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INTERVIEW − 関谷友貴[TRI4TH]
- Interview:Shutaro Tsujimoto
- Photo(Live):Victor Nomoto
ルーツと向き合い生み出した緩急のグルーヴ
Shingo Suzuki(Ovall)、Kan Sanoといった敏腕プロデューサーや、チバユウスケ(The Birthday)をはじめとする強力なゲスト・シンガーを迎え作り上げた結成15周年記念アルバム『GIFT』(2021年)から約1年半、“踊れるジャズ・バンド”を標榜するTRI4THがニュー・アルバム『CALM&CLASH』を2月15日にリリースした。そして、前作でプロデューサーたちがバンドに持ち込んだ“横ノリのグルーヴ”を追求し、新しいバンド像を提示した今作でキーマンとなったのがベーシストの関谷友貴だ。ウッド・ベーシストにこだわりその可能性を拡張してきた関谷は、今作でも臆せずリズム・パターン、音作り、奏法と、さまざまな角度からの挑戦を重ねている。20代前半をアメリカで過ごした彼が、“その頃の空気感を思い出しながら弾いたところがある”と語り、自らのルーツにも向き合ったという『CALM&CLASH』について、その制作背景を明かしてもらった。
ミシェル・ンデゲオチェロとか
ディアンジェロがドンズバの世代なので。
━━最初に、前作『GIFT』(2021年)から今作にどう向かっていったかを聞かせてもらえますか?
前作は結成15周年記念の集大成のようなアルバムを作ろうということで、Shingo Suzuki(Ovall)さんやKan Sanoくん、シライシ紗トリさんといった方々を呼んで、“すご腕のプロデューサーとすごいものを作る”という意識で挑みました。あとはコロナ禍でお客さんがライヴで声を出せないなかライヴのやり方を模索している時期で、声を出さなくても楽しめる、“一緒に”踊れる作品というコンセプトもありました。
━━ゲスト・ヴォーカリストも豪華でしたね。
The BirthdayのチバユウスケさんやSANABAGUN.の岩間俊樹くんといった素晴らしいシンガーとコラボレーションすることができました。そして今回は、その前回をさらに超えていこうと意気込んでリリース後すぐに制作を始め、2022年の春先には何曲かは完成していました。今作の大きいトピックとしては、BRAHMANのTOSHI-LOWさんにも参加してもらいまして。
━━コラボの経緯はどういうものだったんですか?
去年の6月のZepp DiverCity公演で、TOSHI-LOWさんが遊びに来てくださったんです。それまでも織田(祐亮/tp)と藤田(淳之介/sax)のホーン・セクションが、ARABAKI ROCK FEST. 22でBRAHMANと共演させてもらったりとか、関係性があったりもして。そこからオファーをさせてもらいました。
━━前作で外部からプロデューサーを迎えたことが今作に影響を与えた部分はありますか?
はい。TRI4THは“踊れるジャズ”をずっと掲げていて、ライヴハウスで頭を振れるような、縦ノリの“踊れる”を意識してきたバンドなんですけど、前作でShingo Suzukiさんたちとやらせてもらったときに、もっとリラックスして聴ける、横ノリの“踊れる”曲たちが完成して。今回はそれをさらに広げようと考えて、「Delight」「Bloom」「Sculpture Garden」のようなミドル・テンポの心地よい曲ができました。
━━コロナ禍以降の3作目になりますが、前作、前々作から制作方法に変化はありましたか?
コロナ禍で最初に作った『Turn On The Light』(2020年)はリモートを併用して制作したんですけど、今回は日常が戻ってきたっていうことも感じながら、プリプロダクションは対面で時間をかけてじっくり行なうことができました。
━━TRI4THにとって、対面で集まることはやはり重要ですか?
そうですね。5人がいいって思わないとなかなか先に進まないですし、セッションしながら制作していくので対面で集まることは重要です。去年はライヴも充実していたので、ライヴとプリプロをずっとやっていた感じです。
━━作曲プロセスとしては、メンバーそれぞれがデモを持ってきて、それをみんなで広げていく形でしょうか?
はい。メイン・コンポーザーが作ったものに対して、“こっちのベース・リフのほうがいいんじゃないか?”とかを提案しながら進めます。曲の構成はみんなで考えますね。
━━今回、関谷さん作曲のものは?
「Sculpture Garden」です。僕はもともとエレキ・ベーシストで、アメリカ留学中に出会ったブラック・ミュージックがルーツなので、それを今一度TRI4THに昇華できないかなという試みでした。それこそミシェル・ンデゲオチェロとかディアンジェロがドンズバの世代なので。
━━「Bloom」「Sculpture Garden」はまさにディアンジェロ的な“よれ”のあるレイドバックしたリズムです。
そこは前作でShingo Suzukiさんたちがバンドに注入してくれたエッセンスだと思います。長くバンド活動をしていると“自分たちはこうでないといけない”という固定概念に縛られがちなんですけど、俺たちもやっていいんだって、いい意味でぶっ壊してくれたというか。
━━ベース的には、フィルターのかかった音作りが印象的です。ウッド・ベースでこの音色というのは新鮮でした。
もともとシンベっぽいニュアンスで曲のインスピレーションが降ってきたんです。でもTRI4THではずっとウッド・ベースだけでやってきたので、今回はウッドでどこまでシンベの音に持っていけるかにチャレンジしようと。
━━音作りにはどのような機材を使いましたか?
MU-TRONのMicro-Tron III(フィルター)と、アギュラーのOCTAMIZER(オクターバー)、Way HugeのPORK LOIN OVERDRIVE(オーバードライブ)をかけたと思います。それをラインでミックスさせて、マイクで収録したウッド・ベースの音とミックスしてもらいました。
━━ウッド・ベースでこういう音作りをするうえで参考にした音源などはありますか?
たぶん誰もやってないんじゃないですか? いたらぜひ教えてください(笑)。音作りに関していうと、渡辺省二郎さんという星野源さんとかスカパラとかをやっている絶対的に信頼を置いているエンジニアさんが今回も音を作ってくれたので、こだわりのベース・サウンドをいろんな人に聴いてもらいたいなと思います。
━━この曲で、ベースはリフを弾き続けるシンプルなアプローチです。ベーシストの書いた曲なのにベースが完全に支える側に回っているというのは興味深いです。
そこは触れていただけて嬉しいです。前のインタビューでも話したんですけど、自分はサッカーでいうとボランチでありたいと思っていて。守れるときはしっかり守り、隙があればシュートを入れにいくというスタンスでTRI4THをやっているので。この曲はまわりの音数が充分あるので、自分はひたすら土台でキープしようと思いました。
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