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「“音の長さ”がほとんどすべて」ローラ・リー(クルアンビン)が語るグルーヴの作り方【インタビュー後篇】
- Interview : Shutaro Tsujimoto(Bass Magazine Web)
- Translation : Tommy Morley
- Photo : Jackie Lee Young
記事の前篇はこちら。
音の長さは、ほとんどすべてと言ってもいいくらい大切だと思っている

⸺先日のステージを観ていて、ゴーストノートをあまり使っていないのが印象的でした。ファンキーなスタイルでは多用するベーシストも多いですが、あなたがそうしないのには、何か理由があるのでしょうか?
特別な理由があるわけではなくて、ただ自分が心地よいと感じるものを弾いているだけなの。ときどきゴーストノートを入れてみることもあるけれど、どうもしっくりこないのよね。自分のベース・ラインを弾いていて楽しいのは、手の感覚として心地よいからだと思う。基本的には、その感覚を追い求めているの。
⸺音価、つまり音の長さのコントロールも素晴らしいと感じました。今作では10年前のオリジナル以上にそれが意識され、グルーヴが深まっているように聴こえたのですが、いかがですか?
それは本当に大きな褒め言葉だわ。ありがとう。音の長さは、ほとんどすべてと言ってもいいくらい大切だと思っているの。始めたばかりの頃は、ただ音を出して、メロディを作ることに夢中だった。でも、まだまったくの初心者だった頃、マークのそばで古いダブのレコードに合わせて練習していたときのことを覚えているわ。彼は別のことをしていたんだけど、突然こちらに来て、“その音はいつ終わるんだ?”って聞いてきたの。“音をどこで終わらせるのかを意識するんだ”ってね。振り返ると、それは私が学んだなかでも、最も大切なことのひとつだったと思う。だから、そこに気づいてくれてありがとう。

⸺音を止めて休符を作るときは、右手と左手のどちらでミュートしているのでしょうか? ブリッジに挟んだスポンジでサステインを抑える方法も含めて、使い分けを教えてください。
私はブリッジ・カバー、いわゆる“アッシュトレイ”のなかにスポンジを詰めて、サステインを短くしているの。実はフジロックの直前にベースを替えたんだけど、それは使う予定だったベースのスポンジの具合があまり良くなくて、サステインが少し長すぎたからなの。音を伸ばしたいときは、スポンジだけのミュートで済ませているわ。音をどこで終わらせるか細かくコントロールしたいときや、鋭く切りたいときには右手でミュートする。もう少し柔らかく、硬すぎない終わり方にしたいときは、左手で止めているの。
⸺クルアンビンのグルーヴの秘密も知りたいです。あなたのベースはスネアのバックビートと深く連動しているように感じましたが、演奏中は2拍目と4拍目を明確に意識していますか? それとも、キックやハイハットも含めてドラム全体を聴いているのでしょうか?
ただ感じているだけなの。少なくとも曲を作っているときはそうで、拍を数えたりはしていないわ。すでに作ったものを演奏するときには、そのフレーズを作ったときの感覚に戻るために、カウントすることもあるけれど。普段はループに合わせて曲を作っているから、自分の頭のなかで捉えたドラム・ループに合わせて作り始めるの。ときどき、自分が1拍目だと感じている場所が、実際の1拍目とずれたフレーズを作ることもあるわ。あとになってマークやDJが、私が少し違うところにビートを感じていたことを確認し直さなければならないこともある。でも、私自身はあまり深く考えすぎないようにしているんだと思うわ。
⸺10年前の自分の演奏を聴いて、変わったと感じる部分はありますか?
それはないかしら。ベース・ラインのなかには、当時の時代性が強く出ているような選択もあったし、そういう部分は変わったと思う。でも、10年前に弾いていたもので、今の私なら絶対に弾かないようなものはないと思うわ。
⸺ライヴの経験や音楽を聴く耳、ベーシストとしての身体的な変化など、この10年で自分が変わるきっかけになったものはありますか?
演奏することや、その時間を生きること、そのすべてを、より大切に感じられるようになったことだと思うわ。うまく説明できないけれど、音楽には何度でも新しく恋に落ちることができると思うの。
⸺今作は10年前と同じ納屋でレコーディングしたそうですね。同じ環境だからこそ、自分たちの変化や、逆に変わらないものを感じることはありましたか?
両方あると思うわ。たとえるなら、10年間ずっと寿司飯を作り続けているようなものかしら。作っているものは同じお米でも、10年続けると、以前はわからなかったことが直感的に理解できるようになる。そして10年後には、きっとそれをさらに愛せるようになっていると思うの。私たちは今も同じ子供のままで、そこに一緒に過ごした10年が加わった、という感じね。

