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シューゲイザーに在る“低音” – 前篇『マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン』

  • Text:Takanori Kuroda
  • Photo(p2,p3):Yoshika Horita

本記事の最後に2018年8月、5年ぶりの来日公演を果たした際のデビーの使用機材を紹介しよう。
轟音に潜む低音の“答え”とともに、彼女のサウンド・システムを徹底解剖していく。

Bass

メイン・ベースは、ロンドンに居を構えるフランス人ビルダー、フィリップ・デュブリュイエ(Philippe Dubreuille)の手によるカスタム・ベース。マイブラならではのJM風シェイプにブルー・スパークル・カラーが映えるモデルだ。フィリップはザ・キュアーのロバート・スミスやエアロスミスのジョー・ペリーなど、著名なミュージシャンの楽器をいくつも手がけている。

サブ・ベースはFIRST ACTという米国メーカーのDelgadaというモデルだ。アルダー・ボディと34インチのメイプル・ネック/ローズウッド指板は4点止めのボルトオン・ジョイント。ケント・アームストロング製の2基のハムバッカーはトーン・ノブのプッシュ/プルでシリーズ/パラレルの切り替えが可能だ。ヒップショット製のペグと裏通し可能なブリッジを搭載している。

Effector

エフェクト・ボードは、上段左から、LovetoneのMeatball(フィルター)、Prescription ElectronicsのDepth Charge(ファズ)、テック21のサンズアンプ・ベース・ドライバーDI(プリアンプ)、ボスのOC-3(オクターバー)。上から2段目が左からMXRのbass octave(オクターバー)、Malekko Heavy IndustryのB:ASSMASTER(オクターヴ・ファズ)、ソバットのDRIVE Breaker DB-BASS(オーバードライブ)、FulltoneのBASS-DRIVE(オーバードライブ)、友人のリチャード・ゴーベットが製作したDEBOMINATOR(ファズ)。ボード内左手前にあるカスタムのスイッチャーに乗っているのは、MXRのsmart gate(ノイズゲート)で、その右は反時計回りに、T-REXのFuel Tank Chameleon(パワー・サプライ)、ボスのTU-3(チューナー)、TCエレクトロニックのpolytune2(チューナー)、ボスのPN-2(トレモロ)、ダークグラスエレクトロニクスのDuality Fuzz(ファズ)。歪みエフェクターが多いが、メインは古いヴォックスのトーンベンダーが元になっているという“DEBOMINATOR”で、ほぼずっとオンになっているという。

Amplifier & Pick

アンプ・ヘッドはDIVIDED BY 13のRDT 200が2台用意されていた。RDT 200はピック弾きとのマッチングが良い“ベース・ギター・プレイヤー”に向けて作られている製品。プリ部に12AX7、パワー部にKT88を4本搭載したチューブ・アンプで、キャラクターの違う2チャンネルを備えている。キャビネットはアンペグのSVT-810 AVが2台。各ヘッドには足下のエフェクトから音色違いの信号がそれぞれに送られているため、基本的には2台両方が鳴らされ、適度にミックスされているとのこと。

ピックはジム・ダンロップ製のナイロン、ティアドロップ形。0.6mmと0.88mmの2種類が用意されていたが、0.6mmはギターを弾くとき用のもの。“いつもとても柔らかいピックを使っているの。あたしはピックが弦にカチカチ当たる音がイヤなの。その点、このナイロンはいいわ。硬いプラスチック製だと、カチカチ当たる音が聴こえるでしょう? しかも、あたしは尖っていないほうで弦をハジいている。コードをよく弾くし、かなり速いリズムもこのほうが使いやすいのよ”とのこと。

Release Information(画像クリックで公式販売サイトへ)

『Isn’t Anything』
CD 国内盤
BEATINK/BRC-666
(高音質UHQCD仕様/帯、解説書付き)
『loveless』
2CD 国内盤
BEATINK/BRC-667
(高音質UHQCD仕様/帯、解説書付き)

『m b v』
CD 国内盤
BEATINK/BRC-668
(高音質UHQCD仕様/帯、解説書付き)
『ep’s 1988-1991 and rare tracks』
2CD 国内盤
BEATINK/BRC-669
(高音質UHQCD仕様/帯、解説書付き)