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日向秀和が語るベーシストとしての新境地 ─『Fire Inside Us』で見出したNCISの未来図
- 取材:尾藤雅哉(BITTERS,inc.)
- 写真:あつや
ひなっちが見据える、ベーシストとしての次なる局面とは?
Nothing’s Carved In Stoneが、約4年ぶりとなる新作『Fire Inside Us』を完成させた。壮大な世界観で展開する重厚なロック・サウンドやグルーヴィに躍動するダンス・チューン、思わずシンガロングしたくなるメロディアスなポップ・ナンバーまで表情豊かな楽曲を収録した意欲作に仕上がっている。新たな相棒である5弦ベースを手に、質実剛健なプレイでバンド・アンサンブルの屋台骨を支えるのが日向秀和だ。
ベース・マガジン2026年5月号では『Fire Inside Us』の制作背景/ベース・プレイにまつわるインタビューのほか、最新機材の紹介を掲載しているが、ベーマガWEBではそのアウトテイクを特別公開する。ART-SCHOOL/ZAZEN BOYSとの対バンを経て見出したという自身の現在地、そして日向が思い描くプレイヤーとしての未来について聞いた。

ワーナーミュージックジャパン
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これまで鳴らしていなかった低音域のところに
魅力的な鉱脈がたくさん眠っている
——昨年から今年にかけて、日向さんが過去に在籍したART-SCHOOLとZAZEN BOYSとの対バンがありましたね。改めて振り返ってみて、どのようなライヴでしたか?
対バン、続きましたね。どちらのライヴもメンバーとして活動していた頃のいろんな記憶を思い出したので、頭の中はかなり目まぐるしかったです(笑)。特にZAZEN BOYSと対バン(2025年7月)した時は、自分が作ったフレーズを別のプレイヤーが弾いているライヴを目の当たりにして、言葉にすると当たり前のことなんですけど……弾き手の個性がグルーヴやアンサンブルに色濃く反映されるんだなってことを改めて強く感じました。

——その個性というのは、具体的にどういった部分で感じましたか?
例えば……僕が指で弾いていたパートをMIYAちゃんはスラップで弾いていて。細かい部分ですけど、演奏者による曲の解釈の仕方によって使うテクニックも変わってくるし、それによって同じ曲でも表情がまったく違っていて……曲が“進化”している感じがしたんですよね。その光景を見て、演奏する人をバトンタッチしながら曲がどんどん新しい形に成長していくのは素晴らしいことだと思いましたし、音楽や演奏表現が時代を超えていくような可能性を感じました。あとストレイテナーでART-SCHOOLと対バン(2026年2月)した時は、(木下)理貴(vo,g/ART-SCHOOL)が“余計なことをしない演奏が一番カッコいい”ってことをずっと言い続けていたなってことを思い出したりしました。
——当時言われたその言葉は、自身のプレイスタイルにどのように生かされていると感じますか?
やっぱりバンド・アンサンブルの中の役割として、ベースがうるさいと思われたら終わりなので、極端な場面では思い切り弾きまくっていいけど、基本的に余計なことはしないという両者のバランスは、ベースを弾くうえで一貫してこだわり続けているところかもしれないです。やっぱりリズム楽器として楽曲をしっかりと支える部分と、“一体何があったの?!”ってくらいやりたい放題に暴れるところの2極性というのが、ベーシストとしての自分の軸になっているんじゃないかな。
テクニックやエフェクターを使った派手なプレイでインパクトを残すこともできるし、それがあることで逆に“音を鳴らさない”フレーズも成立させられる……そうやってベースを鳴らすタイミングでコントラストをつけていくという意味では、バンドにおけるベースの役割に関してエフェクターをオン/オフしながら使い分けていくような感覚に近いのかもしれないですね。もしくは照明のような舞台装置的なイメージなのかも。
——改めて、ナッシングスというバンドで今後やってみたい制作の形はありますか?
極端な話……同期の音を入れずに“4人だけで鳴らす音”を一発録りで収録するのはおもしろいんじゃないかなってことを、たった今、話していて感じました(笑)。うちらは全員演奏技術があるんだから、あえて生演奏というところに焦点を当てるのは、今の時代において逆にプリミティブな表現を届けることができるんじゃないかなって。そのやり方は、ナッシングスにとっても新しい試みになるかもしれませんね。

