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【お宅のエフェクト・ボード拝見!】#7 − gure(HAWAIIAN6)

プロ・ベーシストのエフェクト・ボードをフィーチャーし、ベーシストの“最新足下事情”を徹底検証していく当連載企画。第7回は、2022年にバンド結成25周年を迎えたメロディック・ハードコア・バンドHAWAIIAN6よりgureが登場。重厚なアンサンブルを生み出す、独自のペダル・チョイスとこだわりが光るボードの中身を検証していこう。

デジタルとアナログが交差する機能的システム

上段が右から、フリーザトーン製JB-41S(ジャンクション・ボックス)、エレクトロ・ハーモニックス製SWITCHBLADE+(ライン・セレクター)、Ex-pro製PT-1(パワー・サプライ)。中段が右から、MAD PROFESSOR製Forest Green Compressor(コンプレッサー)、ボス製ODB-3(オーバードライブ)、EarthQuaker Devices製Plumes(オーバードライブ)、フリーザトーン製PA-1QB(イコライザー)、ボス製MD-500(マルチ・モジュレーション・ペダル)。下段が右から、コルグ製Pitchblack XS(チューナー)、Tronographic製Rusty Box(プリアンプ)、フリーザトーン製ARC-53M(オーディオ・ルーティング・コントローラー)。

国産メロディック・ハードコア・シーンの雄として、結成25周年を迎えた現在でも精力的に活動を展開するHAWAIIAN6。“ちょっと古めのサウンド感を目指している”と語るベーシストgureのエフェクト・ボードは、デジタルとアナログが交差する緻密なシステムが形成されている。

まずベースからの信号は、入出力をまとめるフリーザトーン製JB-41S(ジャンクション・ボックス)を経由し、音を整える用途として常時かけっぱなしで用いられるMAD PROFESSOR製Forest Green Compressor(コンプレッサー)へと接続。続いてフリーザトーン製ARC-53M(オーディオ・ルーティング・コントローラー)へと入力され、ここから各ペダルへと信号が分岐する。コルグ製Pitchblack XS(チューナー)は、ARC-53Mのチューナー・アウトより接続されている。

ARC-53Mの各チャンネルにはそれぞれプリセットが組まれており、記されている“PRIDE”、“WONDER“、“JUSTICE”、“GOODBYE”、“BUTTERFLY”は楽曲名を示している。まず一番左の“MAIN”と記されたチャンネルは、基本的にかけっぱなしで用いられ、サウンドの根幹を担うTronographic製Rusty Box(プリアンプ)とフリーザトーン製PA-1QB(イコライザー)をアサイン。Rusty Boxのセッティングのポイントに関してgureは、“僕のベースはミドルからハイにかけて元気のあるものが多いので、コレのトレブルはカット気味にしています。インプット・ゲインは会場に応じて9時から10時くらいに調整していて、ナチュラルなドライブ感を心がけています”と語る。続いて“PRIDE”と記されたチャンネルは指弾き用のプリセットで、Rusty Box、ボス製MD-500(マルチ・モジュレーション・ペダル)内蔵の“CHORUS”とPA-1QBがアサインされている。“WONDER”はARC-53Mのシフト・スイッチを押すことで作動するチャンネルで、Rusty Box、MD-500内蔵の“OVERTONE”、PA-1QBがオンとなる。両機のコンビネーションについてgureは、“ハイ・ポジションでのプレイの際、OVERTONEを使って高音を分厚く演出するようにしています。加えてPA-1QBでローをブーストさせ、細い弦でも太い音を出せるよう設定しています”と話してくれた。

続いて“JUSTICE”のチャンネルはRusty Box、PA-1QB、ボス製ODB-3(オーバードライブ)の3台、“GOODBYE”がPA-1QBとEarthQuaker Devices製Plumes(オーバードライブ)の2台、“BUTTERFLY”にはRusty Box、MD500内蔵の”VIBRATO“、PA-1QBがそれぞれアサインされている。VIBRATOの音色に関しては、“イメージとして、水中で音を聴いているようなハイが完全に落ちたぼかした感じを表現しています”と語る。歪みとしてはPlumesとODB-3がラインナップしているが、この2台の使い分けについては次のように語る。“「Justice」のような楽曲のボトムを支えながら一曲とおして歪ませるときはODB-3、「GOODBYE YESTERDAY」や「Blackout」のような、ポイントとして部分ごとにソロやコード弾きで派手に歪ませる際はPlumesを使います”。

