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Suspended 4thはなぜ生まれ変わった?フクダヒロムが語る“バックビート”と『Goodbye My Roots』
- Interview : Shutaro Tsujimoto(Bass Magazine Web)
- Photo : Hiroki Obara
マジで大変でした。できなさすぎて、ベース自体を辞めてしまうか、というところまで落ち込んだ時期もありました。
⸺バックビートの概念は、ドラマーの吉村さんがバンドに加入したことで持ち込まれたものなんですよね。
彼がいなかったら、僕らはここまで取り組んでいなかったと思います。吉村はハリウッドのMI(Musicians Institute)に行っていて、現地で本場のブラック・ミュージックの演奏に衝撃を受けて、そういうグルーヴを体得して日本に帰ってきたんです。でも日本で仕事をしていると、みんながグリッドに合わせて前ノリで演奏するなかで、彼のドラムは相対的に少し遅く聴こえてしまう。だからエンジニアの方から“ちょっとドラムが遅い”とか、“もっさりしている”と言われることもあったみたいで。当時は彼自身もまだ言語化できていなかったので、“自分が悪いのかな”と悩んでいたらしいんです。
⸺そこでSuspended 4thと出会ったと。
たまたまうちのワシヤマ(カズキ/vo,g)とスタジオでジャムをしたら意気投合して。そこから吉村がバックビートという概念をサスフォーに持ち込んでくれて、僕らも本格的にそこへ取り組むようになりました。

⸺ただベーシストとして、それに対応するのは簡単ではなかったのでは?
めちゃくちゃ苦戦しました。邦楽で育ってきた僕とサワダ(セイヤ/g)は、感覚を掴むまでに2年くらいかかりましたね。最初はブルーノ・マーズやジャミロクワイを聴いて、“1・3でリズムを取ると、なんか心地よくないよね”というところから始めました。まずは曲を聴いて、気持ちいい場所で指パッチンをする。そうやって、身体で感じるところから始めたんです。
⸺感覚として掴めても、実際にベースで演奏するとなると、また違いますよね?
そうなんです。いざ弾いてみると、無意識に1拍目へ合わせようとしてしまうんですよ。2・4のスネアのタイミングに落とし込もうとしても、今度は狙いにいきすぎて身体が固まって、グルーヴが硬くなってしまう。だから、ベースに対する考え方を根本から再構築する必要がありました。一回、下手になるフェーズが必要だったんです。
⸺根本的にリズムの捉え方が変わったわけですね。
まず大きいのは、キックとベースの関係ですね。日本のプレイヤーって、パワーでガーッと弾く人が多いと思うんですけど、グリッドに合わせようとすると、ベースがドラムを追い越してしまうことがあるんです。よく聴くと、キックより先にベースのアタックが鳴っていて、その結果、ベースのアタックがキックのアタックを消してしまう。そうすると、キックが大きく聴こえないんですよ。
でも本来は、キックのアタックがまずあって、そこにベースで音程を乗せていくような感覚なんです。だから、ベースの発音はキックよりもわずかにうしろになる。そのタイミングで鳴らせると、キックとベースがひとつに合わさって聴こえるんです。自分の過去の演奏を聴くと、めちゃくちゃ前ノリで先に行っているし、次の1拍目に合わせようとして4拍目が少し短くなっているんですよね。それがセカセカした感じにつながっていたんだと思います。

⸺弾き方においては、どんな変化がありましたか?
