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    んoon 積島直人が語る『Zoo』の低音【前篇】“ほかの楽器と全然タイムラインを別にするようなベースを弾きたい”

    • 取材:辻本秀太郎(Bass Magazine WEB)
    • 写真:宮下夏子

    1stアルバム『FIRST LOVE』から約1年半という短いスパンで届けられた、んoonの2ndアルバム『Zoo』。前作の制作過程や、ツアーを経てバンドの視野が広がるなかで生まれた本作には、プリプロダクションやミックスを前提とした作曲のアイディア、身体的なヨレやズレを織り込んだグルーヴ、そしてメンバーそれぞれのアイディアが混ざり合うことで生まれる、んoonならではの制作プロセスが刻み込まれている。

    本記事では、ベーシストの積島直人に『Zoo』の制作背景と全9曲のベース・アプローチについてインタビュー。ハープ、キーボード、ヴォーカル、ベースという特殊な編成における低音の役割、ラップのフロウから着想を得たタイム感、多指奏法による点描的なフレーズ、アップライトや弓を用いたプレイまで、アルバムの低音をかたちづくる発想をじっくりと聞いた。

    なお別インタビューでは積島にこれまでの歩みについても語ってもらった。本記事とあわせてチェックしてほしい。

    ほかの楽器と全然タイムラインを別にするようなベースを弾きたい

    前作『FIRST LOVE』を出したあと、ツアーや対バンですごく良い出会いがあったこともあり、常にアイディアが開いている状態でした。作曲自体のアイディアもそうですけど、レコーディングやプリプロダクションに関するところで視野が広がって。

    ミックス・エンジニアの島田智明さんとの1stアルバムの作業を経て、“これどう投げたらどう返ってくるか”とか“彼に任せたらもっとヤバいローが出るかもね”とか、ミックスされること前提で作曲やアレンジのアイディアが出るようになっていたことも大きいです。

    例えば、BLACKPINKのマスタリングを聴いて“頭蓋骨の継ぎ目が割れちゃうようなローを、自分たちの曲でもやってみたいよね”みたいな、曲のコンポーズ以外のところでやりたいことも増えてきました。

    対バンする人たちの演奏がすごく良くて、ライヴが終わるごとに奏法が増えていく感覚がありましたね。あるとき、モッキー(MOCKY)という音楽家と一緒になったのですが、彼はライヴ中ステージを歩き回ってドラムもベースもいろんな楽器を弾くんです。で、ドラムを叩いているときの彼のスネアが置かれているを位置がものすごく低くて、リズムのポケットがすごく気持ちよく落ちていたんです。普通の人が叩く位置より下げているぶん、コンマ何秒か遅れているんだと側から見ていて邪推しました(笑)。

    それを自分の多指奏法に応用して、“3本の指=1ユニットで1音を弾くとして、ジャストのタイミングで薬指と中指で空ピッキングしてから人差指で発音すれば、自動的にほんの少し遅らせることができるんじゃないか”みたいな身体的なアプローチを思いついたりして。そういうインスピレーションを音源にぶち込みたくなるんです。

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    左から、ウエスユウコ(harp)、江頭健作(k)、積島直人(b)、JC(vo)。

    そうですね。前作のときもそうでしたが、ほかの楽器と全然タイムラインを別にするようなベースを弾きたいという意識がずっとあって。ここ5、6年はずっと音階の練習もリズムの練習も、メトロノームではなく、ラップのフロウに合わせてベースを弾く練習をしているんです。

    例えば、THA BLUE HERBとかに合わせて弾きます。またはラッパ我リヤのMr.Qのような、ものすごく粘るようなラップのフロウに自分の発音を当てていくんです。言語が持つ、イーブンには合わないズレやヨレというか。同じフレーズを弾いていてもちょっとズレてしまうような、喋っているようなイメージですね。ただしそれもソロとして目立つためではなく、そういうヨレをアンサンブルにどう織り込むかという実験をずっとやっているんです。

    ただそういうアプローチをやっていると、ベースがルートを押さえられない場面も出てくるので、最近はベース・ラインはシンセに弾いてもらうことも増えてきましたね。

    ある程度は家のスタジオ(ウエスの自宅)で、宅録の環境を揃えたので、ラインで録れる素材はあらかじめ録っていました。今作はドラムの打ち込みも多いので、生で叩いてもらう部分とちょっとしたヴォーカルはhmcスタジオで録って、そこから8日間かけてミックスをしました。

    そのなかで、おもしろいノリができたらブースに行って追加で録ったり、エディットを進めたりというプロセスでしたね。ハープのウエスなんかは、仮組みでできたミックスからその場でインスピレーションを受けて、またエディットを進めたりすることも多かったです。

