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ギブソン“Victory Bass”【Kroi 関将典のベース偏愛録:見た目で選んで何が悪い!】第1回

  • Text & Photo (Bass) : Masanori Seki (Kroi)
  • Photo (Main Image) : Kohei Watanabe
  • Design (Main Image) : Hirotaka Sudo

「見た目で選んで何が悪い!」を合言葉に、Kroiのベーシスト・関将典が偏愛ベースを語り尽くす新連載がスタート!

第1回は、ギブソンの“影の名機”とも言える《Victory Bass》を取り上げます。クセが強くて、重くて、正直“使いづらい”……。それでも「好きなんだからしょうがない!」と思わせてくれる、この不器用なベースの魅力を、関さんがたっぷり綴ります(編集部)。

第1回:Gibson / Victory Bass Standard

初回は知る人ぞ知るベース、ギブソンのVictory Bass Standardをご紹介します。ギター・モデルは少し前に再販されていましたね。

そもそもギブソンは、ギターのほうがイメージが強いかと思います。言わずと知れたレス・ポールやSG、ES-335などのセミアコetc……

もちろん、ベースも“EBシリーズ”や“サンダーバード”など有名なモデルはあります。でも、ギブソンのベースはサウンドキャラクターのクセや、フェンダー・タイプのピックアップやウッド・マテリアルとは異なる響きから、お世辞にもあまり汎用性が高いとは言えないモデルが多い印象があるかもしれません。

ギブソンといえば“セットネック”という、組み木をして接着したネック構造が主流ですが、今回紹介する“Vicotry”を含めた数モデルでは、フェンダーなどがおもに採用している“ボルトオン・タイプ”のモデルも製造していました。

例えば、1970年代末頃から80年代中頃(?)まで販売されていた、ピックアップの位置を動かすことが可能な“Grabber”(一時期所有してた。手放したことを後悔している)。

Gibson “Grabber”

“Grabber”と同じスタイルでありながら、シングル・ピックアップを3個搭載した“G3”(1番欲しい。けどレア)。

Gibson “G3”

ボディなどは“Grabber”と同様でありながら、ヘッド形状やピックアップ、ブリッジなどが異なる“Ripper”。

Gibson “Ripper”

そして今回紹介する“Victory”。

関が所有するVictory Bass

ほかにもおもしろいモデルやボルトオン仕様のモデルは細かく見ればあると思いますが、今回はこの4モデルを代表として挙げさせていただきました。いずれも短い期間しか製造されていない、レアなベースたちです。

“Grabber”や“Ripper”などは、ジーン・シモンズやクリス・ノヴォセリック、マイク・ダーント、ルイス・ジョンソンなど、著名なベーシストが使っている姿も見かけますし、数年前にはエピフォンから再販モデルが発売されていたりと、いまだにファンが多いですね。自分もそのひとりです。

当時の時代感、ギブソンの歴史を感じる、どこかやりきれないけれど愛せる一本。

ただ、こちらの“Victory”に関しては……どうなのでしょう?

自分は大好きですよ!? 見た目がまずかっこいいですよね! そしてギブソンのベースのなかでも独特な存在感がたまらないなと思ってます。

ただ、やはり短命だったことや、ギターは出たのに“Grabber”や“Ripper”と一緒のタイミングですら再販されなかったことなどから、あまり人気は芳しくなかったのかなと推察しています。それも含め愛せる楽器です。

ただ、めちゃくちゃ重いし、クセが強いです。あと個人的には、弾きにくいです。でも好きです。

ヤフオクでバラバラにされた状態のものを9万円くらいで購入しました。

昔も弾いたことはあり、サウンド的にもあまり使いやすくはない印象があったのですが、せっかくならしっかり組みあげて、あわよくば“「意外と良くね?」となってライヴとかでも使えたらなー”と思い、レコーディングなどでいつもお世話になっている、大間知章さんというテックさんにお願いして組み上げていただきました。

でも……意外と良くなかったです。

ブリッジとペグは付いておらず、家に余ってたものを搭載したので、ブリッジのみブロンズになってます(いつかシルバーにする)。

配線まわりは資料があまりないので、大間知さんはネットの画像検索を元にが組み上げてくださったそうです。ネットに落ちている画像がすべて画質が荒く、解読が大変だったとおっしゃってました……土下座。

“Victory Bass”には、“Standard”、“Custom”、“Artist”の 3モデルがあったかと思います。Standard以外の2モデルはアクティヴです(確か)。

ボディ、ネックともにメイプルでローズウッド指板。ボディは厚みがあり、メイプルということもあり、かなり重いです。

“Standard”に関しては1ピックアップ(ハムバッカー)で、1ヴォリューム、1トーン、そしてシリーズ/パラレルの切替スイッチ、というシンプルなコントロールです。

ネック・エンドが斜めにカットされた、アシンメトリーなフレット数で、1弦側が24フレット、4弦側が22フレットになっています。

サウンドに関しては、かなり独特で、文字では形容しがたいです。

個体差はあるかもですが、自分のVictory Bassはビリビリとした部分と、低過ぎないローが強く出てくるような印象で、ギブソンのベースに想像されがちな、地を這うような野太いローなどはありません。

ギブソンでよく使われるマホガニーではなく、メープルを採用していることが要因のひとつかな? と思います。

自分のプレイスタイルやKroiの楽曲においては、正直使う場面がないです(笑)。

シリパラ(シリーズ/パラレル)のミニスイッチもどちらに振っても自分はあまりしっくりきません。ドライブさせたりしてピックでガシガシやったらかっこいいのかも……? と思ってます。

ただ、自分はピック弾きをしないので、完全に現状コレクションと化してます。

でもめっちゃ好きです。

再販されることはないかもしれませんが、もしされることがあるなら、ぜひボディ厚やウッド・マテリアル、ピックアップのサウンドキャラクターなどが使いやすく変更されたらいいなと思ってます。ほぼ変更してますね。

でも見た目がかっこいいのでオールオッケー(?)。もしそんなモデルが出たら使ってみたいな、と思う一本です。

そんなクセ強なこのVictry Bass Standard。当時の時代感、ギブソンの歴史を感じる、どこかやりきれないけれど愛せる一本です。

これからも大切にしていきたいと思っています。

いつかはレコーディングなどでサウンドもお届けできればと思います。

お楽しみに!

Profile

関将典

◎Profile
せき・まさのり●1994年9月20日生まれ、茨城県出身。R&B、ファンク、ソウル、ロック、ヒップホップなど、あらゆる音楽ジャンルからの影響を昇華したミクスチャーな音楽性を提示する5人組バンドKroiのベーシスト。バンドは2018年2月に結成され、同年10月にシングル「Suck a Lemmon」でデビュー、2021年6月には1stアルバム『LENS』でメジャー・デビューを果たした。2024年1月20日には初の日本武道館ワンマン・ライヴを成功させる。2024年6月に3rdアルバム『Unspoiled』をリリース。Kroi公式FC「ふぁんく らぶ」では、自身のベースを動画で語る“せきまさのりのベースってそんなに必要ですか?”を更新中。

◎Information
Kroi HP X Instagram 
公式FC ふぁんく らぶ
関将典 Instagram