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マイケル・ジャクソンを支えた名手!ルイス・ジョンソンのベース名演10曲【前篇】
- 解説:前田“JIMMY”久史
- 写真:Richard E. Aaron / Redferns
映画『Michael/マイケル』の公開を機に、いま再びマイケル・ジャクソンの音楽に注目が集まっている。なかでもアルバム『Off The Wall』(1979年)から『Thriller』(1982年)へと至る時期の楽曲には、歌、ダンス、アレンジ、グルーヴが一体となってポップ・ミュージックの新たな時代を切り開いていく、その鮮烈な瞬間が刻まれている。そして、その低音を担った重要人物のひとりが、“サンダー・サムズ”ことルイス・ジョンソンだ。
マイケル・ジャクソンの名盤『Off The Wall』『Thriller』で聴かせた、しなやかで強靭なベース・プレイ。ザ・ブラザーズ・ジョンソンで鳴らした切れ味鋭いスラップ。そして、アレサ・フランクリンやマイケル・マクドナルドの楽曲で見せた、歌に寄り添う職人的なアプローチ。派手なサムピングのイメージの奥には、音色、音価、間合いを徹底的にコントロールする名セッション・ベーシストとしての凄みがある。
今回は、映画公開を機に改めて注目を集めるマイケル楽曲を中心に、ルイスの名演を本誌の名物ライター、前田“JIMMY”久史が、愛と分析を込めて10曲厳選。珠玉の名曲のなかに潜む、ルイス・ジョンソンの低音美学を掘り下げる。(編集部)

1. 「Get On The Floor」
(マイケル・ジャクソン『Off the Wall』収録/1979年)
ルイスのスラップ・プレイの特徴である、弦をまたいだ自在なサムピングが活躍する曲。作曲クレジットは、マイケルとルイスの共作となっている。
この曲が生まれたきっかけは、マイケルが頭のなかで鳴っていたベース・ラインをハミングしてルイスに伝えたことだったと言われている。そこからこのような強力なベース・ラインが生まれ、そのラインが曲に与えた貢献度に対するリスペクトも込めて、共作クレジットとなったのだろう。
メインの4小節パターン・リフは、ほとんどダウン・サムピングを中心にプレイされている。プルは4小節目4拍目の16分裏に入るアクセント一発のみで、細かなゴーストノートもすべてサムピングのダウン・ストロークで叩いている。
0:39からのベース・ラインは、まさにルイスの真骨頂だ。Gmコード上で、m3rd=1弦3フレット〜root=2弦5フレット〜P5th=3弦5フレットという、1弦、2弦、3弦をまたぐ16分の3連打を、素早い手首の返しによるダウン・サムピングで軽やかに叩いている。
通常、スラップで1弦を弾く場合はプラッキングでのプレイが多く、ルイスのような振り上げ型のサムピングでは、1弦は基音が鳴りにくいため敬遠されがちだ。しかしルイスは、そこでもしっかりとした発音で叩いている。その後のオクターヴのラインは、オーソドックスなサムピング+プルで弾かれている。
2.「Off The Wall」
(マイケル・ジャクソン『Off the Wall』収録/1979年)
この曲の作曲とリズム・アレンジを手がけたのは、当時、洗練されたディスコ・ファンクで大きな人気を博していたイギリスのバンド、ヒートウェイヴ(Heatwave)の中心人物であるロッド・テンパートンだ。
彼の作曲法は、最初にベース・ラインを柱として作るものだったそうで、この曲のメインのベース・ラインも彼が書いたものだろう。メロディックな9th音の使い方や、コーラスなどのモジュレーションがかかった音色は、ヒートウェイヴの「Boogie Nights」などのベース・ラインを彷彿とさせる。
Aメロとサビのベース・ラインは、シンセ・サウンドとルイスの指弾きによるプレイが重なることで作られている。ルイスの指弾きのトーンは、グリージーなスライドと相まって独特の色気がある。
Bメロと大サビのラインでは、ストイックな音価コントロールが素晴らしい。スラップで名を馳せたルイスだが、指弾きだけでも並々ならぬ実力の持ち主であることがよくわかる。クインシー・ジョーンズがルイスに惚れ込んだ理由が伝わってくるプレイだ。
3.「Girlfriend」
(マイケル・ジャクソン『Off the Wall』収録/1979年)
この曲はポール・マッカートニーの手によるもので、先に1978年、ウイングスのアルバム『London Town』で発表され、翌1979年にマイケルの『Off The Wall』に収録された。
