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    INTERVIEW – 岩永真奈

    • Interview:Koji Kano

    テクニカルに魅せる
    ジャンルレスなソロ3作目

    TAKURO(GLAY)や清竜人を始めとした多くのアーティストのサポートを手がける岩永真奈。サポート活動に加えてソロ活動も精力的に展開する彼女の最新ソロ作となる3rdフル・アルバム『Geometry』が2021年12月23日にリリースされた。彼女なりのコロナ禍を描いたという今作は、初となるヴォーカル入りの楽曲が入るなど、これまで以上にジャンルレスに彼女の世界観に没入できる一枚。セッションマンとして多忙を極めるなか、彼女は今作にどう向き合ったのか。豪華ゲスト・メンバーが参加した制作の裏側など、たっぷりと語ってもらった。

    こんなメンバーがいたら絶対聴きたいじゃないですか!?

    ――今作『Geometry』は前作『Chapter2』(20183月リリース)から4年弱の期間が空きましたね。この4年の期間は主にどんな活動を行なっていたのですか?

     まず前作を出した直後に今の事務所に所属することになったんです。それまではサポート活動がメインだったんですけど、今の事務所では制作のお仕事がすごく多くて、舞台とかゲーム音楽、ほかにはサンリオピューロランドのショーの曲を作ってディレクションしたりとか、ベーシストの活動だけではなくてもう一歩踏み込んだことも積極的にやっていました。

    ――コンポーザー的な仕事ということですね。

     はい。ひとつの作品を完成させるまでの全部の作業をやらせていただいたんですが、仕事としてここまで詰めていくことは今までやったことがなかったですね。これまでとはかなり違うことをやってたなってイメージです。

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    ――昨今のコロナ禍はバンドマンにとっては苦しい期間なわけですが、岩永さんのようなセッション/サポート・ミュージシャンにとってはどのような期間だったのでしょうか?

     困ったなぁっていうのはありましたよね。でも自分のことをこんなにゆっくり考えられる期間っていうのは今までなかったので、自分についてもだし、どういうスタイルで今後やっていこうかを改めて考えました。さっきも言ったとおり作曲の仕事がすごく増えたんですけど、これまで私はベーシストとして呼ばれる側だったのが、作った曲をレコーディングしてもらうっていうのは呼ぶ側になるということなので、これからの人生はこういうことももっとやっていきたいな、とか思ったりしました。だから同じような活動をしているミュージシャンの人たちと連絡を取るようになりましたね。

    ――今作の制作はいつから始まったのですか? また曲作りの方法はどのように?

     昨年の9月に曲を書いて、10月からレコーディングっていう流れでした。新しく書いた曲もありつつ、以前に作った曲をアレンジし直して入れたものもあります。曲作りの手順としては、思いついたものをDTMに打ち込んでいくって感じですね。以前は頭のなかで鳴ったものをまず譜面に起こして、そこからDTMに落とし込んでいってたんですけど、今は譜面を書かずにそのまま打ち込んじゃいますね。

    ――ベース・ラインはどのタイミングで固まるんですか?

     激しいリフ系の曲だったら最初に作ることが多くて、“ベースのリフをこうしたいからほかのパートはこうしよう”って考えて構成していくんですけど、メロディとコードから決まる曲だと“ビートをこうしたいからベースはこうしよう”っていう風にベース・ラインを作ることもあります。今作だと「Lotusflower」はイントロとかAメロはずっとベースがコードを弾いてるんですけど、もともとこういう曲にしようと思って作ったんです。

    ――活動10周年の節目の作品ということで、本作はクラウドファンディングも行なったということですが、率直にいかがでしたか?

