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INTERVIEW – 原昌和 [the band apart]

  • Photo:Kanade Nishikata
  • Interview:Tomoya Zama

選択肢が少ないところにある自由を感じる人間なので。

左から、川崎亘一(g)、原昌和、木暮栄一(d,cho)、荒井岳史(vo,g)。

――「酩酊花火」もファンキーなベース・リフで曲をリードしていますね。

 あれに関してもギターで作ったんです。本来はあの感じをギターだけで全部弾けるようなものにしていたんですけど、それを川崎と分けたっていう。分けたときにベース・ラインがこうなったって感じです。

――Aメロでは低い音域を中心にベース・リフが展開されて、サビになると音域が中音域にシフトします。ここでは、まさに酔っているような浮遊感を感じました。

 そうですね。なんかドープな感じというか。なぜタイトルが「酩酊花火」になったのかというと、食べると酩酊状態になるというある珍品を友達が持ってきたときの思い出のアーカイブとしてなんです。ほかにも歌詞にエレベーターとかも出ているんですけど、それは友人が働いているところでエレベーターの鍵がなくなって大問題になったっていうのを聞いて、それをアーカイブ化するためなんですよ(笑)。だからエレベーターの音を録音して曲中に入れているっていう。これもやっぱりその期間中のインプットというか、そういう刺激があったから書けたんですよね。

――ここからは、原さん以外のメンバーが作曲したものについて聞いていきます。「The Ninja」のベースはAメロの細かいプルを入れたハネる感じや、1番と2番で荒井(岳史/vo,g)さんのギターとベースの刻みの役割が変化するアレンジなどが印象的です。

 あれは(木暮)栄一(d,cho)がもう打ち込みでかなり作ってきたので、その音を人力でやった感じです。たまによくわからないところがあったりすると、実際に弾いてみて本人とすり合わせをするんですけど、この曲ではそういった確認がありましたね。

――同じく木暮さん作曲の「アイスピック」は歌メロやコーラス・ワークが伸びやかで美しいですが、ベース・サウンド的にはどっしりとした歪んだ音作りになっています。音作りについては作曲者と話し合いなどがあったのでしょうか?

 前はそうだったんですけど、オレンジのベース・アンプってあの音しか基本出ないんすよ。歪みの量の調整とかもあるんですけど、基本あの音。僕は、アンプやオーディオだったら、ツマミが多くて“自分好みの音に調整できます”って商品は好きではないんです。細かく調整したいっていうマルチな人とか、機械好きな人はいると思うんですけど、僕にはそれは必要ない。“これはこういうものです”、“こういう使い方をしてください”って全面的にアンプが言ってくれているほうがいいし、旨みの少なさに惚れて買っているんです。僕は選択肢が多いことに需要を感じる人間じゃなくて、選択肢が少ないところにある自由を感じる人間なので。思いっきり弾いたら歪むし、歪まない弾き方もある。それだけでいいかなっていう。

アンプ・ヘッドはORANGE製のAD200MKIII。ライヴ、レコーディングともに本機を使用している。DIはRUPERT NEVE DESIGNS製RNDIだ。

――「SAQAVA」は比較的にポップな仕上がりでベース・ラインもなめらかですよね。

 荒井から“自由に弾いてほしい”と言われた曲です。こういう“動かしてる”っていう感じのベースの発想はギタリストからは出てこないんじゃないかなっていうものですよね。荒井を尊重したいので、“僕はこういうのがいいと思う”っていうのをゴリ押しするんじゃなくて、“こういうのはどう?”って聞くようにして、自分の意見というより荒井が満足するように弾いてますね。

――なるほど。「bruises」はゆったりとしたベース・リフで展開されている曲ですが、作曲者の川崎さんとはどういうやり取りがあったんでしょう?

 あれはレコーディングのときにエンジニアの速水(直樹)と川崎がいて、僕が“こんな感じ?”って弾いたのに対して意見をもらいながら録ったもので、ほぼインプロヴィゼーションです。 “あぁそんな感じ、いいね”とかっていうのを頼りに弾いていますかね。

――あらかじめベース・ラインを作って提案する形もあれば、インプロで弾いて制作する形もあると。

 そうですね。

――the band apartといえば原さんのコーラス・ワークも魅力のひとつだと思うのですが、そこはやはり作曲者の意向で入れるかを判断しているのでしょうか?

 コーラスのラインが複雑じゃない場合は、とりあえず単純に順当なコーラスを足しといてっていう会話をしますね。そのあと、押し引きするっていうこともあります。

――なるほど。デモにはコーラスが入っているけれどベース・ラインとの両立難しいときなどは、ライヴでの再現性も含めてなにか作曲者とのすり合わせはあるのでしょうか?

 基本的にライヴと録音は別のものだと思っていて、ライヴでは別に崩してもいい。CDとかっていうのはひとりで聴くものなので、そのときに心地いいほうを取ります。そこに近づけるためにライヴに対しての練習をする。

――その曲として納得のいくほうを取ると。

 そうですね。ただ、“ここに別にわざわざ乗せなくてもいいんじゃない?”とかはお互い言い合います。でも“こうしたほうがいいよ!”みたいに衝突するようなことは一切ないですね。結局、作曲主っていうのに権利があって、それに近づけることが幸せなんで。

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