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    INTERVIEW-IKUO × 村田隆行[I.T.R]

    • Interview:Kengo Nakamura

    結成10周年を迎え、ベース愛に溢れた1stアルバムがついに登場!

    国内屈指のテクニカル・ベーシストであるIKUOと、さまざな音楽に対応するバーサタイルなスタイルで幅広いアーティストをサポートしているTAKAこと村田隆行によるユニット、I.T.Revolution。本ユニットが起点となって、鳴瀬喜博(CASIOPEA 3rd)も加えたトリプル・ベース・ユニット=The Choppers Revolutionへと発展していった彼らであるが、今年、結成10周年を迎え、名称も“I.T.R”と改めてついに1stアルバム『「Bass Life Goes On」~今こそI.T革命~』を発表した。ひとクセもふたクセもあるテクニシャンふたりによるベース愛に溢れた本作は、ベーシストでなくても楽しめるポップなものではあるが、ベーシストであればさらに奥深くまで楽しめる、ベーシスト的聴きどころにあふれた仕上がり。ここでは、I.T.R結成の経緯や、ダーティ・ループスのヘンリックをゲストに迎えた収録曲「We Love Henrik」について語ってもらった。

    ドラムとベースが2本っていうトリオ編成だったら、
    “ベースを弾きまくれるな!”って(笑)。━━IKUO

    ━━I.T.Revolution改めI.T.R結成10周年ということですが、改めてI.T.Rを結成したきっかけを教えてください。

    村田 僕が一緒にやろうと声をかけたのがきっかけです。僕はファンクやR&Bが大好きで、ジャズ・フュージョンのテクニックをよく使うのですが、そういうタイプの僕から見たらIKUOさんは“異世界の人”(笑)。ただ、違うジャンルやタイプの人と自分のエッセンスを交わらせるのが好きなので、一緒にやれたら絶対おもしろいだろうなと思ったんです。しかもIKUOさんはテクニカルとかロックのイメージが強いですが、実は六本木ピットイン(多くの有名ミュージシャンを輩出した老舗のジャズ・ライヴ・ハウス)でひと月に何回も出ていたりしてジャズの人ともたくさん共演しているし、クロスオーバーとかフュージョンの世界も知っていて、音楽を交わらせる意味みたいなものを知っている人なので、一緒にやったら絶対うまくいくだろうなと思ってたんです。

    ━━村田さんから声をかけられたとき、IKUOさん的にはどうでしたか?

    IKUO “ツイン・ベースでやりましょう!”って言われたときは、なかなかツイン・ベースっていう感覚が自分になくて。それまでもベーシスト主宰のライヴにゲストで出てツイン・ベースで演奏したことはあったんですけど、ちゃんとツイン・ベースで作品を作ったりするというのは経験がなかったし。ただ僕も、村田くんのプレイ・スタイルも知ってたし、“おもしろそう! とりあえずやってみよう!”って感じでした。村田くんも言ったように、村田くんがR&Bとかファンクの人で、完全に僕とは違う世界の人だったのも魅力的でしたね。僕がロックになればなるほど村田くんは違う方向で来るっていうのもおもしろいだろうし、僕はジャズ・フュージョンもやっていたから、そこの話でも合うだろうし。あとは単純に、ドラムとベースが2本っていうトリオ編成だったら、“ベースを弾きまくれるな!”って(笑)。何も考えずにベースでバトルできるような場所って、実はありがたいんです。フリー・スタイルのラップと同じで、音で会話したりバトルしたり、自由にできそうで楽しそうだなと思ったし、やってみると実際そうで。だから10年間もオリジナル曲も作らず、ただただ楽しいことをやってきたんです(笑)。

    『「Bass Life Goes On」~今こそI.T革命~』
    Mzes Recordz/MZJZ-00001

    ━━I.T.Rのライヴは、基本的にはカバー曲やジャム・セッションが中心なんですよね?

