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    マイケル・ジャクソンを支えた名手!ルイス・ジョンソンのベース名演10曲【後篇】

    • 解説:前田“JIMMY”久史
    • 写真:Richard E. Aaron / Redferns

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    6. 「Billie Jean」
    (マイケル・ジャクソン『Thriller』収録/1982年)

    この曲のベース・ラインは、誰もが一度は耳にしたことのある、ポップ・ミュージック史上屈指のシンプルかつ有名なベース・ラインだろう。思わず踊り出したくなるこのラインは、ルイスのベースとシンセ・ベースのユニゾンで作られている。

    ポイントは、音を切るタイミング、つまりスタッカートのコントロールにある。切りすぎには要注意だ。リフの音使いは、F♯マイナー・ペンタトニック内のF♯、C♯、E、Bで構成されている。

    ドラムは、ハービー・ハンコック、ウェザー・リポート、サンタナなどでの名演でも知られる鬼テク・ドラマー、レオン“ンドゥグ”チャンクラー。ここではあえて、これ以上ないというくらいシンプルなプレイでビートを刻んでいる。ミニマルなドラムとベースのコンビネーションが、マキシマムな効果を生み出しているのだ。

    また、そのミニマルで不穏なグルーヴは、マイケルが体験したという、熱狂的なファンをめぐる恐怖や不安もよく表わしている。

    マイケルはのちに、ダリル・ホール&ジョン・オーツの「I Can’t Go for That (No Can Do)」のグルーヴを「Billie Jean」に拝借した、とダリル・ホールに直接話したという。ナルホド! ぜひ聴き比べてみてほしい。

    7.「Mista’ Cool 」
    (ザ・ブラザーズ・ジョンソン『Blam!!』収録/1978年)

    クインシー・ジョーンズのプロデュースによるブラジョンの大ヒット3rdアルバム『Blam!!』からの曲。ルイスのスラップが大きくフィーチャーされた、彼の得意フレーズのショーケース的な1曲だ。

    Aメロ、0:09のギターとのユニゾンは、いきなり素早いダウン・サムピングによる16分音符5連打で、スナップの柔らかさがものを言うところだ。その後の、タメの効いたタイミングで入るプルも気持ち良い。

    0:27からのBメロは、文字どおりクールでメロウ。いかにもクインシー・ジョーンズのプロデュースといった趣だ。ここのベースは指弾きのパートだが、ここも一筋縄ではいかない。2小節パターンの歯切れ良いフレーズで、弦跳びが激しく、4拍目では1弦から4弦まで16分のレイキングで駆け下りる。レイキングのバリエーションが豊富なのも、ルイスの特徴だ。

    0:44と2:27からはスラップのアドリブ。ON THE ONEの合間に、ゴースト・ノートや3拍フレーズをはじめ、人差指と親指で弦をつまみ弾く奏法など、さまざまなルイス・フレーズが飛び出す。どれもパーカッシヴで、キレ味抜群だ。

    8. ︎KIKO
    (アール・クルー『Living Inside Your Love』収録/1976年)

    アール・クルーのガット・ギターと、ルイスのスラップ・ベースを中心にした演奏で、スラップ・プレイとしてはラリー・グラハムの「Hair」と並ぶ、エポックメイキングな演奏だ。

    まず、ベースの音がとても美しい。使用楽器は、この頃ルイスが愛用していたメイプル・ネックのプレシジョン・ベースにフラット・ワウンド弦を張り、深めのコンプ処理を施したものと思われる。

    この曲は、ハンマリングや開放弦のゴーストノートの使い方など、ルイスのアイディアが満載の名演。奏法はなんとダウン・サムピングのみで、プルは一切使っていない。

    コード進行は、“D/A|E7/A|D/A|Bm E7/A”という非常にシンプルなもの。そのまま指で弾くと、シンプルなフォーク・ソングのようにも聴こえる。イントロはベースから入るのだが、16分で食ってハンマリングで頭に入っているため、慣れないとリズムの頭がわかりにくいかもしれない。