    ベース・ライン自体はそこまで凝っていなくて、デモを持ってきたウエスが作ってきたんです。彼女はベースの運指とか弦跳びなどを全然気にせずに作るから、すごくおもしろくて。しかも、この曲ではベース・ラインは一回打ち込み終わったものを、彼女が半拍くらいずらしたところがあって。

    1拍じゃなく半拍くらい間違えたようなヘンな転びというか、おもしろい譜割りになったんです。よく聴くとリズムの取り方が複雑なところがあるんですけど、それをそのまま1発録りしました。

    ボサノヴァっぽい曲ですが、各ジャンルのオーセンティックなものに対して、“なんちゃって”感でやるフェイクを大事にしています。タモリがやる“白鍵だけで弾く山下洋輔”の即興芸みたいなおもしろさですね(笑)。

    もし本当にボサノヴァとして突き詰めるなら、“ハープの音の切り際はもっとレガートに弾いてほしい”みたいなのもあるんですけど、そういうのもそのままにししていて。ベースは、妄想上のブラジルの人を降ろしているような感じで、アップライト・ベースで弾いています。

    キーボードの江頭(健作)がメロディラインのようなコード進行を持ってきたんですけど、その内声がすごく綺麗だったので、前半はルート弾きでボトムを支えることに徹しました。後半はそのラインをキーボードが弾いて、エレベは上のピロピロした部分をワーミーで2オクターヴ上げて弾いています。

    基本的にんoonでは“誰かのパフォーマンスを邪魔しないアレンジ”みたいな発想はなくて、前作のときはACE COOLがいたので、バチバチに殴り合うようにラップするようなベース・ソロを入れました。今回はみんなが踊り狂うような、シンプルで高い音域がずっと出ているようなアプローチになりました。

    これはキーボードとベースを一発録りしたんです。キーボードがパーン、パーン、パーンと弾いているのに対して、こちらはスケールだけを合わせて、曲がどう進行していくのか、構成もちゃんと覚えきらないうちに、メトロノームだけを鳴らして録っていきました。

    だから、少しだけキーボードの進行とベースが噛み合っていないところもあるんですけど、一旦その“出たとこ勝負”のテイクを録ってみたら、それがそのまま採用されたんです。

    そうですね。そのトラックに対してJCがヴォーカルをハメていったので、偶然性のあるプレイがけっこう出たと思います。ベース的にも、響きが少しだけ構成音から外れているところがおもしろいなと思いましたし、それによって歌を乗せる道筋も変わったんじゃないかと思います。

    ただ、最初のアイデアとしては、JCが鼻歌でメロディを歌って、それをキーボードに渡したところから始まっているんです。江頭が“うーん”とか言いながら、それに合わせて弾き始めたんですけど、本当にみんな解釈や感覚が違うんですよ。

    僕としては、もっとメジャーな響きになるのかなと思っていたら、江頭のキーボードからあの響きが出てきて。後ろでみんな“おーほほほほ”みたいになっていました(笑)。その響きをもとに、少しぬらぬらとした進行ができていったんです。

    そこに、改めて“もう1回録るから”とベースを入れて、さらにそれをもとに歌を録りました。なので、コーラスのハモりも、逆にキーボードとベースが決まったあとで、そのキーに沿って入れていったんです。

    えてして、我々はそういう着地の仕方が多いんですよね。誰かが何かしらのネタを持ってくるんだけど、みんながそれをぐしゃぐしゃにしていくから、最終的には誰の曲なのかわからなくなる。誰のものでもなくなって、最後には“我々の曲”になる。そういうプロセスが多いですね。

    このパターンはそうですね。ただ、ほかの曲はもう少しライヴで鳴らしながら、“もうちょっとガンガン行こうぜ”という感じで固まっていって、あとは録るだけ、というものも多かったです。

    ただ、今回のアルバムのように締切が決まっていると、ライヴで何度も鳴らしながら完成させた曲ばかりではないですね。

    この曲のテーマとしては、“ハープもあまり聴こえないし、シンセもすごく強い。なんとなく、俺らじゃなくてもいいんじゃない?”と思うような音を、あえて俺らがやるからウケるよね、という感じでした。

    自分たちの持っている引き出しをふんだんに出すことも重要だとは思うんですけど……(後篇へ続く)

    ジャコ・パストリアスがもし亡くなっていなかったら、今は6弦ベースを弾いているだろうなと思っていて

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    んoon積島直人が語る『Zoo』の低音【後篇】“ジャコがもし生きていたら”をイメージしながら

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