     実は前作のときもやるかやらないか考えたんですよ。フリーで自主制作で作るのって最初にまとまったお金が必要だし、自分のポケット・マネーで作るとなるとできることも限られてしまうけど、前作のときは勇気が出なくてできなかったんです。目に見えて結果がわかるものなので、全然集まらなかったら自信なくしちゃうかなって。でも、まわりからは“絶対行けるって”って言ってもらえていたので、いつかはやりたいなと思ってたんです。それで今作はマネージャーに背中を押してもらったこともあってやらせていただきました。多分ひとりだったら今作もやってなかったですね……。

    ――結果としては?

     正直、私自身は達成できると思ってなかったんです。予算も大きく出ちゃったので、65%ぐらいで終わるんだろうなって思いつつ、最後にはバーンと伸びて達成できたので感動しました。

    ――達成できた要因は何だと思いますか?

     なんやろうな……見てくれる人が飽きないように、意欲が削がれないように、一緒に作ってる感じを常に共有したかったので、活動報告は結構書きましたね。多分50投稿ぐらいはしたかと。だから私のTwitterを見ていたらイヤでもクラファンに意識を持っていかれるような感じというか、普段SNSをあまり見ないって人もクラファンのことを認知してくれてたので、いっぱい書いたのが良かったのかなって思います。あと参加メンバーが豪華すぎるっていうのもあるかな。こんなメンバーがいたら絶対聴きたいじゃないですか!?

    ――では今作に込めた思いやコンセプトを教えてください。

     コロナ自粛で家から出られなくなって、当たり前に行けてた場所に行けなくなって、会いたい人にも会えなくなってストレスが溜まると思うんです。それでたくさんのミュージシャンがポジティブな曲を出したりしてましたけど、個人的にはそこにはネガティブな感情も多いんじゃないかなって思ってて。明るいテレビとか曲を聴いて元気になっても、寝る前には“また明日もこんな感じか”っていうときが絶対あると思うので、そういうネガティブな感情を共有できるように、そこにフォーカスをしています。そういう複雑な感情を表現した作品になっています。

    ――ネガティブな部分にフォーカスしつつ、コロナ禍という新たな生活様式を描いたと。

     そうですね。曲名にもそういうものを散りばめていて、例えば「Othello Game」は人間の意見が掌返しになる様を“オセロ”というワードで表現したり、「Radical Dawn」は何回も好転と緊急事態宣言の繰り返しのなかで辛いけど、これだけやってればいつか朝は来るし、次はもっと良くなるよっていう思いも込めてこのタイトルにしたんですよ。

    ――その「Othello Game」はメタリックな楽曲ですね。“ベーシストのソロ作”と言われると、ベースが前面でフレーズを聴かせるイメージもありますが、この曲はルートで下を支えることに徹しているのが印象的です。

     こういうジャンルの曲にしたかったっていうのがまずあって、頑張ってテクく弾くことも考えたんですけど、ベースを目立たせるということよりも曲の世界観を重要視したいなって思ったんです。ギターとシンセのテクを目立たせたかったので、ベースはバッキングに徹したって感じですね。

    ――随所でギターやキーボードとユニゾンしたプログレ的高速アプローチもありますね。もうこれは岩永さんの趣味が溢れてるなと。

     そうですね。一応運指は考えて書いたつもりですけど、自分で弾くのもかなり苦戦しました(笑)。だからテクいっていうことを前面には出してないけど、普通にバッキングとかユニゾンを弾くだけでも難しいっていうのはあって、そこは狙った部分なんです。

    ――中盤ではロー・ポジションでのスラップのベース・ソロもあります。ここはかなり音が歪んでいるのもキモですね。

     昨年にダークグラスのアルファオメガ(プリアンプ)を買ったんですよ。ダークグラスの歪みってめちゃくちゃ個性があって最近ぽい音で、こういうジャンルにも向いているので使いやすいですよね。フレーズとしては上のほうの音域でソロを弾くのも目立っていいかなって思ったんですけど、個人的にローB弦のバチバチした音が好きなので、低音で歪ませてワルい感じにしちゃいました(笑)。

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