NOTES
UP
テーマソングは化学技術によってブーストされる『トルネコの大冒険』【クリープハイプ長谷川カオナシのレトロゲーム喫音堂】第39回
- 文:長谷川カオナシ
- バナードット絵:石田芙月(株式会社.AC)
毎回レトロゲームの音楽を取り上げ、その魅力をクリープハイプの長谷川カオナシが独自の視点で伝える連載『レトロゲーム喫音堂』。今回は、『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン』のBGMを分析!
お世話になっております。
奇数月は喫音堂の月!
RPGの金字塔『ドラゴンクエスト』はなんと40周年。
9月11日にはそれを記念して、スピンオフ作品である『トルネコの大冒険』の『ちょっとステキなリマスター』がリリースされました。
前回の『がんばれゴエモン』のときと同様、SNSのタイムラインも大盛り上がりでした。
トルネコの大冒険、やっていきます!
『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン』
(1993年/チュンソフト)(※1)
ローグライクゲームというジャンルの始祖的なゲームです。
レベルを上げて冒険をしていくRPGとは一風違い、ワンミスですべてが水泡に帰すという攻めたゲームシステム。
ドラクエ4の登場人物であるトルネコを起用するということは、ドラクエのシステムに慣れたプレイヤーたちがプレイするということ。
当時彼らはこの斬新なシステムをすんなり受け入れられたのでしょうか?
逆に開発サイドからすると、攻めたゲームシステムだったからこそドラクエブランドのキャラクターの力を借りる必要があったのかもしれません。
しかしこの作品のヒットのおかげで、今やローグライクは熱狂的なファンを抱えるいちジャンルへと成長しました。
さて、そんな攻めたゲームシステムの『トルネコ』、BGMも攻めてます!
メインテーマはドラクエ4でのトルネコのテーマである『武器商人トルネコ(※2)』。
彼のふくよかな体型をイメージしてか、ベース・ラインがメロディを担うコミカルな楽曲です。
ゲーム中に登場するほぼ全ての楽曲はこの曲のアレンジとなっております。
……え、まじ??
まあまあクセの強いメロディなんですけど、プレイヤーが聴き飽きたりしないもんなんですか??
大丈夫なんです。何しろ巨匠すぎやまこういち先生の作曲なので……。
一体どんなアレンジで聴かせてくれるのか。
三曲取り上げてみましょう!
①大理石のダンジョン(トルネコのテーマ)
ファミコン版ドラクエ4のBGM『武器商人トルネコ』を、そのままSFC音源にしたような、基本となるテーマです。明るいハ長調でコミカル。
楽器構成はコントラバスのような低音弦楽器がメロディを、フルートのような高めの木管楽器が伴奏を奏でています。
メロディに着目してみましょう!

【ア】の箇所。ハ長調の「ドレミファソ」という上昇音階、「ドシラソファ」という下降音階。
全人類が耳にしたことがあるのではないか?というフレーズを内包した、キャッチーなラインです。これがメインテーマになります。
【イ】5小節目。「ドレミファソ」が1音ずつ上がり「レミファソラ」になります。
ファは#になり、ニ長調の響きになります。【ア】を承けた展開。
【ウ】ドーシラソッファ、ミレドシラという下降音階。
ただし、シとラとミとレが♭。これは変イ長調の響きです。
【エ】ドーシラソッファ再び。しかし【ウ】の時の♭は全て無くなり、ハ長調の響きに戻っています。
雲が晴れたような爽快感がありますね!
②石組みのダンジョン
雰囲気が若干変化します。①とはまた違った怪しいコミカルさを内包しているような。
メロディはエレキ・ベース。伴奏はトランペットのような金管楽器、後半でクラリネットのような木管楽器。
さらにドラムの音色も入ります。メロディに着目してみましょう!

