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INTERVIEW – ヴィクトリア・デ・アンジェリス[マネスキン]

  • Question:Shutaro Tsujimoto
  • Translation:Mariko Kawahara
  • Photo(Live):Yoshie Tominaga
  • Photo(Artist):Francis Delacroix
  • Photo(Bass):Takashi Yashima

一番大事なのは明確なヴィジョンを持つことだと思う。

──マネスキンは「ZITTI E BUONI」「MAMMAMIA」など、とにかくキャッチーで鮮烈な印象を残すベース・リフが楽曲の中心にあるものが多いですよね。そういったベースのプレイ・スタイルはどのようにして形成されましたか?

 単に私の曲作りの方法がこうさせたんじゃないかな。正直なぜだかわからないけど、自然にこうなった。私たちが最初に書いた曲もベース・リフから始まる曲だったの。当時はかなり若かったから全然うまくはなかったけど(笑)。あとはライヴをやればやるほど、新しく見つけた音楽からさらに影響を受けるようになって、ペダルを使うことによってベース・リフを際立たせることができるようにもなっていったね。

「ZITTI E BUONI」

──「MAMMAMIA」など、ベース・リフをギター・リフとユニゾンさせるアプローチも多いですが、曲作りの際はギターとベースのどちらからリフが生まれることが多いのでしょうか?

 「MAMMAMIA」はベース・リフから始まった曲だったけど、これに関しては曲によって毎回変わるかな。さらに私たちの場合は、1曲のなかでも各パートの役割はいろいろ変わる。例えば「ZITTI E BUONI」はヴァースはギターから始まるけど、ブリッジではベース・リフのアイディアが浮かんだからそこはベースが弾いていたり。私たちはできる限り互いにインスパイアし合ったり影響し合ったりしているんだ。

「MAMMAMIA」

──ちなみに「MAMMAMIA」のベース・リフはファズを踏んでいるようなトーンですが、ここで使用した機材は?

 あれはRATペダルと、effettidiclaraというイタリア製ハンドメイド・ブランドのオーバードライブ/ディストーション、AGATAも使っている。スタジオでは、もっといろんなペダルを使っているけどね。

──普段、ベース・ラインはどのようなプロセスで考えていきますか?

 インプロヴァイズすることもあるけど、頭のなかにメロディが浮かぶこともあって、それをベースで弾いてみる。でも大抵はジャムから生まれるかな。あとは、ひとりで弾いたり、ドラムに合わせて弾いたりしているうちにベース・リフが生まれることもあるな。

──あなたの考える、いいベーシストの条件とは?

 どのバンドでプレイしているかによると思う。私のベースの先生が言っていたことがあるの。“君よりうまいベーシストはもちろん山ほどいるけど、君のバンドでやらないといけないことを君は完璧にやっている”って。だから、バンドのサウンドに個性を添えられるものであればいいんじゃないかな。もちろん、うまくなるためにテクニックは役に立つけどね。あと、自分のスタイルを理解することで無限の可能性が広がると思う。もちろん、セッション・ミュージシャンとして別のアーティストのためにプレイする場合は完璧にプレイしないといけないけど、自分のプロジェクトだったら一番大事なのは明確なヴィジョンを持つことだから。自分の好きなものや求めるサウンドに対する明確なアイディアがあって、バンドをどうしたいかがわかっていて、ベストなやり方でそれを達成することが大事だよね。

──デビュー以来、ダンエレクトロのベースを使っていますが、気に入っているポイントはどこですか?

 あのトーンが大好きで、とっても独特だと思う。以前はフェンダーのプレベしか使っていなかったけど、ツアー中に腰が痛くなっちゃったこともあって、ショート・スケールの軽いベースが欲しいと思った。そんなとき、確かザ・フーのビデオで、ダンエレクトロのLonghornを初めて観て、“あれ、何?”って思ってすぐに買ったの。イタリアでは入手困難だったけどね。すごく小さいベースで、リハーサル用で使えればいいと思っていたんだけど、実際に弾いてみたらとっても気に入った。私たちのアルバムを手がけたプロデューサーも、“ディストーション・ペダルとかと組み合わせる君のやり方は、とてもユニークなトーンを生んでいるよ”と言ってくれて、それからはダンエレクトロを使っている。2年か1年半ほど前のことだったかな。

──『Teatro D’Ira Vol.I』のレコーディングでは、ダンエレクトロのベースを使っていますか?

 このアルバムのレコーディングは3日間で行なったんだけど、全部、ダンエレクトロのベース1本で弾いたんだ。ライヴ・レコーディングだったからどの曲も5回ずつぐらい弾いて終わりという感じで、同じベースで全部弾いている。その前のアルバムまでは、フェンダーのプレベをメインで使っていて、ジャズ・ベースも持っていたんだけどね。

今回の来日でメイン器として使用されたダンエレクトロ製Longhorn Bass。韓国製で、シリアルナンバーは“089730”。“このベースは数ヵ月前に手に入れたばかりのもので、確か今年作られたものだったと思う。今、私はダンエレクトロとエンドースをしているから、ベースがたくさん送られて来るの(笑)”。写真は8月18日の豊洲PITでの単独公演時に撮影したもので、ステージ裏にはチューニング違いのベースを含む計6本のLonghorn Bassが用意されていた。このほかのベースや、アンプ、エフェクター・ボードも含めたこの日のライヴ使用機材は、次号のベース・マガジン2022年11月号で一挙紹介予定。そちらもチェックしてほしい。

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