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    ユーフのアンソニー・ボートライト

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    ユーフ(Yuuf)のアンソニー・ボートライトが語る、ジャック・ブルースとアーサー・ラッセルからの影響、“弓×エレキ・ベース”の奏法

    • Interview : Shutaro Tsujimoto (Bass Magazine Web)
    • Translation : Tommy Morley
    • Photo : Kazma Kobayashi, Ryohei Nakayama

    “クルアンビン以降”とも言えるインスト・シーンの広がりのなかで、注目を集めるユーフ(Yuuf)。英国、フランス、デンマーク、スイス出身のメンバーからなる4人組は、ロンドンを拠点に2022年頃から楽曲を発表し、世界各地の旋律とリズムを取り込んだ独自のサウンドスケープを描いてきた。2025年にはグラス・ビームスを擁する〈Ninja Tune〉傘下の〈Technicolour〉と契約し、FUJI ROCK FESTIVAL’26で初来日。

    その低音を担うアンソニー・ボートライトは、愛用のSGベースから力強いグルーヴと弓奏法による幻想的な響きを生み出す。音楽的なルーツや曲作りへのアプローチ、そして自身の“声”を見つけるまでの歩みを聞いた。

    ユーフのアンソニー・ボートライトの演奏
    Photo : Kazma Kobayashi

    PROFILE
    アンソニー・ボートライト●イングランド出身、ロンドンを拠点に活動するベーシスト。14歳でベースを始め、バンドやセッションで経験を積む。Teeth Machine、Monzanto Soundなどでの活動歴を持ち、大学で出会った仲間と2022年にユーフを結成。2024年にユーフとして初のEP『In The Sun』を発表。2025年6月に『Alma’s Cove』、同年10月に『Mt. Sava』をリリースした。2026年1月には、この2作をまとめた日本独自企画盤『Alma’s Cove / Mt. Sava』が発売された。

    Alma’s Cove / Mt. Sava
Yuuf
    Yuuf
    『Alma’s Cove / Mt. Sava』
    Technicolour / ビートインク
    国内盤CD

    アンビエントに興味を持ち、ペダルや弓を使ってサウンドを探求するようになった

     本当に特別な時間だったよ。何より、オーディエンスが音楽に集中してくれたのが嬉しかった。静かな曲だけじゃなく、アップテンポな曲で踊っているときも、僕たちと一体になって聴いてくれていると感じたんだ。大きなアンペグのキャビネットを通して演奏できたのもよかった。クールなベース・サウンドだったよ(笑)。

    ユーフが演奏するステージと観客
    今年のFUJI ROCK FESTIVALで初来日を果たし、2日目のFIELD OF HEAVENに登場。左から、アンドリン・ハーグ(per)、ヒューゴ・コッツ(g)、アンソニー・ボートライト(b)、オリバー・オーバーガード(d)。Photo : Ryohei Nakayama

     14歳のとき、学校の友達がベーシストを探していたんだ。彼はギタリストで、一緒にいろいろ悪さをしていた仲だった(笑)。ある日、“僕にもベースが弾けるかもしれない”と思った。それで弾き始めて、彼とバンドを組んだんだよ。その後は音楽の専門学校に進み、いろいろなバンドやセッションで演奏するようになった。一度、学校から離れた時期もあったけど、そのあと大学に進んで、今のメンバーたちに出会ったんだ。その間も自分自身の音楽に取り組んでいて、アンビエントに興味を持ち、ペダルや弓を使ってサウンドを探求するようになった。ユーフを始めたことで、それまでの経験がひとつにつながった気がする。

     ほかの人たちと一緒に演奏することと、音楽に夢中になることだったと思う。祖父が持っていた古いジャズのレコードでベース・ソロを聴いて、“これは本当にクールだ!”と思ったのを覚えているよ。そうした好奇心に従って音楽を聴き、バンドやセッションで演奏する。そういう経験が少しずつ積み重なって、自分のプレイになっていったんだ。

    ユーフのアンソニー・ボートライト
    Photo : Kazma Kobayashi

     いや、ヴォーカリストのいるバンドでも演奏していたよ。ただ、どのバンドにも強いミュージシャンシップがあった。シンガーを支えるときも、常に音楽そのものに意識を向けていたし、一緒に演奏してきた人たちはみんな、自分自身の“声”や独自のサウンドを持とうとしていたんだ。