興味深いのは、ポールがもともとこの曲をマイケルが歌うことを想定していたという点だ。ベース・ラインはほとんどEメジャー・ペンタトニックで作られており、メジャー・ペンタトニックの使い方や、リズムの間合いの取り方の良いお手本になるだろう。
音色は粒立ちの良い、はっきりとしたトーンで、トリルなどの装飾的なプレイも効果的に使われている。サビではスラップを交えてメリハリをつけており、通常の2フィンガー・プレイとバランスよく使い分けている印象だ。
フェイドアウト間際の強めのアタック音と、少し後ろに引いたリズムも実にカッコいい。音の隙間で強力にグルーヴするルイスのベースと、浮遊感を持ちながら自由に歌と並走するポールのベース。マイケル版とウイングス版、ふたつの「Girlfriend」を聴き比べてみるのも面白いだろう。
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4.「It’s The Falling in Love」
(マイケル・ジャクソン『Off the Wall』収録/1979年)
シティポップの超有名曲のアレンジの元ネタとして語られることでもお馴染みの曲だ。作曲はデイヴィッド・フォスターとキャロル・ベイヤー・セイガー。AOR風味の爽快な楽曲に、ルイスのベースが黒いドライヴ感を与えている。
Aメロの裏拍アクセントは、弱めのオクターヴ・アクセント。一方、Bメロの裏拍アクセントで聴けるサムピングは、下からえぐるようなハンマリングのニュアンスが実に黒く、マイケルとパティ・オースティンのデュエットとともに、じわじわとサビへ向かって高揚感を高めていく。
サビもスラップで、いわゆる“トンツタッタ”という16分裏アクセントのオクターヴ奏法だ。この裏の16分は、通常であればプルを使って“トンツペッペ”と弾くのが一般的だが、ルイスは分厚いアタック音のサムピングでオクターヴ上を叩いているところが、いかにも彼らしい。
このベース・サウンドについても触れておきたい。プロデューサーのクインシー・ジョーンズは、ラウンド・ワウンド弦特有の、ポジション移動時に生じる“キュッ! キュッ!”というフィンガー・ノイズを嫌っていたと言われており、ルイスにはフラット・ワウンド弦を使わせていた、という話がある。そのため、マイケル作品をはじめとするクインシーのプロデュース作では、アタックが分厚く、実に落ち着いたベース・サウンドで録音されている。
逆に、クインシーが関わっていない作品では、ラウンド・ワウンド弦らしいギンギン、パキパキとした派手なサウンドのものも多い(笑)。
5.「︎Burn This Disco Out 」
(マイケル・ジャクソン『Off the Wall』収録/1979年)
作詞・作曲は、ヒートウェイヴのロッド・テンパートン。クインシー・ジョーンズ御用達とも言える、ルイス・ジョンソンとジョン・ロビンソンによるタメの効いたリズム、そしてボトム感が心地良さ満点だ。
Aメロは、休符を大きく使った2小節パターンのライン。ところどころでバリトン・サックスとユニゾンになるアレンジが肉厚で美味しい。2小節ごとに入る4拍目の16分のオカズは、ルイスらしい手癖フレーズだ。
また、ベース・ラインがコードやハーモニーを説明しすぎていないところも気持ち良い。Bメロでは、指弾きのリフの合間にスラップのフィルを挟むようなプレイを聴かせており、指弾きからスラップのプルへのスイッチングが滑らかでカッコいい。
今では多くのプレイヤーが取り入れている、こうしたペンタトニックを用いたプラッキング・フレーズも、ルイスがスタンダードな形を作ったと言えるだろう。
1:35からのサンバ・キックに乗った、スピーディーな指弾き16分のランニングは、疾走感が実に気持ち良く、彼の芸達者な一面を聴かせる。さらに2:29からの、ホーン・セクションに絡むプラッキングの間の取り方は、これぞ王道ファンク!
後篇でもさらなるベース名演を紹介!

◎執筆者プロフィール
前田”JIMMY”久史(まえだ じみー ひさふみ)●高校を卒業したのち、北海道でのハコバン生活を経て25歳頃に上京。その後は小泉今日子、一世風靡セピア、X JAPANのToshI、ダイヤモンドユカイ、しばたはつみ、森川智之などさまざまなアーティストのサポート、スタジオ・ワークを行ない、沢田研二、鳳蘭、布施明などのミュージカルのバンド・マスターを担当。また、後進育成のため学校法人ESPにて講師として活躍するだけでなく、海外にも遠征。2000年頃から現在まで『ベース・マガジン』にて奏法に関連した記事を多数プロデュース。『プロ・ベーシストに近づくためのメソッド集』『究極のピック弾き練習帳』『ファンク・ベースの教科書』など多数の教則本も執筆している。
◎https://ameblo.jp/jimmy-bassman

