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「スケール練習は一度だってやめたことがない」サンダーキャットが語る、音作りと練習【インタビュー後篇】
- Interview : Shutaro Tsujimoto(Bass Magazine Web)
- Translation : Tommy Morley
- Photo : Takashi Hoshino
記事の前篇はこちら。
⸺キャリアの最初からフラット・ワウンド弦を使っていたのでしょうか?
途中で切り替えたんだ。20代の頃だったと思う。MTDからアイバニーズのベースに持ち替えたことが、自分のサウンドを新たに作り直していくきっかけになったんだ。もちろん、マイケル・トバイアスは僕のサウンド作りに大きく貢献してくれたし、実際に今でもレコーディングではMTDのベースを弾くことがある。あの赤いMTD製ベースに代わるものはないよ。
ただ同時に、その時期はサウンドやベースという面で、別の方向へ進んでいく時期でもあったんだ。その次の居場所を与えてくれたのが、アイバニーズだったんだよ。
⸺アイバニーズのあなたのベースの重量はかなりのものですが、その“重さ”もあなたのサウンドを形作る重要な要素ですか?
そういう面もあるね。僕の歌い方の関係で、構えたときに横隔膜のあたりに重さがかかっていると、空気を押し出しやすくなるんだ。歌ううえで、間違いなく助けになっている。
それに、この重さがあることで、しっかりと安定するような感覚もある。逆に軽すぎると、ときどき手に負担がかかることもあるんだ。だから重さそのものは、プレイだけでなく歌においても大事な要素なんだと思う。だから、あえてこんなに重く作られているんだよ(笑)。

スケール練習は一度だってやめたことがないよ
⸺とてもシンプルな質問ですが、なぜあれほど速く弾けるのでしょうか? どのような練習を重ねてきたのかも気になります。
自分ではよくわからないな。でも、ああいうプレイができるようになるのは、結局は練習に費やした時間と、成長の積み重ねによるものだと思う。子供の頃からカマシ・ワシントン(sax)やキャメロン・グレイヴス(k)、それに兄弟たちと一緒にプレイしてきて、みんな常にできる限り最高のプレイを目指していた。ライアン・ポーター(tb)やテラス・マーティン(sax,k)もそうだし、周りにいた誰もが、本気でプレイする力を磨こうとしていたんだ。
楽器をプレイすることは本当に大切だったし、それは今でも変わらない。フレージングの腕を磨くためには、譜面を読むことだけでなく、ソロや即興演奏に至るまで、あらゆる面でフィジカルな技術が必要になる。テクニックとフィーリングを身につければ身につけるほど、自分だけの世界を作り出せるようになるんだ。