     ヒューゴ・コッツ(g)とオリヴァー・オーバーガード(d)がジャム・セッションを始めたのがきっかけだよ。僕たちは同じ大学に通っていて、それ以前にも一緒にバンドをやっていたから、僕にも声をかけてくれたんだ。もともと親しい友達同士で、一緒に演奏するのが大好きだったから、自然にジャムが始まった。そこにアンドリン・ハーグ(perc)が加わり、4人で初めてジャムをしたときに生まれたのが「Silky Spring」だった。そのとき、全員がそれぞれの楽器を通して、自分自身の“声”を出せるプロジェクトだと直感したんだよ。

    ▲ 4人での最初のジャムから生まれた「Silky Spring」。

     もちろんジャック・ブルースだね。ティーンエイジャーの頃、長髪でSGを弾く姿を見て、“めちゃくちゃクールだ!”と思った。今でもそう思うし、あの雰囲気や美学が好きなんだよ。実際に手に取るとすぐにしっくりきて、音を聴いた瞬間に“これが僕の好きなサウンドだ!”と思った。それ以来、ずっと使い続けている。

    ▲ アンソニーがSGベースを手にするきっかけとなったジャック・ブルースが、エリック・クラプトン(g)、ジンジャー・ベイカー(d)と活動したクリーム。「Crossroads」のライヴ映像で、そのプレイをチェック。

     16歳か17歳の頃から使っているよ。2012年製で、カラーはヘリテージ・チェリー。たくさん弾いてきたから古く見えるんだ。弦はダダリオのフラット・ワウンドを使っている。最初は初心者用のベースを使っていたんだけど、両親は僕が音楽に夢中になっていくのを見てくれていた。それまでは何かに熱中することがあまりなくて、子どもの頃は自分が何をすべきか、少し迷っていたんだと思う。音楽の専門学校に進もうとしていて、プロのミュージシャンになりたいと決めた頃、父が“それならいい楽器が必要だ”と言って買ってくれたんだ。その後、いろいろな仕事をしてお金を返したよ。

    アンプを背に演奏するユーフのアンソニー・ボートライト
    Photo : Kazma Kobayashi

    弓で弾き始めたときに、“これはすごくパーソナルなものだ!”と思ったんだ

     コントラバス奏者のトム・ウィートリー(Tom Wheatley)にレッスンを受けたのがきっかけだよ。彼はハーモニクスや独特の響きを使って、おもしろい演奏をするんだ。僕も弓で弾くことにすごく興味があった。例えば、左手の親指でA(1弦2フレット)を押さえたまま、同じ手の小指で、その弦の完全4度上にあたる位置(1弦7フレット)に軽く触れるんだ。その状態で弓を使うと、2オクターヴ上のAがハーモニクスで鳴る。エレキ・ベースでは親指で押さえるほうがラクだし、そのままスライドもできる。ショート・スケールのSGに限らず、フルサイズのベースでもできるよ。

    弓でベースを演奏するユーフのアンソニー・ボートライト
    Photo : Ryohei Nakayama

     以前から感情を込めて弾くことは大切にしていたし、グルーヴを作って音楽を支えることも意識していた。でも、弓を使うようになってからは、演奏のエモーショナルな部分や音作りを、より意識するようになったんだ。指やピックでも自分を表現している感覚はあったけど、まだ自分自身の“声”を見つけられていない気がしていた。弓で弾き始めたときに、“これはすごくパーソナルなものだ!”と思ったんだ。弓を使うと、いつも自分の感情と密接につながっている感じがするよ。

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    ▲ ユーフのアンビエントな一面を聴ける「In The Sun – Ambient Tracks」。

