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INTERVIEW − 関谷友貴[TRI4TH]

  • Interview:Shutaro Tsujimoto
  • Photo(Live):Victor Nomoto

改めてJ・ディラのベース・ラインをコピーし直したりして。

━━「Bloom」のリズムはJ・ディラのビートを彷彿するものでした。

 まさにですね。少し話はそれるんですけど、去年、元エスカレーターズのZOOCOさんというシンガーのツアーに個人で帯同させていただいたんですけど、彼女は90年代にJ・ディラのプロデュースで曲をリリースしているんですよ。僕はもともとJ・ディラが好きだったんですけど、ツアーでその曲もやることになっていたので、去年は改めてJ・ディラのベース・ラインをコピーし直したりして。それもあって、「Bloom」や「Sculpture Garden」は、自分が20代前半にアメリカで触れたブラック・ミュージックの空気感を思い出しながら弾いたところがあると思います。

━━このようなレイドバックしたリズムを演奏するときに意識することはありますか?

 こういうリズムって、小節アタマの1拍目はしっかりオンで踏んで、そのあとの4拍のなかでちゃんとウネって、また次の1拍目はオンで戻ってくる構造になっていて。レコーディングではクリックありでしたけど、クリックがなくても同じことを、もちろんベースだけではなくドラムと一緒に同じパルスをキープするという意識があると、こういうビートは気持ちよくハマるような気がします。

━━ちなみに、関谷さんがアメリカにいた2000年〜2004年頃、こういうレイドバックしたビートが流行っている実感はありましたか?

 みんなこればっかりやってましたよ(笑)。一番カッコいいビートはコレ、みたいな。やっぱりディアンジェロの『Voodoo』(2000年)が出た直後とかだったので。ピノ・パラディーノのベースがどうなっているのか理解できなくて、研究しまくってました。

━━ピノ・パラディーノは、やはりフェイバリット・ベーシストですか?

 もう言わずもがなです。去年のビルボード公演も観に行って、本当にすごかったですね。あの人も進化し続けているなと、刺激をたくさんもらって帰りました。あとはやっぱりミシェル・ンデゲオチェロが大好きです。当時アメリカにいた頃は、ミシェルの追っかけばっかりしていました(笑)。

━━「Bloom」の話に戻ると、リフのヴィブラートなどウッド・ベースらしいアーティキュレーションが印象に残る演奏でした。

 あれはエレベじゃ出せないですよね。この曲のアンサンブルの仕組みを簡単に説明すると、ベースとドラムは4/4で進んでるんですけど、ピアノは6/8で進んでいて、そういうDJがリミックスとかで使うアイディアを生演奏で同時録音してみようという試みでした。そういうアイディアも、前作でKan Sanoくんにプロデュースしてもらった曲からの派生なんです。

━━なるほど。

 ちなみにKan Sanoくんと僕はバークリーの同級生で、ずっと一緒に飯を食ったりセッションをしていた仲で。それでおもしろいのが、当時彼にブラッド・メルドーのアルバムを教えてあげてめちゃくちゃ気に入ってたんですけど、そのブラッド・メルドーの曲からのアイディアを前作で彼がTRI4THに持ち込んでくれたんです。(20年経って)“やべ、返ってきた(笑)”みたいな。

━━少し話が戻ってしまいますけど、サンプリングでいうと「Sculpture Garden」のピアノもサンプラーで鳴らしたみたいなフレーズになっていますよね。

 まさにまさに。そういうリズム・セクションのリフは、ある日フワっと降ってきたんですよ。箱根の彫刻の森美術館に家族で遊びに行ったときだったんですけどね。彫刻を見ていたらフレーズが出てきてその場でボイスメモに録音して。そこで観た彫刻とリンクして、大きい黒人がのっそりのっそり歩いてるみたいなイメージが浮かんだんです。

━━タイトルの「Sculpture Garden」って、その体験から取ったものだったんですね。

 仮タイトルだったんですけど、そのまま採用されちゃいました(笑)。

━━このように音楽以外からインスピレーションを受けることは多いですか?

 大体曲のアイディアが生まれるときって、どこか旅行に行ったり、うまい飯を食ったりしたときっていう(笑)。なかなかコストがかかる作曲方法で……インスピレーションを受けて自分のなかでモチベーションがグンと上がると今回のようにパッと曲ができたりするんですけどね。

━━「Delight」はソウル/ファンクな香りがする曲ですね。ほかの曲に比べ、ドラムとマイクの距離が近く、キックのビート感が前面に出ている感じがしました。

 これ、音いいですよね。省二郎さんの腕だと思います。ベースのライン録音での音作りも、ドラムのチューニングとかも自分たちでやるんですけど、最終的には省二郎さんがセンスとテクニックで絶妙なマイキングをしてくださって。こういうブラック・ミュージックにはずっと憧れを持っているんですけど、やっぱり音色がカッコよくなると一気に本物感が増すなと感じました。

━━アレンジはどのように進めましたか?

 これはトランペットの織田が作曲者なんですけど、ロイ・ハーグローヴ(編注:ディアンジェロ『Voodoo』への参加や、RHファクターでの活動で知られるトランペッター)が本当に大好きで、その音楽性をTRI4THに落とし込もうというところでした。ベースは完璧に手グセで、4小節ぐらいのフレーズをみんなに聴かせながら決めてもらって。こういうジェームス・ジェマーソンみたいな流れるラインはエレベのときから得意なほうなので、それをウッドでやったイメージです。

━━ちなみにソウルやファンク系のベーシストでは、やはりジェマーソンからの影響が大きいですか?

 ジェマーソンと、ウィリー・ウィークスのふたりが大きいです。あとはちょっとズレるんですけど、ジェフ・ベックのアルバムとかで有名なフィル・チェン。彼も実はジェマーソン・フリークで、ロスにいた頃彼にベースを習っていたんです。ソウルやファンクは、彼から本当にいろいろと教えてもらったので、僕の心の師匠です。

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