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【ある日の絵日記 リターンズ】(絵と文:かわいしのぶ)– 第2回

1996年から2020年まで24年間にわたりベース・マガジンの人気連載として掲載されていた、かわいしのぶの「ある日の絵日記」が“リターンズ”としてBass Magazine Webで連載中。今回は11月の絵日記です!

ある日の絵日記 リターンズ
第2回

 11月14日、トイレの掃除中にウォシュレットが誤作動。いきなり“ういー”と出てきて放水。洗濯したばかりの便座カバーと足下マットと床と履いているスウェットをびしょびしょにして“ういー”と言いながら引っ込んでいった。思い返せばこれは呪いの日々の幕開けであった“ういー”。

 11月15日、突然ひどい胃の痛みに襲われ病院へ。

 11月16日、と思ったら、突然ひどい歯の痛みに襲われ緊急の病院へ。あまりの歯の痛みに胃の痛みが消える。わたしの痛みの神経は1回線なのか。原因判明せず痛み止めをもらって帰る。

 11月17日、終日レコーディング。歯の痛み止めを飲むと胃が痛くなり、胃薬が効いてくると歯の痛みが復活。演奏中は痛みが遠のくのが唯一の救い。音楽よ今日もありがとう。突然“呪いの乱反射”というコピーを思いつき、それがとんでもなく素晴らしいコピーに思えてしまい、メンバーに言いまくったうえ、あとでSNSを通じて世界中の人に伝えようと自分用に太字でメモまでとっていたが、今こうやって冷静に思い出してみると、このときのわたしの思考能力そのものが相当バグっている。

 11月18日、青山・月見ル君想フにて“パラシュートセッションvol.103”。ドラマー3人(中村達也、吉田達也、OLAibi )と、ベーシストふたり(tatsu、かわいしのぶ)が、組み合わせも演奏もすべて即興で展開し遊ぶライヴ。最高に気持いいリズムが、低音が、終始ずんずくと歯と胃に響くものの、それ以上に幸せや楽しさが優っているためか、演奏中、痛みをまったく感じず。それどころか、終演後、歯も胃もまったくイタクナーイ!やったー!と浮かれて家に着いたとたん激痛で倒れる。あの場所には結界が張られていたのだろうか。ならば、、ここにも結界を、、と朦朧とする意識のなか、両の人差し指と中指を交差した。溺れるものはワラをも掴む気持ちだったが、いまこうやって冷静に思い出してみるとそれはえんがちょだ、しのぶ。

『 胃と歯と痛みに えんがちょきって 鍵飲んで 』

【Profile】
かわいしのぶ●1971年生まれ、東京都出身。高校一年でベースを始める。1991年にSuper Junky Monkeyを結成し、1994年、ソニー・レコードよりデビュー。日本とアメリカを行き来しながら活動を続け、1999年に活動休止。2009年からは3人で活動を再開した。かわい個人は現在、大友良英スペシャルビッグバンド、柴田聡子 in FIRE、坂田明、パンチの効いたブルース&オウケストラ、プノンペンモデル、world’s end girlfriend、bikke&近藤達郎など、ベーシストとして幅広い活動を展開している。カレーが大好き。

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◎ベース・マガジン×かわいしのぶ
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