティに、レコーディングの舞台裏、“マブダチ“と語る石若&渡辺との関係、楽曲に込めたアイディア、そして、彼のベーシスト/アーティストとしての表現を形づくる“空間への哲学”について、たっぷりと話を訊いた。

    マーティ・ホロベック

    ◎Profile
    マーティ・ホロベック ● 1990年9月3日生まれ、オーストラリア出身で現在は東京在住の音楽家。自身のTrioシリーズをはじめ、SMTKやHishakaku Quartetの共同リーダーを務めるなど、複数のプロジェクトを率引している。サイドマンとして、日野皓正、石橋英子、ジム・オルーク、Answer to Remember、ROTH BART BARON、ermhoi、崎山蒼志、藤原さくら、HIMIなどのアーティストと共演する。2019年から2021年までNHK『ムジカ・ピッコリーノ』にレギュラー・メンバーとして出演。2025年4月1日にリリースした『TRIO IV: THE CITY, IT WHISPERS』のほか、これまでに6枚のリーダー・アルバムを発表している。
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    2023年11月2日です。深夜0時から朝4時まで、実質一晩で録りました。みんな本当に忙しくて、その日も僕と(渡辺)翔太はライヴを終えてから、駿も別のライヴを終えて、0時にスタジオへ集合してセッティングを始めるという、なかなか大変なセッションでした(笑)。

    池袋のSTUDIO Dedeです。前作の『Trio IV: The Mountains, They Listen』(以下『Mountains』)は、小淵沢にある自分のスタジオで録りました。全員が同じ部屋に入り、防音や音響処理もしていない環境で自分たちで録ったので大変でしたが、ミックス・エンジニアのジョー・タリアさんがすごく頑張ってくれて、めっちゃ良い音になったと思っています。

    一方、『City』は3人の限られた時間で録る必要があったので、いつも使っているSTUDIO Dedeを選びました。

    実は時系列でいうと、先に録音したのは『City』なんです。ただ、機材のノイズやガリが入るなどのトラブルがあって。深夜から朝4時までのセッションだったこともありますが、あとからラフ・ミックスを聴いて、「Trioシリーズでは毎回、音やアプローチを大きく変えてきたけど、今回は『Trio I』に少し似ているかも」と感じたので、いったん置いておくことにしました。

    その後、いろいろ考えている時期にアコースティック・ベースを買ったんです。弾いてみると自分とすごく相性が良くて、音も大好きになりました。今まであまり聴いたことのないフレッシュなサウンドで、アコースティック・ギターに近い弾き方やアプローチになる。それによって、僕自身の演奏や作曲の方法もまったく変わったんです。

    それに合わせて、翔太もグランド・ピアノだけではなく、アップライト・ピアノやProphetのシンセサイザーを弾くことになりました。そうして2024年5月ごろに録音したのが『Mountains』です。すごくエキサイティングなアルバムになったし、音も新しくて、本当に楽しかったですね。

    そのレコーディングの休憩中に、先に録っていた『City』をみんなで聴いたんです。そうしたら、「やっぱり、このアルバムもめっちゃ良いね」となって。それで、じゃあ両方出そうということになりました。

    マーティ・ホロベック
    マーティが愛用するTACOMA製アコースティック・ベース

    一番近いのはエレキ・ベースです。ただ、ブリッジ側の弦間が広いので、少し弾きづらい。でも、そのぶん弾き方が自然と変わるんです。スチール弦を張ったアコースティック・ギターのような雰囲気なので、エレキ・ベースよりも高くて明るい音が出せます。

    アルバム全体のコンセプトをガラッと変えたかったんです。Trioシリーズを最初から聴き返すと、毎回まったく違うレコーディングやミックスになっている。それはすごく嬉しいし、良いことだと思っています。

    駿とは今年で付き合いが11年目くらいになるんです。翔太とも別のプロジェクトを6〜7年続けていて、一緒に演奏するのがすごく楽しい。翔太と駿も、翔太のトリオなどでずっと一緒にやっています。

    だったら、僕の“マブダチ”たちと一緒にやれば、絶対に相性が良いよねと思って。「じゃあ、やろう」という気持ちになりました。

    左から、渡辺翔太(k)、マーティ・ホロベック、石若駿(d)。

    そうです。翔太や駿のために書くので、「この曲のなかで翔太はどんなアプローチをするだろう?」「この曲を書いたら、駿はどんな叩き方をするかな?」と考えるのがすごく楽しいんです。

    僕たちの関係はすごくオープンで、何でも試してみるし、「これはどうかな?」と提案して、ダメだったらダメだと、まったく気兼ねなく言い合える安心感があります。駿ともすごくフランクに意見を言い合えるので、バンドのリーダーとしては本当に助かっていますね。

    この曲は『Mountains』と『City』の両方に入っていますが、『City』では普通のジャズ・バラードではなく、ポール・モチアンのトリオのような、広がりのあるオープンなアプローチにしたいと思いました。メロディはシンプルですが、その下でハーモニーがどんどん変わっていく曲です。

    普通、ジャズでダブル・ベースを弾く人は、バラードなら絶対にダブル・ベースを弾く。それがスタンダードですが、僕はあえて別のアプローチをするのがおもしろいと思いました。ピアノ・トリオの世界にシンセやローズが入ってきて、そこにエレキ・ベースが重なるのは、すごくおもしろいですよね。

    僕はリヴァーブが本当に大好きで、音の広がりが増えるのが好きなんです。エンジニアのジョーさんとはパラデータをやり取りして、リヴァーブをかけたチャンネルと、エフェクトなしのトラックの両方を送って作業しました。

    今回メインで使ったのは、StrymonのBigSkyと、ZoomのMS-70CDRに入っているパーティクル・リヴァーブです。妻のermhoiからは、僕のソロ・ライヴを観に来たときに、「ちょっとリヴァーブをかけすぎじゃない?」と言われることもありますけど(笑)、僕は本当に好きで。でも、ジョーさんはリヴァーブの使い方が本当に完璧なんです。ベースは、いつもメインで使っているアイバニーズですね。

    若い頃からの興味が大きいですね。ECMのレコードが好きで、昔からずっと聴いていました。あのレーベルには、リヴァーブの使い方がうまいアルバムがたくさんあると思います。

    それから、10歳くらいのときに、初めて部屋の空間や“音の広がり”を理解した原体験があります。当時は5.1chのサラウンド・システムが流行っていたんですが、僕の家には、もちろんそんな立派なものはなくて。

    でもある日、家にあったポータブル・ラジオを6台集めて、自分は床に寝転がり、その周りを囲むようにラジオを置いたんです。それで全部同じチャンネルを流して、「ここから、こういう音が聴こえる!やばい!」と、すごく喜んでいたのを覚えています。

    生演奏でも、若い頃から部屋やライヴハウスによって音がまったく違うことを、すごくおもしろいと思っていました。メルボルン時代には、ウッド・ベースをアンプなしの生音で弾いていた時期があって、部屋の広さやリヴァーブについて、いろいろと考えるようになりました。

    どんな場所でも同じ音を出せるシステムは、安心感があって大切です。でも、部屋によって音が変わること自体もすごくおもしろいし、楽しい。生でしか体験できない音の感覚の違いは、レコーディングでもすごく大切にしています。

    僕と駿はいつも一緒に演奏しているので、今回は少し音を変えたかったんです。インディ・ロックのような質感というか……(インタビュー後篇につづく

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