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INTERVIEW – TOMOMI[SCANDAL]

  • Interview:Kengo Nakamura

このアルバムで、
止まっている時を動かせたらいいなって思っています。

━━MAMIさんがメイン・ヴォーカルの「アイボリー」はフォーキーな楽曲で、ベースはゆったりとしたテンポでシンプルに弾きつつ、サビの後半で波打つようなリズムに変化させています。

 この曲のサビは前半と後半でほぼ同じメロディなんですよ。だから、ベースのメロディで緩急をつけられたらなと思って作っていきましたね。テンポに関しては、これまでわりと速いテンポの曲ばっかりやってきたから、最初のうちはあんまり慣れなくてグルーヴがいまいちだったんです。でも、毎週4人だけでスタジオに入って、いっぱい話し合いながら取り組んだことで、今はちょうどいい、気持ちいいテンポになりました。

━━テンポ感という意味では、「彼女はWave」はサビまではベースが入っていなくて、ギターのカッティングとシンプルなビートに切り込んでくるベースが加わったときのスピード感がすごいと思いました。プレイ自体はシンプルなんですけど、ベースによってこんなに体感が変わってくるのかと。

 この曲は最初、アタマからベースを入れようかって話だったんですけど、サビから入ったほうがシーンがパキッて変わってカッコいいんじゃないかなと思ったんです。ベースが入って疾走感みたいなものを出したいから、ベースがドラムよりちょっと前に行ったほうがいいのかなとか、逆にこういう曲だからオンのほうがいいかなとか、いろんなアプローチを考えましたね。フレーズ的には、さっきも話しましたけど、最近はシンプルなものに惹かれていて。この曲のフレーズなんて、ベースを始めて1日目の人でも弾けるんじゃないかっていうくらい超簡単なものなんですけど、入ってくる場所とか塩梅によって楽曲にとってすごく効果的だし、テクニックじゃないベースの魅力が出せたかなって思います。

━━間奏ではベースが16分主体に変わって、さらにギアが上がって加速するようなイメージでした。

 そうですね。みんなで話していて、曲全体的には打ち込みっぽい感じだけど、あの間奏の部分だけバンドな感じにしようっていうことになったんですけど、サウンドのイメージが私のなかで結構あって、久しぶりのエフェクターを引っ張り出してきて使いました。フェンダーのSUB-LIMEっていう緑色の大きいペダルのファズがあって、それを使ってちょっとエレクトロっぽいサウンドにしたんです。

━━「one more time」はダンサブルな楽曲で、これは休符を生かしたベースのリズムによるところも大きいと思います。こういったフレーズを弾くときに意識していることはありますか?

 これは、ベースが休符になったタイミングでドラムのスネアが入るんですよ。だから、ベースだけで考えるというよりは、そこのリズム体としての意識みたいなものですかね。

━━普段、ドラムをどういう風に聴いていることが多いですか?

 基本はやっぱりキックですね。ライヴのときのモニターは3点(キック、スネア、ハイハット)を上げてもらっているんですけど、耳で聴くというよりは、キックの下からくる体感の部分で感じ取っています。だから私、イヤモニがすごい苦手なんですよ(笑)。広い会場になるとイヤモニをしたりもしていたんですけど、なかなかノレなくて。だから城ホールとかでも、そのままウェッジ(転がしモニター)でやっています。

━━「one more time」の1番のあとでギターとベースになるセクションでは、指弾きでプル的なアクセントも交えていますか?

 はい。プルっぽく聴こえるように指弾きで弾いていますね。普通だったらスラップでいっちゃえばいいじゃんっていうフレーズなんですけど、“スラップに聴こえる指弾き”をするベーシストがすごく好きで。そういったプレイへの憧れが出た部分ですね(笑)。

「one more time」 – Music Video

━━さて、3月からは国内ツアー、7月には9公演の北米ツアー、9月には3公演のヨーロッパ・ツアーが控えています。前作のリリース後はツアーが中止になったということで、前作の楽曲に対して完結していない部分もあるのかなと思いますが、前作も含めた内容となりますか?

 前作のツアー自体はできなかったんですけど、ツアーで行なう予定だったものを配信ライヴではやっていて、一応、そこで前作の完結はしているんです。でも、やっぱり生でお届けすることはできなかったので、今回のツアーでは前作の曲もちょっと混ぜながらできたらなと思ってはいます。海外でのライヴに関しては、もう長いこと行けていないんですけど、SNSとかで毎日メッセージをくれて、待っていてくれるのがすごく伝わってくるんですよ。私たちも海外でライヴをするとすごく自由な気持ちになれて好きだし、コロナの状況が落ち着いてライヴをしに行けたらいいなって思います。

━━最後に、本作の制作を振り返って、TOMOMIさんにとってどのような作品になりましたか?

 すごく削ぎ落としたアプローチで作り終えて、今までのSCANDALとはたぶん全然違うアルバムだと思うし、アルバムをリリースしたあと、ファンではなかったという人から、今までになかったような反応もたくさんもらっているんです。私たちは、やっぱり“制服時代”のインパクトが強かった分、その当時のイメージのまま止まっちゃっているのかなって思うことが多々あるんですけど、“久しぶりに聴いてみたら全然変わっていて良くなっていた”みたいな声をもらったりもして。このアルバムで、その止まっている時を動かせたらいいなって思っています。これまでの自分たちを好きでいてくれた人たちにとっても、どういう風に受け止めてもらえるのかはわからないなっていう話をメンバーでしていたんですけど、私たちのファンは本当に心強くて、15年間ずっと変化し続けてきているのに、毎回“今が一番いいね”って言ってくれるんです。そういったファンの人たちには本当に感謝でしかなくて。たぶん、好きになってくれた曲と今やっているサウンドってまったく違うのに、それでもついてきてくれるファンがいるっていうのは、本当に誇りですね。

◎Profile
ともみ●5月31日生まれ、兵庫県出身。2006年に、同じヴォーカル&ダンス・スクールに在籍していたメンバーで、大阪にてSCANDALを結成し、ベースを始める。インディーズでの活動を経て、2008年にシングル「DOLL」でメジャー・デビュー。翌年リリースした「少女S」でレコード大賞新人賞を受賞する。2012年には日本武道館公演、2013年には大阪城ホール公演を成功させ、2015年には世界9ヵ国41公演のワールド・ツアーも大盛況に収めるなど、日本を代表するガールズ・バンドの地位を築く。2019年にはプライベート・レーベル”her”を設立。2022年1月に10thアルバム『MIRROR』を発表し、3月からは全11公演の国内ツアー、7月には全9公演のアメリカ・ツアー、9月には全3公演のヨーロッパ・ツアーを予定している。

◎Information
SCANDAL
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