⸺影響を受けたベーシストについても教えてください。
大きな影響を受けたのは、やっぱりジャコ・パストリアスだね。それからマシュー・ギャリソン、アドリアン・フェロー、ジョン・パティトゥッチ、アンソニー・ジャクソン。彼らはみんな、圧倒的な演奏力を持ったミュージシャンだ。スタンリー・クラークも本当に圧倒的なプレイヤーだし、アルフォンソ・ジョンソンやモヒニ・デイも、ものすごく強烈なプレイヤーだ。櫻井哲夫もレジェンドだよ。彼らの方向性は本当に多岐にわたっていて、みんな偉大だ。でも、ベースにおいてすべてを変えた人は誰かと言われたら、それはジャコだと思う。僕が速くプレイできるようになった理由をたどっていくと、その源流にはジャコがいるんだ。
⸺日々どのような練習をされているのかが気になります。例えば、あなたが大好きなアニメを観ているときに流れてくる音楽に合わせてプレイすることもありますか?
もちろんさ(笑)。『DEATH NOTE』や『ダンダダン』、『犬夜叉』のエンディング・テーマ「深い森」(Do As Infinity)とかね。アニソンを聴くのが本当に好きなんだ。それに僕はソニック・ザ・ヘッジホッグの大ファンだから、あの音楽を聴くと今でも練習したくなる。最近はサウンドトラックがストリーミングで聴けるようになったから、スマホで中村正人が作った楽曲を流しながら、子供の頃のように一緒にプレイすることもある。だから練習するときは、今でも自分が本当に好きな音楽を弾いているんだ。
⸺アニソン以外だと、どんな音楽に合わせて練習していますか?
それから、ときどき新しい曲を覚えようとして、自分にとって新しい音楽にも挑戦する。昔からウェイン・ショーターの大ファンで、彼とミルトン・ナシメントの音楽にも強く惹かれてきたんだ。そこからブラジル音楽のハーモニーやメロディにも興味が広がって、エグベルト・ジスモンチやトニーニョ・オルタの曲もよく練習しているよ。あとは、昔から大好きな映像があってね。神保彰がDCI(Drum Corps International)の映像作品を出していて、そこでは櫻井哲夫がベースを弾いていたんだ。今でもときどき見返しているよ。それに、Answer to Rememberの「Tokyo(feat. ermhoi)」も練習する。この曲は本当に大好きなんだ。ときどき曲に合わせてプレイしているよ。
——黙々とスケール練習をするというよりも、好きな曲に合わせてプレイすることが、あなたなりの練習になっているのでしょうか?
いや、スケール練習は一度だってやめたことがないよ。反復練習こそがプレイ技術を作り上げるものだからね。ミクソリディアンでも何でもいいし、いろいろなスケールやインターバルを学ぶことは大切だ。楽器を扱うためのフィジカルな技術を鍛えることは、とても重要なんだ。スケール練習は本当に大事だよ。

——リズムの練習についても教えてください。メトロノームに合わせて練習することもありましたか?
基本的には、音楽に合わせてプレイしてきたよ。メトロノームは役に立つ一方で、時には足かせのようになることもある。本物の音楽と一緒にプレイしていないと、すごく無味乾燥なやり方を覚えてしまうことがあるんだ。テクスチャーやグルーヴ、フィーリングのようなものは、生の音楽やほかのミュージシャンと一緒に演奏することでしか身につかない部分があると思う。
もちろん、メトロノームがプレイ技術の向上に役立つのも事実だよ。学ぶべき一点に集中させてくれるからね。たとえるなら、ジムにある特定の筋肉だけを鍛える専用マシンのようなものだ。その目的にはすごく役立つ。ただ、そればかりやりすぎると、他人とプレイしたときのタイム感やグルーヴを感じ取る力を損なうこともある。だからスケール練習には良いかもしれないけれど、それ以外では少し危険な面もあるね。
——最後に読者に向けて、練習をするうえでのアドバイスをお願いします。
自分が愛するものを練習することだね。好きなことを練習して、その中に自分へのチャレンジも混ぜてみる。そうすれば、それは必ず自分のためになる。人は挑戦して、そこに時間を費やしたときにしか成長できないものなんだ。ひとりで練習していると、難しく感じたり、モチベーションを見つけにくくなったりすることもある。でも、時間をかけることが大切なのは変わらない。だから、自分をハッピーにしてくれるものを見つけて、それを続けることだ。そうすれば、自然と続けられるはずだからね。
機材紹介記事も近日公開
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PROFILE
サンダーキャット
1984年生まれ、ロサンゼルス出身。サンダーキャットことステファン・ブルーナーは、ドラマーの父ロナルド・ブルーナー、兄ロナルド・ブルーナー・ジュニアを持つ音楽一家で育った。10代でスイサイダル・テンデンシーズに加入し、フライング・ロータス主宰の〈Brainfeeder〉から『The Golden Age of Apocalypse』(2011年)でソロ・デビュー。以降、『Apocalypse』(2013年)、『Drunk』(2017年)を経て、『It Is What It Is』(2020年)でグラミー賞を受賞。ケンドリック・ラマー『To Pimp A Butterfly』(2015年)への参加をはじめ、ジャンルを横断する活動で知られる現代屈指のベーシスト/アーティストである。
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