ライヴのときもバッキング・トラックを使っていなくて、
本当に3人だけで音を出している。

──現代において“ロック・バンド”でプレイするなかで、“低音”に対してはどのような哲学を持っていますか？　最新曲で、マックス・マーティンを新しいプロデューサーとして迎えた「SUPERMODEL」は、過去の曲よりもさらに重心が下がり、ロー・エンド豊かなミックスで、サウンド・アプローチの変化を感じました。

　「SUPERMODEL」は、私たちが作った曲のなかではそれほどアグレッシブではなくて、もっとポップ寄りな曲だと思っているから、ベースもあまり歪んでいないんだ。ディストーションをかければかけるほど当然低音が失われてしまうから、毎回バランスを取るようにしているの。「SUPERMODEL」ではリフを弾かずにギターに合わせているのもあって、この曲ではグルーヴや低音が必要だと思ったんだ。一方「MAMMAMIA」では私がメイン・リフを弾いているから、クールなトーンを出すことにこだわっている。というわけで、曲のパートによるって感じ。「SUPERMODEL」はいつものプロデューサーが手がけたものじゃないから、当然彼のやり方はそれまでとは違っていたよ。

──フォー・シーズンズの「Beggin’」や、先ほども出たブリトニー・スピアーズの「Womanizer」など、これまでにカバー曲も披露していますが、カバーのベース・ラインを考えるときは何を意識していますか？

　毎回、オリジナルのベース・ラインを気にせずに、自然に出て来るベース・ラインを弾くようにしている。4人で弾き直してみるんだ。特にブリトニー・スピアーズの曲なんかはそう。もちろん、パートをそのまま弾くところもあるけど、この曲の場合はまったく違う曲として楽器もアプローチも完璧に変えているから、ベース・ラインも完璧に書き換えていて。そしてあとになってから、オリジナルと比較してみるの。そこから何かインスピレーションかクールなものを得られるのであれば考え直すけど、そうでなければ単に私たちで曲自体を書き換えちゃうって感じ。ダミアーノが“こういうメロディを思いついたんだけど”って言ったら、それに合わせて楽器部分も考える。それが（カバー）曲に対する私たちのアプローチだね。

──さて、最後の質問です。マネスキンのベーシストとして、最も大事にしているマインドはなんでしょう？

　私にとって一番大事なのは……。残念ながらいまどきはライヴをやっているビッグな若いバンドがあまりいないから、私たちにその機会があることをとてもラッキーだと思っているし誇りに思っている。私たちの曲はオーバープロデュースされていないし、ライヴのときもバッキング・トラックを使っていなくて、本当に3人だけで音を出している。そして、これはとても珍しいことだと思うんだ。特にいまどきのロックはとてもプロデュースされていて、いろんなものが加えられているからね。私たちにとってとても大事なのは、ライヴ感と曲に対する愛を取り戻して、リアルにプレイすること。どんな曲や音楽であろうとも、私たちはアナログ・サウンドを取り戻して、“楽器を弾く”ということを心がけているよ。