     トーン・シティのTiny Springで部屋鳴りのような短い響きを作り、そのあとにTCエレクトロニックのHOF Miniで長いリヴァーブを加えている。かけすぎず、音を少し持続させて空気感を出すイメージだね。ほかにエレクトロ・ハーモニックスのハーモナイザーやデジテックのBass Whammy、2台のルーパー、フリーズ・ペダルも使っているよ。ディレイはNUXのEdge Delayで、音作りにはアーサー・ラッセルの影響があると思う。僕は彼の大ファンで、『World of Echo』では、エコーをかけながらチェロを弾いているんだ。あの少し濁った、ドリーミーでシューゲイズ的なサウンドが大好きでね。

     特にそういう理由ではないよ。ラウンド・ワウンドでも同じように弓で弾けるけど、その場合はもっとシャープでブライトな音になる。僕がフラット・ワウンドを使っているのは、もともとそのサウンドが大好きだったからなんだ。ピノ・パラディーノやジェームズ・ジェマーソン、チャック・レイニーといったミュージシャンの大ファンでね。

     まずは聴くことだね。演奏やジャムのなかで、自分の耳が惹かれるものに従っている。スケールや音についても勉強してきたけど、演奏中にいつも理論を考えているわけじゃないんだ。そのフレーズがユニークなのか、音楽を支えているのか、メロディックなのか。曲に寄り添うべきか、それともベースが前に出る瞬間なのか。そうしたことを耳や感覚で捉えているんだと思う。感情やサウンドも大切にしながら、複雑にしすぎず、直感的にどう感じるかを大事にしているよ。

    ステージに立つユーフのアンソニー・ボートライト
    Photo : Ryohei Nakayama

     最近、エチオピアの音楽にインスパイアされた曲を作り始めたんだ。出発点はヒューゴと僕でエチオピアの音楽を掘り下げたことで、音楽を聴き、ベース・ラインを書き起こして、スケールを理解していった。オリヴァーが持っていたアプリも使って、いろいろなスケールを調べていたんだよ。そこから試行錯誤しながら、いろいろなラインやパターン、リフを作った。最終的には少しロック寄りになったけどね。ほかのメンバーも同じように、好奇心を持って向き合っていると思う。

     初期の曲にも、西アフリカや北アフリカの音楽から影響を受けたものがある。基本は聴いて、耳で拾うところから始まる。同時に、“どうすれば自分自身のやり方で、音楽の語彙に加えられるだろう?”とも考えているんだ。ただコピーするというより、受けたインスピレーションを自分たちのものにしていく感覚だね。

     最初の『In The Sun』(2024年)は、ほとんどDIで録った。そのあとの『Alma’s Cove』と『Mt. Sava』(ともに2025年)では、アギュラーのアンプ・ヘッドのDI出力を使っている。だから2作目と3作目は、低域が強くて、よりベースらしい音になったと思う。ヒューゴはプラグインをたくさん使うから、録音後の処理は彼に聞いたほうがいいかもしれない(笑)。基本はクリーンなトーンで、特別に派手なことはしていないし、セッティングもかなりフラットだよ。

    ▲ EP『Alma’s Cove』の表題曲を、ギリシャ・クレタ島の渓谷で演奏した公式ライヴ映像。

     弓を使うパートやアンビエントなパートでは、さっき説明したディレイ、リヴァーブ、ハーモナイザーなどを使っているよ。ただ、通常のベース・プレイはとてもシンプルで、基本的にはクリーンな音なんだ。

     たぶん、意識せずにやっているんだと思う。ベースを弾くのが好きだから、自然に“グルーヴしたい!”と感じる。それが人を踊らせることにつながったら嬉しいね(笑)。でも、ステージではメンバーと一緒に、その場を楽しんでいるんだと思う。オーティス・レディングやスライ&ザ・ファミリー・ストーンのレコードや映像にも、そういう感覚がある。例えば、オーティスと演奏するドナルド・“ダック”・ダンは、後ろで自分もグルーヴしながら弾くことで、音楽のグルーヴをさらに濃くしている。頭で考えるというより、音楽を感じているんだよ。

    ベースを演奏するユーフのアンソニー・ボートライト
    Photo : Ryohei Nakayama

    機材篇では、アンソニー・ボートライトが長年愛用するSGベースや、弓奏法にも用いるエフェクター・ボードを紹介。2台のルーパーやピッチ・シフターを組み合わせた、ユーフのサウンドを支える機材に迫る。

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