PA-1QBはMIDIで全ペダルに対してイコライジングの設定が割り振られており、各ペダルのツマミだけでは作り込めない音色をより徹底的に追い込むために用いられる。“このボードの要なので、コレがないと困ります(笑)。500Hzと800Hzの周波数帯をいじれるのが導入の決め手。僕のなかでは特に大事にしている周波数帯で、アンサンブルで埋もれないようにしたり、エグい感じを出したいときは500Hzを突いたりします。サウンド・チェックの際にもPAさんとのコミュニケーション・ツールとして役立っています”。最近ではベース本体との兼ね合いも考慮しつつ、4500Hz近辺を会場によって微調整しているとのことだ。

ARC-53Mを経過した信号はその後、エレクトロ・ハーモニックス製SWITCHBLADE+(ライン・セレクター)へと接続されるが、ARC-53Mのアウトが1系統しかないため、SWITCHBLADE+のA+Bモードで2系統に分かれたあとJB-41Sに戻るという流れを採用している。なおJB-41Sから出力された信号は1系統がベース・アンプ(エデン製WT800)、もう1系統がDI(エデン製MODULE)という形で分岐してPA卓まで送られる。パワー・サプライはEx-pro製PT-1で、本機については“国内メーカーのパワー・サプライで一番キレイに電流を整えてくれるモデルだと思います。アイソレートされているので、デジタルとアナログを両方使う人には特におすすめです”と話してくれた。

取材時は本ボードができあがってまだ日数が浅かったこともあり、このラインナップでより良い音を作れるように追い込んでいきたいとのこと。現在気になっているペダルはLimetone Audio製focus(コンプレッサー)とEarthQuaker Devices製Hizumitas(ファズ)で、“ファズを使いこなせるベーシストになりたいんですよね(笑)”と笑顔で話してくれた。本ボードが今後どんなサウンドを鳴らしてくれるのか、今後も期待していきたい。

Pick up!

歪みとしてはODB-3(右)とPlumes(左)の2台がスタンバイ。“ODB-3は軽く歪ませるイメージで、原音を重視しつつアンサンブルでも引っ込まないような設定を心がけています。対照的にPlumesは派手に歪むようゲインやトーンをブーストして使っています”。
ベーシストでは珍しく、MD-500(マルチ・モジュレーション・ペダル)を使用するgure。複数のコーラスを一台で使用でき、MIDI制御できるモジュレーション・ペダルを探していたところ、機能/サウンドともに本機がベストマッチしたとのことだ。

Sub Board

飛行機による移動などで自身のアンプ・セットを持ち運べないときに使用するサブ・ボード。本ボードと足下のエフェクト・ボードを用いてアンプ・セットが持ち運びできない現場でも狙いどおりの音を出すシステムが形成されている。ポイントとしては、エデン製MODULE(プリアンプ/DI)のセンド・リターンに同GLOWPLUG(プリアンプ)を接続している点で、これについてgureは“こうすることでイヤなラインっぽさが消え、普段アンプから出している音に近しい音が出せるんです”と語る。

◎Profile
ぐれ●山口県出身。Hi-STANDARDのコピー・バンドとして、1997年に結成された3ピース・メロディック・ハードコア・バンドHAWAIIAN6に、2013年7月よりサポート・メンバーとして参加。その後2014年4月に正式メンバーとして加入した。バンドは2022年までに5枚のフル・アルバムなどをリリースしている。2022年に結成25周年を迎え、“HAWAIIAN6 presents 25th ANNIVERSARY TOUR”を現在開催中だ。

◎Information
IKKI NOT DEAD(レーベル):公式HP Twitter YouTube
gure:Twitter Instagram

【お知らせ】
発売中のベース・マガジン2022年11月号では、特集『ベーシストのエフェクト・システム2022』を84ページの大ヴォリュームで掲載! 11名のプロ・ベーシストのエフェクト・ボード解説のほか、人気プリアンプのセッティングの紹介、プリアンプ/歪み/コンプレッサーの注目モデルやエンヴェロプ・フィルター、マルチ・エフェクターの最新事情、エフェクト・ボードを組む際の注意点など、ベーシストにとってのエフェクターを大検証しています。

そのほか、23年ぶりとなる新譜大教典『BLOODIEST』を発布した聖飢魔Ⅱのゼノン石川和尚の特集、テクニカルなスラップ・フレーズの作り方にフォーカスした奏法特集『スラップ・フレーズ魔改造の手順』など、さまざまな記事を掲載しています。ぜひチェックしてみてください!