    村田 そうです。AKB48の曲をカバーしたりもしましたね。結局、メロとバッキングがあれば曲にはなるので、途中でパートを交換したりして、ドラムとベースふたりのトリオで自由にやっていました。逆に、鳴瀬(喜博)さんを加えたチョパレボ(The Choppers Revolution)ではすべてオリジナル曲で、編成もキーボードがいて、ちゃんとアンサンブルができていて3人の役割があるんです。そういうチョパレボがあるからこそ、I.T.Rでは頑なにキーボードは入れないで自由度とハプニングを楽しむ感じで続けてきたんですよ。でも今回、I.T.Rで作品を出すにあたって、初めてキーボードを入れました。

    IKUO これまで見てくれていたファンの人はI.T.Rがどういうものかを知っていますけど、それが作品になったときにちゃんとしたものを作るのが大事かなと思ったんです。だからライヴでどうやってやるかはまず置いておいて、クオリティの高いものを作りたいと思って。そうなるとキーボードは絶対必要だった。村田くんから“ポップな方向でやりましょう!”って提案があったということもありますけどね。

    村田 僕が、“とにかくポップにいきましょう!”って言ったら、IKUOさんからはまさかの歌モノの曲が出てきました(笑)。「Life is Groovin’」のデモを聴いて、本当に感激したんです。コロナが流行し始めてもう2年になる時代のなかで、歌詞の内容がベーシストやベースが好きな人のストーリーにフォーカスされていて、すごく心を打つ曲だなぁって。

    IKUO 村田くんに“ポップな方向”と言われて、そのなかで僕は1曲歌モノをやりたかった。多分、村田くんはブラック・ミュージックやラテンの要素がある曲を作るだろうから、僕は歌モノと、ベース・キッズたちが友達と一緒に“この曲コピーしようぜ!”って楽しめるような曲を作ろうかなと。それぞれが違う方向の曲を作ってバランスを取れればいいなと思いましたね。

    ━━結果、書き下ろし曲がそれぞれ個性的でバラエティに富んでいますね。

    IKUO 結果、聴きやすい作品になったと思います。やっぱりインストの曲って難しいイメージがありますけど、表題曲を歌モノにしてMVも作ったことでわかりやすいものになったかなと。なにより僕はこのコロナ禍でリリースができたっていうのが嬉しいです。今はいろんなツールがあるので、ミュージシャンのなかにも音楽じゃない方法でコミニュケーションを取る人も多いですけど、僕は不器用だし、このコロナ禍で気持ちが淀んだ人を音楽でワクワクさせたい、前向きにさせたいって考えていて。そんなときに村田くんから“アルバム出しませんか?”って言われたんです。まさかのI.T.Rで!?という感じはありましたけど(笑)。

    ━━おふたりの作品ということで、どれだけベースの洪水が飛び出すのかと思ったら、SE的トラック後の実質1曲目が歌モノで(笑)。でも、おふたりらしいなとも思いましたし、何より「Life is Groovin’」がすごくいい曲で。グッときましたよ。

    IKUO 嬉しいです。オマージュしたのはBTSの「Dynamite」で、たくさんの人が踊ってみたとか弾いてみたをやっているあのイメージ。難しい曲じゃなくて、シンプルに楽しいとか、良い曲だなっていうものにしたかったんです。今はゴリゴリのダウン・チューニングの激しい曲を作ろうとはあんまり思わないし(笑)。歌詞もベースについて歌いたいなと思って、自分たちが憧れて影響を受けたレジェンド・ミュージシャンたちの名前を出させてもらいました。そういう人たちのおかげで今、自分はこうして音楽ができているんだっていうリスペクトを込めて。ベーシストはもちろん、ベースが好きな人の人生はコロナ禍だろうがなんだろうが続いていくし……っていう意味も込めて、アルバム・タイトルも『Bass Life Goes On』にしたんです。正直コロナ禍だからこそできた曲ですね。

    「Life is Groovin’ 」OFFICIAL MUSIC VIDEO

    ━━遊び心も忘れず、“ナルチョのようにハチャメチャに”のところでは、ちゃんと鳴瀬さんの声が入っていたりして。

    IKUO あれひどいですよね。本当ハチャメチャですよ、もう(笑)。

    村田 僕はこの曲、ほかのベーシストにも歌ってもらいたい曲だなって思いましたね。あのマーカスやジャコの歌詞の部分を、例えば“IKUOのように~”とか替え歌にしてもらってもいいし。

    IKUO そうそう。僕らはマーカスやジャコに憧れて影響を受けたからああいう歌詞になっているんだけど、あの部分は自分が尊敬するミュージシャンの名前を入れて歌ってもらえるかなと思っています。やっぱり楽器を始めた初期衝動を忘れてしまうと絶対ダメだと思うんですよね。僕らもキャリアは長いけど、そもそもはそういう憧れた人たちがいてベースを始めていて。みんなが楽器を始めた頃の初期衝動に戻れば、こういうちょっとネガティブな世のなかでも明るく前向きになれるんじゃないかなって。

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