かなり変わりましたね。いいグルーヴの状態にあるプレイヤーって、柔らかく弾んでいるような質感に聴こえるんです。ゴスペル系のベーシストを見ても、すごくソフトタッチなんですよね。僕はもともとピッキングがめちゃくちゃ強くて、指先で弾くイメージが強かったんですけど、今は前腕を使って指の付け根から動かすような感覚で弾いています。そのほうが使っている筋肉が大きいのでスタミナもあるし、力が入りすぎないぶん、弦に対してしなやかにアプローチできるんです。
⸺音色にも影響がありそうですね。
ありますね。結果的に音の雰囲気が柔らかくなって、ローもしっかり出るし、音程感もわかりやすくなりました。強いピッキングだと余計なバズが生まれたり、“頑張っている感”につながってしまうんですよね。とにかく音の質感と、そのための脱力が大事だと思うようになりました。
⸺本当にイチから変革したんですね。
そうですね。以前はどこかに、“ベースヒーローでなきゃいけない”みたいな意識があったんです。でも、それだけではアンサンブルとして成立しないということに気づかされて。でも、マジで大変でした。できなさすぎて、サスフォーを辞めるか、なんならベース自体を辞めてしまうか、というところまで落ち込んだ時期もありました。
⸺そこまで追い込まれていたんですね。
「SUNBURST」は最終的に3000テイクくらい録りました。当時の僕は完璧主義すぎて、頭のなかでは正解が見えているのに、弾くと再現できない状態が続いていて。ようやく“完璧だ”と思えるテイクを送ったら、ワシヤマから“AIみたいなベースだね”と言われたんです(笑)。綺麗に整いすぎていて、ダイナミクスの抑揚がなかったんですよね。結局、その曲では一番最初にドラムと一緒に録ったテイクが採用されました。あれは喰らいましたね。
⸺なるほど……でも、転機になったと。
そうですね。“できていない自分をまず受け入れよう”と思えるようになってから、心がすごくラクになりました。3000テイクを経たことで見える部分も変わったし、「Windows ’98」のイントロでも、自分ひとりでグルーヴを成立させる練習をしてこなかったことを思い知らされました。
⸺今作では、ベースの音作りにも変化を感じました。
全体的に歪みは少なくなっています。以前は派手な音色が好きだったんですけど、今回はアンサンブルに馴染む音を意識しました。必要最低限のエフェクターで、本体の音を加工しすぎないように録っています。コンプも、録りの段階では使わないことをテーマにしました。そのほうがダイナミクスやニュアンスを出しやすいと気づいたので、今回はノーコンプでやりきりました。
⸺ベース本体の音作りも変わりましたか?
変わりましたね。今まではトーンをフルテンにしていたんですけど、アンサンブルのなかではキンキンして聴こえるように感じて。最近は10あるうちの3以下まで絞っています。
⸺レコーディングでは、ベース本体はどのようなものを使ったのでしょう?
今回のアルバムは、ほぼ1972年製のジャズ・ベースで録っています。ただ、トーンを絞るようになってからは、ボトムのロー感が出る1961年製のジャズ・ベースに戻ってきました。今のサスフォーには、アンサンブルを支えられる61年製のほうが合っていると感じています。あとはSugiのRainmaker IIというPJタイプのベースも使っていて、「Velvet Poison Pie」はフロント・ピックアップだけで、プレベ的なサウンドで録りました。
⸺最後に、タイトルの『Goodbye My Roots』にはどんな意味が込められているのでしょうか?
ワシヤマが30歳になった節目でもありますし、メンバーが20代の頃に通ってきたルーツとなる音楽に一度区切りをつけて、“俺らは次に行くぜ”という意味があります。今までの大道芸人みたいな僕のプレイスタイルにも、“グッバイ”した感覚がありますね。サスフォーが本当に生まれ変わったアルバムですし、自分たち全員が納得いく形で完成させられたのは、実は今回が初めてなんです。みんなが自信を持って薦められる最高傑作になりました。ぜひ、“フクダヒロム 2.0”を体感してほしいです。
PROFILE
フクダヒロム
1994年11月3日生まれ、愛知県出身。Suspended 4thのベーシスト。2015年に加入後、名古屋・栄での路上パフォーマンスで注目を集め、2019年に1stミニ・アルバム『GIANTSTAMP』でピザ・オブ・デスからデビュー。スラップを武器に独自の存在感を放ち、本誌では連載「バカテク・スラップ道場」を担当。2023年には本誌発の教則本『HIROMU FUKUDA XTREME SLAP BASS』を発売し、YouTube登録者数5.5万人をはじめSNSでも高い支持を集める。7月から8月にかけて、“Goodbye My Rootsツアー”全13公演を開催する。
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