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【Live Report】 チョパレボ & Bass Friends – 2021年11月19日(金)/ビルボードライブ東京

  • Photo:Masanori Naruse(Live)
  • Takashi Hoshino(Gear)

チョパレボ & Bass Friends
BASSIST:鳴瀬喜博、IKUO、村田隆行、KenKen、鈴木渉、辻村勇太(BLUE ENCOUNT)、ぴんはげ、フクダヒロム(Suspended 4th)、BOH、月野もあ
●2021年11月19日(金)●ビルボードライブ東京

世代もジャンルも立場もすべてを飛び越えて奏でられた
ベースの魅力と可能性

 鳴瀬喜博、IKUO、村田隆行によるベース・ユニット、“チョパレボ”ことThe Choppers Revolutionが、“ベースの日”のスペシャル企画として、ビルボードライブ東京にて、さまざまなシーンで活躍するベーシストを集めたライヴ、“Bass Day Special Month チョパレボ & Bass Friends”を開催した。

 総勢10名のベーシストが名を連ねたこの日。まずはチョパレボの3人が登場し、鳴瀬の強力なスラップに村田、IKUOが折り重なって「チョパレボショッピングPART2」でライヴがスタート。3本のベースが入れ替わり立ち替わりで絡み、ハモリ、バックアップし合うという見事な低音アンサンブルは、まさにこのユニットならではの魅力だ。まだまだライヴが始まったばかりということで、余裕感のあるソロ回しのあと、2曲目の「HOME BASS」へ。昨年のコロナ禍においてYouTube上に公開され、多くのミュージシャンとのコラボ動画が投稿された楽曲だ。鳴瀬のスラップ・リフ、IKUOのハイポジでのコード・プレイ、そして村田のメロディというアンサンブル、ポジションや奏法を変えたユニゾンというひと回しが終わったところで、早くも本日のゲスト全員が呼び込まれ、ステージに9人のベーシストが並び立つと、“ベースはE”ということで、Eカテゴリでのソロ回しが展開された。NYスタイルの村田、さらりとテクニカルなIKUO、攻撃的なトーンで指とピックを使い分けた辻村勇太(BLUE ENCOUNT)、粒立ちのいい指弾きで音数を詰めたぴんはげ、しなやかかつ太いスラップの鈴木渉、ロックな指弾きのKenKen、スラップ猛者たちに真っ向から対抗するようなタッピングのBOH、スラップと2フィンガーでロックンロールなニュアンスも感じさせたフクダヒロム(Suspended 4th)、そして、それらすべてを飲み込むかのようにスラップありタッピングありの鳴瀬と、それぞれの個性が早くもあらわになる。

  • チョパレボ & Bass Friends

 ステージに村田、BOH、鈴木が残り、BOHのラスゲアードによるラテンなコード・プレイから始まった「Lion & The Prey」は、鈴木がリフを奏でる上で、村田とBOHが叙情的なメロディをとっていく。それぞれがまさに“音で会話”しているような演奏は本ライヴの醍醐味でもあるが、その成熟度は本セッションが随一であった。ソロ回しでは、BOHは6弦の音域を生かしたギターのようなプレイやタッピング、鈴木は歪みはもちろんオート・ワウも絡めてエフェクトを駆使した音色的おもしろさでも聴かせた。

 IKUO、そして、IKUOチルドレンと自称するぴんはげとフクダの3人が演奏したのは、ボカロ曲「千本桜」。IKUOとぴんはげが指弾きでハモってメロを弾き、フクダがスラップでバッキングをして、目眩くスピード感で展開していく。ソロ・セクションでは、フクダがタッピングからチョーキングのロング・トーンを挟んで高速スラップへと緩急をつければ、ぴんはげは高速ダウン/アップのサムピングからトリッキーなリズムを入れてハズしてみたりとひと捻り。ぴんはげの変則的なアクセント付けに即座に対応したドラムの川口千里も見事だった。IKUOのソロはロータリーによる高速スラップや指での速弾きなど、その粒立ちの良さが異次元で、フクダとぴんはげはIKUOを挟んで正座をして見守った。

 IKUOがステージに残り、村田、辻村を迎えて演奏された「HHB」は村田のコード・プレイでメロウに始まるものの、IKUOの“スラップの壁”プレイでロック・セクションへ入り、ベースの位置が低い辻村にはハードなプログレ的テクニカル・ユニゾンも見事に決まる。IKUOと辻村がお互いに高速スラップで煽った、長﨑祥子(k)と川口も含んだソロ回しを経て、村田がギターの3フィンガーのように弦をつまむプレイでテンポ・ダウンし、メロウ・セクションへ。辻村の、途中で親指弾きで極限まで音量を落としてからスラップでクライマックスへ持っていくダイナミクスを持ったソロの構成は見事だった。

  • 鈴木渉、村田隆行、BOH

 ライヴもいよいよ終盤というところで登場したのが、鳴瀬とKenKen。KenKen曰く“生まれる前から友達”という関係性ながら、実は今回が初共演というふたりは、まずはPINK CLOUDの「Would You Like It」を、原曲のギター・リフを鳴瀬が奏で、どっしりとしたノリのベース・ラインをKenKenが弾き、ふたりで歌った。今回の公演ではここまで、器楽的なベースのおもしろさに焦点が当たっていた。それらのように派手ではないが、ゆったりと聴衆の体を揺らすような心地よいグルーヴは、改めてベースという楽器の根幹の魅力であると感じさせられた。続いて演奏された「GIVE ME THE FUNK」では、叩きまくる鳴瀬のソロ、怒涛の一音連打という気合のKenKenソロなど、激しいふたりのベース・バトルが繰り広げられ、あまりの勢いに鳴瀬が転倒するアクシデントも。「Would You Like It」から一転、ふたりのベース・ヒーローとしての魅力も堪能できた場面だった。

 いよいよ公演もクライマックス。最後は出演者全員がステージに上がり、11月13日が誕生日であった鳴瀬への「ハッピーバースデイ」を全員で奏で、鳴瀬にケーキのプレゼント。会場が最高潮にハッピーな空気で満たされ、最後の曲「pink punk funk」へ。この日司会で登場していた月野もあもベースを手にし、計10人でのソロ回しは怒涛のひと言だった。ひとりずつ思い思いのスラップを披露し、ラストは全員がベースを鳴らしてカオス状態に。こんなに大人数による低音の塊は、そうそう経験できるものではない。しかも、その音塊が、日本のベース界を牽引してきたレジェンド、稀代のベース・ヒーロー、シーンのトップを走るバンドマンとスタジオマン、新世代を担う期待の若手、アイドル、そして現代を象徴するYouTuberと、世代もジャンルも立場もすべてを飛び越えて奏でられているのがなんとも素晴らしい。純粋に“ベースを愛する人たち”による宴は、ベースという楽器の可能性と魅力をさらに感じさせてくれるものだった。

  • 鳴瀬喜博、KenKen

2022年1月19日発売のベース・マガジン2022年2月号では、出演者のインタビュー・コメントを掲載!

■2021年11月19日(金)@ビルボードライブ東京
セットリスト
01.チョパレボショッピングPART2
02.HOME BASS
03.Lion & The Prey
04.千本桜
05.HHB
06.Would You Like It
07.GIVE ME THE FUNK
08.pink punk funk

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