先ほどまでのテーマにだいぶ近いですが、画像内の赤で囲んだ音。シが♭になっています。
これはコードで言うと「セブンス」の成分。
「セブンスというのは、不安定な音程を含んだ緊張感のある響き」。
ブルースジャズやロックの定番のコードです。

更に曲の後半。これらの赤で囲んだ音もセブンス成分です。怒涛のセブンス。
メインテーマの印象を残しつつ、セブンスの強調によって雰囲気の変化を丁寧に説明していますね。
③くさった板のダンジョン
更にがらりと雰囲気が変わります。短調になり、どこか悲しい雰囲気を纏いました。
メロディはコントラバス、伴奏はホルンのような金管楽器とクラリネットのような木管楽器で構成されているようです。
メロディラインに着目してみましょう!

赤く囲った音は短調の響きの成分です。これが頻出することにより、もの悲しい雰囲気になります。
ただし短調一辺倒ではありません。青く囲った箇所。メインテーマでいう【ウ】に当たるパートですが、ここでは逆に長調になります。
まるで、暗い廃屋に一筋の陽の光が差し込んだかのよう。
この陰陽の使い分けが実に美しい曲です。
いかがでしょうか。同じメロディをテーマにしていても、その歌いまわしの操作や楽器構成によって変幻自在の様相です。
本作のサウンドトラックCDのタイトルは、『組曲「トルネコの大冒険」~音楽の化学~』。
まさに化学。奇術のようだけどロジカルに構築された、実に精巧な技術だと思います。
▼今回の演奏動画▼
さて今回はすぎやまこういち先生の作編曲の手腕を存分に堪能しました。
『トルネコ』発売月の今月ですが、筆者にとっても盛りだくさんの1ヵ月でした。
東京ゲームショウ2026で配信された『ゲー音部~ゲーム音楽をアーティストが演奏する部~』への参加(※3)。
ゲーム音楽にフォーカスした連載をする身としてはとても嬉しかったです!
そしてそして、クリープハイプは新曲『23,24』をリリースします!
ロックバンド・サウンドに加え、ピアノとストリングス。
バンドが培ってきた作編曲の技を遺憾なく発揮できたのではないでしょうか。
是非チェックしてください!
それではまた再来月までご機嫌よう。
(※1)
^音楽はすぎやまこういち先生。生み出された数々の楽曲の素晴らしさは言わずもがなですが、特にドラクエを代表する「序曲」はなんとたった数分で作曲されたそうです。
(※2)
^この曲のファミコン版ドラクエ4のバージョンは、『ベースがメロディを担うゲームBGM』として
喫音堂第4回でも取り上げています!
(※3)
^株式会社Gamchewの田口尚平さん、元UNISON SQUARE GARDENの鈴木貴雄さんが中心となり発足された番組。
喫音堂第21回でギターを弾いてくれた盆子原唯一さんも参加されています!
https://youtube.com/channel/UCmlEjH57DMoYceeBc1HMqIQ?si=VMWUHiqKn6rsTdpi
◎Profile
はせがわ・かおなし●1987年9月23日生まれ。ロックバンド“クリープハイプ”のベーシスト。小学生でピアノとヴァイオリンを手にし、高校1年でベースを始める。ベースのほかにエレキピアノやビオラなども演奏。クリープハイプは2001年に尾崎世界観(vo,g)を中心に結成。2009年に長谷川、小川幸慈(g)、小泉拓(d)を擁した現編成となる。2012年、メジャー・デビュー。2014年に初の日本武道館2days公演を開催、2018年5月にも約4年ぶりとなる2度目の日本武道館公演“クリープハイプのすべて”を成功させる。2024年11月に、キャリア史上最大規模の会場となるKアリーナ横浜で、現メンバー15周年記念公演“2024年11月16日”を開催。2024年12月に7tnアルバム『こんなところに居たのかやっと見つけたよ』をリリースした。2025年2月から7月にかけて、ホール&ライブハウス15公演・アリーナ4箇所8公演をまわるキャリア史上最大規模となる全国ツアーを開催。2025年11月26日に自身初のソロアルバム『お面の向こうは伽藍堂』をリリースした。
◎Information
長谷川カオナシ
X Instagram YouTube
クリープハイプ
Official HP YouTube X Instagram Facebook TikTok

