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− 製品をどんどん進化させているのが実感できた。−

 今回試奏した10機種のうち、偶然にもその前のモデルを使っていたことがある製品が多かったのですが、まずはそういった後継モデルの進化に驚かされました。コンパクトになったり、以前のモデルを使っているときにここが改善されたら良いのになぁと思っていた部分が、あたかも僕の心を読んでいたかのように(笑)、ちゃんと改善されていたり、それ以外のモデルも含めて、各メーカーがユーザーの声をよく聞いて、製品をどんどん進化させているのが実感できました。機種によって、音が劇的に変わるタイプから個性で押していくタイプ、真空管の味わいを生かしたタイプなど多種多様でさまざまですが、どの機種も優劣を競っているというのではなく、選択肢として持っていたいなと思うものばかりでした。

 現在人気のあるアーティストの音楽を聴いていると、アーティスト単位というよりも曲単位で音楽スタイルや求められるベース・サウンドが違うというぐらい、サウンド作りが多様化していると思うんです。それに対して、ひとつのサウンドで勝負していくというのもアリだとは思いますが、僕はいろんな選択肢を想定して、その曲や状況に合ったものを使っていくというのも、新しいベースのあり方なんじゃないかと思っています。それを踏まえて今回の10機種を振り返ってみると、どのプリアンプも通しただけで基本の音質が良くなるのが印象的でした。従来は、通しただけだと音ヤセしちゃって、それをイコライザーなどで補正したり、用途を限定して使い分けたりする必要があるものも少なくありませんでしたが、今回試奏したものはどれも、本格的に使えるクオリティの基準を余裕でクリアしていると思いました。なので、純粋に音楽的な要求に応じて安心して使えるのではないでしょうか。

 そのうえであえてジャンル分けするなら、AlbitとGallien-Krueger、Ampegは、そのサウンドが気に入ったらかけっぱなしで、その音を思い切り楽しんだり、“自分はずっとこのキャラクターでやっていく!”というスタンスで使っていけると思いました。また自分の欲しいサウンドがある程度固まっていて、それをさらにもう一段グレードアップさせたいというなら、Sumo StompやPhil Jones Bass。そして、その先さらに音色を増やしたい場合には、VivieやTech21、Orange、Darkglassを使う感じでしょうか。これらの4機種は、すでに自分のなかで気に入っているサウンドを破綻させないように作られているので、曲の雰囲気に応じて追加するという使い方もできると思います。そして、自分の出せる音色をいろいろと取り揃えて、さらなるひと押しが欲しいというときに、Thingsが効果的なんじゃないかと思います。種類の違うサウンドのトータル・バランスを整えてくれる感じですね。

 どの製品も機能に対してとてもコンパクトにできていますし、すでにボードをガッツリ組んでいる人でも追加しやすそうなものが多いので、今のご時世だとやや難しいかもしれませんが、とにかく楽器屋さんで全部試してみると良いんじゃないかなぁと思います!

Profile
いご●1997年生まれ。動画サイトでのベース・プレイ動画で注目を集め、18歳の若さでプロ・ミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせる。その後、数多くのアーティストのライヴ/レコーディングに参加する、今注目のベーシストだ。2020年には自身初の教則本を出版し、amazonの音楽ジャンルにおいてベストセラー入りを果たした。
works:GACKT、内田彩、岡村明美、沢城みゆき、福圓美里、夜韻-Yoin-、すとぷりなど

◎Information
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