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FEATURED BASSIST-ハマ・オカモト[OKAMOTO’S]

  • Interview:Bass Magazine
  • Photo:Takashi Hoshino

クレジットにベースだけ載らないと可哀想だよねと(笑)。

━━現代的な低音というところでは、「Pink Moon」にはサブ・ベース的なシンベが入ってますね。

 これは編曲を担当したGiorgio Blaise Givvn(以下、ギヴン)がやっていて、僕はまったく関与していないんです。そもそもエレキ・ベースを入れなくてもいいんじゃないかなって思っていたくらいなんですよ。ギヴンが先に「M」の制作をしてくれていて、一応僕が弾いたものが入っているんですけど、これも別に生ベースは入れなくていいんじゃないかなって、レコーディングのときにギヴンに言ったんです。そうしたら“でも素材として、あと単純に興味として、思いつくものを入れてほしい”と言われて。それで弾いてみたらギヴンがおもしろいと思ったみたいなんです。「Pink Moon」のほうもそういう感じで、トラックを聴いたときにはどうしようかなと思っていたんですけど、やってみたら自分的にも“お、いいじゃん”というものが弾けました。ギヴンも気に入ってくれて、“これを入れる前提で組み直す!”となって。音像は帯域を削ってほかと分離が良くなるようにしたので、“バンドのベース”っていう感じではないですけど、ラインを浮かせる帯域になっています。特に2Aとか。サブ・ベースが鳴っていてもうまいことハマった仕上がりになりました。

━━「Pink Moon」のシンベが鳴ったあとにわりとガシガシ歪んだ音色でルート弾きしていて、シンベっぽさもあるし、同時にシンベとは対極とも取れるようなベースですね。

 あそこは歪ませて8分で弾けばいいやって思ったんですけど、手持ちのベース用エフェクターでハマりがいいのが全然なくて。それでコウキ(g)が持っていたボスのブルースドライバーを使ってみたんです。そしたらそれがちょうど良かったんですよね。

━━「M」の生ベース部分は1Bのロング・トーンの歪ませている部分ですか?

 はい。あとは2サビのアタマとかかな。でもかなりガリガリにして入れています。そもそも「M」は、ヴォーカル以外ではギターはイントロに入って、ドラムはパーツで録ったものを切り貼りしていて、これだとクレジットにベースだけ載らない感じになるけど……“それは可哀想だよね?”という話になって(笑)。

━━そんなことあるんですか?(笑)

 そうなんですよ(笑)。だからベースはちょっとボーナス的な感じで入れたから、ベースがどうこうというよりはギヴンの作品という感じですね。でもこれがあったから「Pink Moon」のハイブリッド感が生まれたんだと思います。

━━ハマさんは星野源さんのサポートもしてますが、今年リリースされた「不思議」では初の5弦ベースを使用されたとか。そういうバンド外の活動からバンドに還元されることは多いですか?

 そうですね……。結局今回のアルバムでは5弦は使わなかったんですけど、ゆくゆくはあるかもしれないですしね。やっぱり自分のバンドはこういう好きなこともあれば実験的な要素もありますし、呼ばれた現場よりも気持ちの面でも試す余白や割ける時間が多いですから。外の現場で試したことをバンドでやってみることもあればその逆もありますし、その両方のバランスがないと向上心がなかなか持続しないのかなとは思っています。ベースを弾いていくなかで、“バンドをやっている”という言葉のなかに“ミュージシャンをやっている”っていう要素がどれだけ含まれるかっていうと、バンドをやっているだけでは、そのミュージシャン欲がなかなか満たされないのかな。バンドは良い意味でそのメンバーだけの関係性だから、そこから飛び抜けた刺激っていうのは、続ければ続けるほど受けにくくなりますし。やっぱり別の現場で違うミュージシャンに刺激を受けると気持ちがリフレッシュするというか。そういうことも大事かなと思います。バンドとは全然趣向が違う現場に行ってみると自分の苦手なものとかもわかりますしね。自分がいかにちゃんとできていないかもわかってヘコみますけど(笑)。

Equipment

『KNO WHERE』で使用されたベースの一部を紹介する。そのほかのベースやアンプ、エフェクターは、10月19日発売のベース・マガジン2021年11月号をチェク!

 1959年製フェンダー・プレシジョン・ベース。今作では「You Don’t Want It」「Picasso」「Sprite」「Star Game」「Complication」「When the Music’s Over」の6曲で使用。同年からの特徴であるスラブ貼りのローズウッド指板を採用し、ペグ・プレートが六角形の逆巻きペグを搭載。スパゲティ・ロゴ1stバージョン、クローム・メッキのストリング・ガイド、丸みを帯びた円柱状つまみなども特徴。弦はトマスティック・インフェルトのフラット・ワウンド弦を張っている。近年のレコーディングにおいて、プレベを使用する曲ではこの1本のみ。

 1965年製フェンダー・ジャズ・ベース。今作では「Pink Moon」「Young Japanese」「Blow Your Mind」「Misty」「M」「MC5」「Subway」「For You」の8曲で使用された。バインディングが施されたローズウッド指板で、ドット・ポジション・マーク、パドル・ペグという、66年後半までの過渡期の仕様が見て取れる。ボディはリフィニッシュされているが、最近は色を変えることも検討中とのこと。近年、外仕事が増えたことやバンドの音楽性が広がることで、ジャズ・ベースの登場が増えているというなか、2019年にローディーから譲り受けたという1本。

10月19日発売のベース・マガジン2021年11月号では、Featured Bassistとしてハマをピックアップ! BM webとは別内容のインタビュー、最新機材紹介、『KNO WHERE』の奏法分析をお届けします。

◎Profile
ハマ・オカモト●1991年、東京生まれ。中学生の頃よりバンド活動を開始し、2009年にOKAMOTO’Sに加入。バンドは2010年に『10’S』でデビュー。これまでに『KNO WHERE』を含め9枚のオリジナル・アルバムを発表している。10月から12月にかけて、全国16ヵ所18公演の全国ツアーを展開中だ。ハマはバンド活動以外に、星野源をはじめ数々のアーティストの楽曲にも参加。2013年には日本人ベーシストとして初となる、米国フェンダー社とエンドースメント契約を締結し、2本のシグネイチャー・モデルを発表している。

◎Information
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