⸺あなたは頻繁に機材を入れ替えるタイプではありませんが、ヘフナーのベースやフェンダーのシグネイチャー・モデル、アンペグのB-15など、新しく加わったものもあります。それ以外に、この10年で機材面の変化はありましたか?
いいえ、本当に何もないの。最近は、もう少し機材の世界を探ってみようかな、とは思い始めているけれど、今のところはシンプルにしておくのが好きなの。
⸺弦についてはいかがですか? 前回のインタビューでは“まったく交換していない”と話していましたが、あれ以来、交換しましたか?
まだ交換していないの。今でもすごくいいフィーリングで、オリジナルのベース(SXのジャズ・ベース・タイプ)にはずっと同じ弦を張っているわ。フェンダーがシグネイチャー・モデルを作るために私のベースを持ち帰って調べたときも、“弦には絶対に触らないで”とお願いしたの。あの弦のフィーリングにかなうものは、ほかにないから。今回のレコードでシグネイチャー・モデルを使わなかったのは、まだ弦がなじんでいなかったからなの。だから去年は毎回ライヴに持っていって、練習にも、本番前のウォーミングアップにも使っていたわ。数ヵ月たって、ようやくしっくりくるようになってきたの。新品の弦は、新品のコンバースみたいなものよ。少し履き慣らす必要があるでしょう?
⸺まさに“育てている”という感じですね。
そう、まさにそのとおりよ(笑)!
Laura’s Bass

フジロックのステージに用意されていたフェンダーのジャズ・ベース。杢の際立つ指板とヘッド、月の満ち欠けを思わせるポジション・マーク、ゴールドのパーツが特徴だ。ローラは2022年のBBCの番組で、愛用のSXと同じ弾き心地を求めてフェンダーに製作を依頼し、腕のタトゥーをもとに月の満ち欠けを指板に取り入れると語っており、写真はその特注個体とみられる。そのSX製JBタイプは、マーク・スピアーがディマジオ製ピックアップへの交換などを施した長年の相棒だ。昨年発売されたフェンダー製シグネイチャー・モデルは、ローズウッド指板とクローム・パーツ、ディマジオ製Ultra Jazzを採用しており、写真の個体とは指板や外装が異なる。今回の取材では、使用予定だったベースのスポンジ・ミュートの効きが不十分でサステインが長すぎたため、フジロック直前に持ち替えたと明かしている。アンプは、アンペグのSVT-CLと、10インチ・スピーカー8基を搭載するSVT-810Eを組み合わせたセットとみられる。

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PROFILE
ローラ・リー(クルアンビン)
米国テキサス州の3人組、クルアンビンのベーシスト。2015年に『The Universe Smiles Upon You』でアルバム・デビューし、『Con Todo El Mundo』(2018年)、『Mordechai』(2020年)、『A LA SALA』(2024年)を発表。レオン・ブリッジズとの共作EP『Texas Sun』(2020年)、『Texas Moon』(2022年)、ヴィユー・ファルカ・トゥーレとの共作アルバム『Ali』(2022年)なども手がける。2025年にはデビュー作の発表10周年を記念した再録盤『The Universe Smiles Upon You ii』をリリースした。
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