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    INTERVIEW – 岩永真奈

    • Interview:Koji Kano

    “そんな難しいことさらっとやっちゃうんだ”っていうのはひとつの取り柄。

    ――If Voyage」は7分半もの長尺の楽曲ですね。この曲は展開の移り変わりのほか音数も多く、劇的なラスト・スパートも含めてひとつの物語のようでした。

     この曲は1stアルバムに入ってる「In The Deep Sea」って曲の兄弟曲にしようと思ったんです。「In The Deep Sea」は静かな波の感じとか、海中の魚の大群が現われる様子を描いた変拍子の曲なんですけど、「If Voyage」も同じく海にまつわる曲になっています。私は昔吹奏楽をやってたんですけど、高校生のときに流行ってた大編成用の楽曲で「マゼランの未知なる大陸への挑戦」って曲があるんです。マゼランは世界一周の途中で死んじゃうんですけど、この曲には“マゼランがもしも世界一周を成し遂げてたら”っていう意味が込められています。展開の多さはいろんな大陸に行ったり、嵐にあったりっていうのを表現してるんですけど、“もしも”のイメージがたくさんあるから展開が増えていったってことですね。

    ――中盤のハイポジでのベース・ソロは約1分半もの長尺ですが、ソロのなかでも前半後半で音数を調整してイメージを変えることで、楽曲全体にメリハリが出ていますね。

     まず浮遊感が欲しかったのでベースにコーラスをかけてボワッとした音色にしていて、イメージとしてはリスナーさんをジェットコースターに乗ったあとのボーッとした感じの気分にしたかったんです。そのボーッとした状態で海を見ているっていうのがコンセプトにありつつ、コードを弾きながらメロディを長尺で弾いています。指が届かないところはタッピングで弾いているんですけど、こういうアプローチは個人的に強みのひとつだと思っているので、これをやるなら前半後半で展開をつけたいなと。音数を少なくしつつ、後半は音数を増やしてめちゃくちゃ弾いて展開を強調したいって狙いがありました。

    ――その他の部分ではベースの見せ場というよりは、ストリングスやシンセなど各所で主役を担う楽器を支えているイメージです。

     この曲みたいなヴァイオリンと変拍子と海っぽい雰囲気ってすごく合うなって思いつつ、「In The Deep Sea」もメロディはヴァイオリンなので、今回は違いを出すためにストリングスのパートも自分で書いて生で弾いてもらっています。そうなるとウワモノは分厚くなるのでほかの箇所のベースはシンプルに、というバランスを取ったんです。

    ――今作の録音で使用したベースを教えてください。

     ほぼサドウスキーのウィル・リー・モデルの5弦で弾いています。その他だと「Requiem」がフェンダーの61年製のプレベ 、「Ending -Next Chapter-」はThree Dots GuitarsのPBタイプとウッド・ベースで弾いてますね。

    ――さて、約4年弱ぶりの作品をリリースしたわけですが、次作の構想はもうありますか? あれば意気込などを教えてください。

     そうだなー……まだ燃え尽きから立ち直れていないっていうのはありますけど、いろんな人に“過去イチ出ちゃったんじゃない?”って言ってもらえるぐらいしっかり作れたので、次やるとしたらもうちょっとベースが目立つ曲を書いてみてもいいのかなと思っています。ベースだけでも曲を成立させることはできるので、制作をたくさんやって得た知識なども大いに活用して、ベース一本だけで一曲作るっていうこともやってみたいです。あとはもう、ひたすら精進しようって感じですね(笑)。

    ――今作を足がかりにアーティストとしてまた飛躍していくわけですが、いちベーシストとしては今後どんなプレイヤーになっていきたいですか?

     ずっと個性的ではいたいなって思いますね。いろんなジャンルができる人であり続けたいですし、“そんな難しいことさらっとやっちゃうんだ”っていうのはひとつの取り柄だと思っているので、そこはブレずに大事にしていきたいですね。

    ――最後に、バンドマンと違って不定期にライヴや録音などをこなす必要があるセッションマンにとってソロ作を作ることは難しいことだと思います。改めてソロ作品を作る意義とは?

     サポートする現場によっては自分の個性があまり出せないことも多いと思うんですけど、本当はこういうジャンルが好きでこう弾きたくてって思いを秘めてる人であれば自分の作品を作る意義は大きいと思うし、自分の原点に帰れる場所が自分の曲でありソロ名義の活動だと思っています。例えばジャズばっかりやってるとジャズの頭になっちゃうし、8ビートってどういう風に弾いてたっけってなるときもあるけど、帰ってくる場所があって、ここから各ジャンルの現場に行けば、行った先で得たものをもう一回自分の家に持って帰ってきてそこからまた成長できるので、自分のルーツを振り返る意味もソロ作品にはあると思います。自分の音楽に賛同してくれるお客さんがいれば、ほかの現場でどれだけ疲れていても曲を書いて音源出そうっていう活力になるので、そういう意味でも大事なことかなと思っています。

    ◎Profile
    いわなが・まな●12月23日生まれ、大阪府出身。高校生の頃にベースを弾き始める。専門学校でジャズやコンテンポラリー・ミュージック、フュージョンを学び、そののちにベーシストとしての道を歩み始める。これまでにTAKURO(GLAY)、清竜人といったアーティストのサポートを担当し、ライヴ、セッション、レコーディングや作編曲などジャンルを問わず多方面で活躍中。また、ソロ・アーティストとしては、2014年に1stアルバム『Ascension』、2018年に2ndアルバム『Chapter2』、2021年に3rdアルバム『Geometry』を発表している。

    ◎Information
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