    このようにファンクの要素がまるでない曲に、スラップでばっちり合わせてしまうのは画期的なことだった。当時、“チョッパーはファンキーなものだけでなく、フォーキーな曲にもカッコいいじゃないか”と、ただただ感心したものだ。

    ルイスはこの曲で、スラップの新たな境地を切り開いたと言える。

    9.「I Keep Forgettin‘ 」
    (マイケル・マクドナルド『If That’s What It Takes』収録/1982年)

    スティーリー・ダンでの活動や、ドゥービー・ブラザーズでの活躍でも知られるマイケル・マクドナルドの代表曲だ。ドラムの相方は、TOTOやスティーリー・ダンでお馴染みのジェフ・ポーカロ。このふたりはよほど相性が良いのだろう。抑制の効いたルイスとジェフによる、シンプルだが凄みのあるコンビネーションが聴きもので、曲の主導権を握るベースとドラムを聴いているだけでワクワクする。

    この曲は、ヒップホップ界の重鎮ウォーレンGとネイト・ドッグによるヒップホップ・クラシック「Regulate」で大胆にサンプリングされるなど、時代やジャンルを超越した極上のグルーヴと言える。

    タイトにシンクロするキックとベースに加えて、ジェフのドラムは、ほんの少しスイングした16分のハイハットと、ほんの少し後ろにレイドバックした2拍4拍のスネアが生む、タメの効いたリズムがすこぶる気持ち良い。

    3:18からの、ジェフによる頭抜きの16分3連キックと、ルイスの色気たっぷりのフィルの絡みは鳥肌モノだ。

    10. 「︎Just My Daydream」
    (アレサ・フランクリン 『Jump to It』収録/1982年)

    ルーサー・ヴァンドロスのプロデュースによる、アレサ・フランクリンのアルバム『Jump to It』からの曲だ。

    このアルバムでは、マーカス・ミラーが6曲でベースを担当し、「It’s Your Thing」のプレイはカッコ良すぎて悶絶もの。さらに、フランシスコ・センテーノが1曲でベースを弾いており、これがまた無茶苦茶渋いスラップだ。そして、ヨギ・ホートンらNY勢に混ざって、ルイス・ジョンソンもこの「Just My Daydream」でベースを弾いている。

    アレサに寄り添う、シルキーかつパンチの効いたルイスならではのバラード・プレイには思わず唸る。スラッパーとしてではなく、職人セッション・ベーシストとしてのルイスの素晴らしさを体感してもらいたい。

    そのサウンドは、ふくよかなローの感触が素晴らしい。長めの音符による指弾きから入り、0:32〜0:55では抑制の効いたスラップを聴かせるが、そのトーンが最高だ。音を聴く限り、おそらくミュージックマン・セイバー(Music Man Sabre)であろう。

    1:42からは、ルイスならではのスウィング感たっぷりのアプローチが気持ち良い。繊細なサムピングや、3:09からのスラップの歌い回し、3:52以降のアプローチなど、これを聴くと、マーカスはラリー・グラハムだけでなく、ルイスからもかなり影響を受けていたのではないかと思う。

    ◎執筆者プロフィール

    前田”JIMMY”久史(まえだ じみー ひさふみ)●高校を卒業したのち、北海道でのハコバン生活を経て25歳頃に上京。その後は小泉今日子、一世風靡セピア、X JAPANのToshI、ダイヤモンドユカイ、しばたはつみ、森川智之などさまざまなアーティストのサポート、スタジオ・ワークを行ない、沢田研二、鳳蘭、布施明などのミュージカルのバンド・マスターを担当。また、後進育成のため学校法人ESPにて講師として活躍するだけでなく、海外にも遠征。2000年頃から現在まで『ベース・マガジン』にて奏法に関連した記事を多数プロデュース。『プロ・ベーシストに近づくためのメソッド集』『究極のピック弾き練習帳』『ファンク・ベースの教科書』など多数の教則本も執筆している。
    https://ameblo.jp/jimmy-bassman

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