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    世界一有名なゲームBGMを分析します『スーパーマリオブラザーズ』【クリープハイプ長谷川カオナシのレトロゲーム喫音堂】- 第37回

    • 文:長谷川カオナシ
    • バナードット絵:石田芙月(株式会社.AC)

    毎回レトロゲームの音楽を取り上げ、その魅力をクリープハイプの長谷川カオナシが独自の視点で伝える連載『レトロゲーム喫音堂』。今回は、世界一有名なあのゲームのBGMを分析!

    お世話になっております。
    奇数月は喫音堂の月!
    映画『ザ・スーパーマリオギャラクシームービー』観ました!
    ゲームBGMの力ってすごい!と感じました。
    劇中、あんなゲームのあんなテーマが一瞬流れるだけで
    脳に「今はこういうシーンなのか!」と情報が流れ込んで来ます。
    そしてそれを上手にアレンジして劇伴に落とし込むサウンドクリエイター、
    実に粋だと感じました。
    今日はスーパーマリオを代表するBGMに触れていきます!

    『スーパーマリオブラザーズ』
    (1985年/任天堂)※1

    通称「地上BGM」、
    世界で一番有名なゲームミュージックです。
    冒頭の「パパッパッパパッパ!」を聴いただけで「マリオの曲だ!」と認識できる人が
    この地球上に何十億人居ることでしょうか。
    『スーパーマリオブラザーズ』以降も
    数々のマリオシリーズでアレンジ引用され代名詞となりました。
    ゲーム以外の分野にも進出しており、1985年にはこれを元にした楽曲「GO GO マリオ!!」が谷山浩子(※2)さんによるヴォーカルでレコーディングされたこともあります。
    2023年にはアメリカ議会図書館の「全米録音資料登録簿」にゲームBGMとしては初めて登録されたそうです。
    まさに世界の知的財産ですね。

    この楽曲の優れている点を語り出すとキリがありませんが、
    ここでは大きく3つ挙げていきます。
    ①「パパッパッパパッパ!」の響きがオシャレ
    ②メロディのリズムだけで楽しい
    ③3トラックそれぞれの動きに隙がない

    ①「パパッパッパパッパ!」のリフ。
    メロディラインは階名で言うと「ミミッミッドミッソ!」です。
    これはCメジャーの構成音であり、Cメジャーとは
    ピアノの白い鍵盤のみを使用した「耳馴染みの良い和音」。
    ただし、伴奏がちょっと変わっています。
    ハモリはファ#、ベースはレ。
    これにより、Dadd9的ななんかオシャレな響きになっています。
    最後の「ソ!」の音の時のコードはGメジャー。シンプルな和音です。
    つまりこの短い時間にDadd9とGメジャーの「緊張と緩和」が存在するのです。
    この「緊張と緩和」が聴く者に強い印象を残すのかもしれません。

    ②メロディを頭のなかで歌いながら、指でそのリズムを叩いてみてください。
    リズムだけ取っても特徴的であることがわかります。
    どうなっているのでしょうか??
    「パパッパッパパッパ!」以降の2小節だけを見ても、
    2拍3連というリズム、表拍と裏拍を行き来するリズム、
    3連符など様々な要素が盛り込まれています。
    この盛りだくさんな仕掛けが開始数秒でプレイヤーをわくわくさせてくれます。

    ③この曲のセクションはAメロ〜Dメロの4つで構成されています。
    Aのセクションはメロディ、ハモリ、ベースの3和音で
    メロディを奏でます。
    Bのセクションで初めてベースがベースらしい動きに分岐します。
    ハモリも単調な「上下3度」ではありません。
    さっきまで3度下だったと思ったら、
    次の瞬間に「3度上のオクターブ下」に動いたりと目が離せません。
    全てのトラックが、ファミコンの性能の制約の中でフル稼働しているのです。

    さてベース・ラインにも触れましょう!
    私が「クールだ!」と思う箇所が2点あります。
    まずはBのセクションで高音の「パッパパ!」というキメ。
    ベースはキメに参加しません。そのことで、
    「キメで音が急に腰高になった」感を演出しているのです。
    そして次の拍、何事もなかったかのように
    ベースは1音だけフォローを入れます。
    この「空白を埋める1音」が実にクール
    もうひとつは同じくBのセクションの最後。
    「うんミ♭ッッレッッド!」というキメがあります。
    1拍目の「うん」はメロディもハモリも休符。
    ベースは1拍目を鳴らしてからキメに参加します。
    この1拍目の存在は、言わば足場。
    無いと不安になるし、メロディで鳴らしてしまうとキメの形が変わってしまいます。
    「ベースだけ鳴らす」選択がベストなのです。
    やることやってからキメにも参加するという
    頼れる兄貴のような姿勢。クールです!(※3
    ほかにもこの曲は「ハ長調なのに黒い鍵盤が頻出する」点や
    「A〜Dセクションの配置」など面白いポイントがたくさんあります。
    流石は世界一有名なゲームBGMといったところでしょうか。

    ▼今回の演奏動画▼

    さてクリープハイプは先日新作EP
    『仮のまま定着したような愛情で』をリリースしました。
    ベースがファミコンっぽいのは、強いて言えば
    「私の歌」のイントロと「痛々しいラヴ」のイントロかな!
    是非チェックしてみて下さいね。
    それではまた再来月までご機嫌よう。

    (※1)
    ^作曲は近藤浩治先生。伝説の御仁です。喫音堂#1、#4、で取り上げています。
    「スーパーマリオ」の地上BGMは元々、「のほほんとしていてスウィングしたリズムの曲」のつもりだったようですが、
    マリオの走るテンポ感やジャンプのタイミングに曲が合わなかったために
    今の曲が作られたそうです。
    そんな試行錯誤も納得の完成度ですね!

    (※2)
    ^1972年デビュー、数々の名曲を生み出し「みんなのうた」や映画「ゲド戦記」「コクリコ坂から」挿入歌など
    楽曲提供も多岐に渡るシンガーソングライターです。
    『GO GO マリオ!!』では浩子さんは「プリンセスピーチ」名義で参加、
    歌詞は小峯隆生のオールナイトニッポンの当時の中学生リスナーが作詞したそうです。
    浩子さんには私長谷川のソロの楽曲「ハエ記念日」のアレンジ(石井AQさんと共同)とピアノも担当して頂きました。

    (※3)
    ^もっと言うとキメの後のベースもクール。
    「うん、ソソッド」と1人で処理するところがクール!

    ◎Profile
    はせがわ・かおなし●1987年9月23日生まれ。ロックバンド“クリープハイプ”のベーシスト。小学生でピアノとヴァイオリンを手にし、高校1年でベースを始める。ベースのほかにエレキピアノやビオラなども演奏。クリープハイプは2001年に尾崎世界観(vo,g)を中心に結成。2009年に長谷川、小川幸慈(g)、小泉拓(d)を擁した現編成となる。2012年、メジャー・デビュー。2014年に初の日本武道館2days公演を開催、2018年5月にも約4年ぶりとなる2度目の日本武道館公演“クリープハイプのすべて”を成功させる。2024年11月に、キャリア史上最大規模の会場となるKアリーナ横浜で、現メンバー15周年記念公演“2024年11月16日”を開催。2024年12月に7tnアルバム『こんなところに居たのかやっと見つけたよ』をリリースした。2025年2月から7月にかけて、ホール&ライブハウス15公演・アリーナ4箇所8公演をまわるキャリア史上最大規模となる全国ツアーを開催。2025年11月26日に自身初のソロアルバム『お面の向こうは伽藍堂』をリリースした。

    ◎Information
    長谷川カオナシ
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