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フジロック’26をベース目線で総括⸺クルアンビン、The xx、韓国勢まで、苗場で響いた低音
- Report : Shutaro Tsujimoto (Bass Magazine WEB)
- Photo (The xx) : Masanori Naruse
ポップアクトの“バンド編成”に生身のグルーヴをもたらすベーシストたち
フェスで毎年、ベーシスト目線で楽しみにしているポイントのひとつが、ヒップホップやR&B、ポップ、エレクトロニック系など、いわゆる“バンド”ではないアクトが、ライヴでどのような編成を採用しているかという点だ。今年あらためて印象に残ったのは、ギターやドラムを置かない編成はあっても、ベースは生身のプレイヤーによるグルーヴが大切にされているケースが多かったことだ。

土曜日のWHITE STAGEに登場したトロ・イ・モワは、ドラマー、ベーシスト、そしてヴォーカル&キーボードを担うチャズ・ベアーの3人編成。ギタリストはおらず、その役割をチャズ自身が弾くキーボードやサンプラーが担っていた。一方、同じく土曜日のWHITE STAGEに出演したイギリスのシンガー・ソングライター、アーロ・パークスのセットは、本人にベース、ギターを加えた3人編成で、ドラム・ビートは同期などに委ねていた。
興味深いのは、どちらにも“生のベース”が残されていたことだ。ドラマーがいない編成、ギタリストがいない編成はあっても、ベーシストがいないケースは意外と少ない。リズムとウワモノをつなぐのがベースの役割とはよく言われるが、打ち込みのビートと歌やコード楽器のあいだに人間が弾く低音が入ることで、アンサンブルに揺らぎや推進力が生まれる。大きな会場でオーディエンスを踊らせるうえでも、その役割は想像以上に大きいのかもしれない。

今年の大きな目玉のひとつだったXGもベーシストを含む生バンドを従えたステージを展開。また、初日のGREEN STAGEに登場したサウス・ロンドン出身のラッパー、ロイル・カーナーはジャズ・ミュージシャンたちを擁したバンドとともに、UKのジャズとラップ・シーンが地続きであることを感じさせるセットを披露した。ベーシストは、レディオヘッドのエド・オブライエンやトム・ミッシュのバンドにも参加するイヴ・フェルナンデスが務めていた。
国内勢でも、2日目のFujii Kaze(藤井 風)は、宮川純(key)、馬場智章(sax)といった現在の日本のジャズ・シーンを代表するプレイヤーに加え、ベースを務めながらバンドリーダーとして全体を支える本誌でもお馴染みのKOBY SHY(小林修己)らによるバンド・セットを展開。さらに山本連(LAGHEADS、Suchmos)が低音を支えたYo-Sea、まきやまはる菜がベースを務めた柴田聡子など、ジャズをルーツに持つプレイヤーたちが、ポップスやR&Bのアクトにリッチな生演奏のグルーヴをもたらしていたのも印象的だった。

FIELD OF HEAVENを彩った世界各地のダンス・グルーヴ
今年もFIELD OF HEAVENには、世界各地から異なるルーツを持ったダンス・グルーヴが集まっていた。サウス・ロンドンでクロスオーバーする新世代ジャズのグルーヴを聴かせてくれたココロコ(Kokoroko)では、滑らかなアフロ・ジャズのなかに鳴るドゥウェイン・アザリーのプレシジョン・ベースの無骨な低音が強い芯を作り、バッドバッドノットグッドでは、ジャム・バンド的な開放感のなかでチェスター・ハンセンが縦横無尽にベースを弾き、YMOのカバーまで披露した。

初来日ながら入場規制となったアンジーヌ・ド・ポアトリーヌでは、微分音に対応したギター/ベースのダブルネック楽器とルーパーを駆使する奇抜なプレイに目を奪われた。アルティン・ギュンではトルコの民族楽器バーラマの響きにピック弾きの太いベースが絡み、OGRE YOU ASSHOLEは催眠的なベース・フレーズの反復によって強烈なダンス空間を作り出す。弓弾きまで繰り出すアンソニー・ボートライトのプレイが印象的だったロンドン出身の新人インスト・バンドのユーフ、カリフォルニアらしい陽気なヴァイブスとどっしりした低音が共存するラ・ロムも含め、楽器もルーツも異なる多彩な“踊れる低音”がFIELD OF HEAVENを彩っていた。


韓国勢の充実と、“最深”ステージORANGE ECHO
韓国勢の存在感も、今年のフジロックを語るうえで外せない。昨年は台湾の落日飛車(Sunset Rollercoaster)とのコラボレーションでGREEN STAGEに登場したヒョゴ(HYUKOH)が、今年は単独で初日のRED MARQUEEのトリを務めた。やはり目を奪われるのは、ピック弾きでリッケンバッカーを構える姿が最高に絵になるイム・ドンゴンだ。途中ではリード・ギターのイム・ヒョンジェもベースを手にし、2本のベースが鳴る場面もあり、ベーシストの視点からも発見の多いステージだった。

そして、韓国をはじめとするアジアの音楽との出会いという意味では、昨年新設されたORANGE ECHOの存在も大きい。今年はソウルの3人組CADEJO(カデホ)にOriginal Loveの田島貴男がゲスト出演したほか、今や韓国を代表するバンドSilica Gel(シリカ・ゲル)のキム・チュンチュ(g)によるソロ・プロジェクト、Noridogam(ノリドガム)、2日目のORANGE ECHOトリを務めたBongjeingan(ボンジェインガン)など、韓国のインディ・シーンの現在地を感じさせるアクトが並んだ。

なかでも印象的だったのが、ボンジェインガンでヴォーカル/ベースを務めるチ・ユネ。フェンダーのOPBで鳴らす太い低音の存在感に加え、Noridogamでもベーシストとして存在感を発揮していた。プレイヤーに注目することで、バンド同士やシーンのつながりも見えてくる。そうした発見もフェスならではだ。
今年のフジロックは、天候にもかなり恵まれた。特に2日目までは暑すぎることもなく、大雨でずぶ濡れになることもない、苗場で一日を過ごすには最高の気候だった。10年以上連続で参加しているが、ここ数年のなかでも特に楽しい3日間だったように思う。
そして、毎年足を運ぶたびに感じるのが、フジロックの音響の素晴らしさだ。年々さらに良くなっているように感じるし、とりわけGREEN STAGEのような巨大なステージで、あれだけ輪郭のあるクリアな低音を聴けることには毎回驚かされる。PAに携わるスタッフの方の努力はもちろん、山の中という開けた環境や、周囲に住宅地がないことによる音量面での自由度も、その一因だろう。自然のなかで音楽を楽しめることはもちろんだが、近年は“あの音響を浴びに苗場へ行きたい”という思いも、毎年足を運ぶ大きな理由になっている。今年もさまざまなアクトを追いかけながら、その魅力を改めて実感した3日間だった。

FUJI ROCK FESTIVAL ’26
2026年7月24日(金)〜26日(日)新潟・苗場スキー場
公式サイト:https://fujirockfestival.com/
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