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INTERVIEW – TOMOMI[SCANDAL]

  • Interview:Kengo Nakamura

やりすぎじゃないかなって思っていたんですけど、
実際にやってみたら、“これはカッコいな”って(笑)。

━━今作でTOMOMIさんは「愛の正体」を作詞作曲して、メイン・ヴォーカルも担当しています。ビッグバンド感のあるサウンドでクワイアも印象的ですが、この曲はどのように生まれたんですか?

 さっきもちょっと言いましたけど、自分が30代になって、まわりの環境がすごく変わったんです。結婚したり出産したり、逆に家族を亡くしたりした友達もいるし、LGBTQの人から相談をもらったりもして、いろんなことが起こっているなかで、すごく大きい意味での愛みたいなものに気づかされるタイミングがすごく多かったんですね。私はこれまで、“与える喜び”みたいなものを知らなかったんですけど、ふとした瞬間に、“この人に笑っていてほしいな”とか“あの人を救いたいな”とか思える瞬間がたくさんあって、その喜びを知れたんです。そういった、人類が持てる最大限の感情みたいなものを、今、感じられているから、それを残しておきたいなと思って書き始めました。サウンドは、ビッグバンドのイメージがすごくありました。自分たちがバンドを結成したきっかけになったダンス&ヴォーカル・スクールのレッスンでゴスペルがあって、ゴスペルは自分たちのルーツにもあるし、映画『天使にラブ・ソングを…』も大好きなんです。そういう“シスターたちが歌っているイメージ”とか、“ここでホーンが入ってきてほしい”っていうことを紗トリさんに相談したら、紗トリさんが知り合いの海外のクワイアの方々を紹介してくれて。いろんな人に協力してもらいながら作っていったリッチな曲ですね。

━━こういったサウンドの曲に対して、ベースはどのようなイメージでしたか?

 丸い、角のないサウンドを作ろうっていうことは意識しましたね。だから、これは確かフラット・ワウンド弦で録った気がします。

━━本作ではもう1曲、「プリズム」の作曲も手がけています。トイ・ピアノなども入って、冬っぽい楽曲ですね。

 この曲は詞先だったんですけど、最初は夏の歌詞だったんですよ。でも、アルバムのリリース時期とかを考えて、RINA(d)に“冬の歌詞にしてみたら?”って言ったら、書き直してきてくれて。その詞を読んで、主人公の女の子が口ずさんでいるメロディみたいなイメージでつけていきましたね。スノードームのなかのちっちゃい世界みたいなイメージで、トイ・ピアノを入れてほしいというのも私からアレンジャーの宗本(康兵)さんに伝えて。

━━ベースは、イントロのメイン・メロディと部分部分で合わせたユニゾン・フレーズや、音価によるフレーズのコントラストなどが絶妙です。

 この曲のベースは、宗本さんがほぼほぼ完成形みたいな状態でデモを渡してくれたんですけど、そのフレーズがすごく好きで。だから、あまり変えるようなことはあえてしないで、デモのフレーズをそのまま採用した部分が多かったですね。

━━先ほど、フラット・ワウンド弦を使用したというお話がありましたが、今作で使用した機材はどんなものでしたか?

 ベースは自分のシグネイチャー(フェンダー製TOMOMI PRECISION BASS)が多かったですね。あまりエフェクターとかも使わず、素の音で弾いたものが多いんですけど、「蒼の鳴る夜の隙間で」の1サビ終わりはボスのMD-500(モジュレーション)をかけています。

━━シンベっぽい質感になっていますね。「夕暮れ、溶ける」は重厚なベース・サウンドで、サブ・ベースを鳴らしているような深さとエッジが同居している感じがしました。

 「夕暮れ、溶ける」と「蒼の鳴る夜の隙間で」は、アンプはヘッドがマークベースのLittle Mark Ⅱ、キャビがアンペグ15Eの組み合わせで、「夕暮れ、溶ける」ではPike AmplificationのVULCAN(オーバードライブ)を使っていますね。

━━「夕暮れ、溶ける」でのフレージングでは大きな横移動のグリスのウネりが印象的ですが、ウネりの出し方を変化させて曲に起伏を与えています。

 この曲はわりと歌がずっと淡々としているから、楽器で展開をつけていくのがいいかなと思ったんです。こういったグリスのフレーズは、これまでもわりと多用している感じがするし好きなんですけど、私のクセで、着地がもったりしちゃいがちだったんですよ。今までも気づいてはいたんですけど、ずっと直せなくて(笑)。だから今回は、その部分をめちゃくちゃ意識しました。

━━個人的に本作のハイライトは切ないスロー曲の「愛にならなかったのさ」だと思っています。まず詞曲が素晴らしいですし、ベースも聴きどころが多いアプローチになっていますね。

 ストーリー性がある曲なので、その心情に合わせて楽器も展開をつけるというか、一緒に物語として進んでいくようなものがいいなという話をしましたね。ベースのフレーズでは、2Aあたりに和音で音を切りながら弾いているフレーズがあるんですけど、その部分の強弱の付け方はいろいろ試しながら進めていって、すごく苦労しました。

━━ディレイを使っているのかなとも思える、絶妙なニュアンスになっていますね。ギターと歌で始まって、ドラムレスでベースが入るBメロの部分は、歌とのバランスを考えた裏メロ的ラインですが、ただのロング・トーンだけではなく、スタッカート気味に弾く部分も交えてベースでリズムを生んだりしています。

 やっぱりドラムがいないときはリズムに集中しますね。ただ、ああいう曲だから、ベースは自分でも歌っているくらいのフレーズがいいなというのがあって。それで、あの塩梅です(笑)。

━━個人的には、最後のサビ前にリズム体が一度抜けてから戻ってくる部分で、スネアの連打に合わせてハイ・ポジションの1音を連打するところがグッときました。変な話、ベースは大きなグリスで入ってもよかったりするじゃないですか。

 そうですよね。あの部分、最初はやりすぎじゃないかなって思っていたんですけど、実際にやってみたら、“これはカッコいな”って(笑)。

「愛にならなかったのさ」 Music Video
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