——この時代にあえて一発録りというアナログな手法を取り入れるのはおもしろい取り組みだし、それによって音源にも何か違いが生まれそうですね。
最近の技術だとAIでなんでもできちゃうじゃないですか。ついこないだもスタジオでたまたま流れていたBGMをその場で試しにAIに突っ込んでみたら、めちゃくちゃオシャレなアレンジになって返してきたんですよ。そういう環境が当たり前になりつつある世界で、自分たちがどんな想いを込めて曲をレコーディングして作品として残すのかってことに対して……いろんなことを考えてしまいますね。個人的には、さっき話した生演奏のように表現している人の個性がリアルに伝わるような届け方のほうが、作品として成立するような感覚もあったりして。
——そういった思想やこだわりは、新作『Fire Inside Us』にも込められている?
『Fire Inside Us』に収録されている「孤独の先」では、機械的なグルーヴを人力で表現したいとイメージしていたので、あえてアンサンブルをドライブさせないように意識しながら指弾きでタイトなエイト・ビートを弾いたりしたんです。自分自身でも、ここまでシンプルなフレーズをストイックに弾くのは新鮮でしたけど、機械的なノリの楽曲も超ストイックに人力で演奏することで、人間の生演奏でしか作り出せない鬼気迫る表現になるように感じました。
──先ほど一発録りという話も出ましたが、たとえば今作でセッションライクに詰めていった楽曲はありましたか?
「シリウスの月」は(村松)拓(vo,g)が持ってきたギター・リフから全体の構成をまとめていって完成させた曲ですね。たしか2〜3時間くらいで最終的な形になったんじゃないかな。セッションの延長のようなやり方で作ったので、遊べる余白がたくさんあってベース・ラインも自由に構成できました。その場でアレンジしていく楽しさがありましたね。
——では、現在の日向さんがベーシストとして目指している“うまさ”とは?
ベーシストとしてもっといろんなコード感を表現したいです。おそらく5弦ベースを手にしたことによる影響が強いと思っていて、使える弦が1本増えたことで、ベースという楽器で表現できる和音の幅が大きく広がったんですよね。なんていうのかな……絵を描くキャンバスのサイズが大きく広がった感覚に近いかもしれない。これまで鳴らしていなかった低音域のところに、魅力的な鉱脈がたくさん眠っていることに気づいてしまったので……そこに新たな表現の可能性を感じています。
——ベース・ラインを構成する際、ローB弦はどのように作用していると実感していますか?
ベース・ラインを作る時の指の運び方にも変化があったりして、それが自分でもすごく新鮮でおもしろくって。最近は、過去に作った曲を5弦用にアレンジし直したりもしているんですよ。例えば「In Future」は、4弦だけC♯なんですけど、“昔の俺はどんな感覚で作っていたんだよ!”っていう再発見もありましたから(笑)。そうやって過去に作った曲を再構築することにも可能性を感じているので、今はそれがすごく楽しいですね。
Profile
日向秀和(ひなた・ひでかず)●1976年12月4日生まれ、東京都出身。愛称はひなっち。2002年にART-SCHOOLでデビュー。その後、ZAZEN BOYS、ストレイテナー、Nothing’s Carved In Stoneといった数多くのバンドのメンバーとして活躍する。また、稲葉浩志、米津玄師、Vaundy、TK from 凛として時雨、MIYAVI、Superflyといったアーティストのスタジオ・ワークもこなす。近年ではKatsina Sessionとしても精力的に活動している。愛称はひなっち。
Information
日向秀和
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Nothing’s Carved In Stone
HP X Instagram
別内容のインタビューが2026年5月号に掲載!


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