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HHMM用のエフェクト・ボード。歪みのほか、ベース・シンセやオクターバー、リヴァーブ、フェイザーと多種多様なペダルがラインナップしている。上段右端のプロビデンス製BRICK DRIVE BDI-1HH “極”(プリアンプ )は常時オンの状態で使用され、音作りの中核を担う。中段左から2番目のデジテック製WHAMMY5(ワーミー・ペダル)は本来ギター用だが、HHMMでは上の帯域を出すために、あえてこのモデルを採用しているとのこと(ベース用の“BASS WHAMMY”はストレイテナーやNCISのボードで使用している)。下段左端のSOURCE AUDIO製SA223(エンヴェロープ・フィルター)は飛び道具ではあるが、日によってはワン・ステージの半分くらいをかけっぱなしで使用することもあるようだ。ひなっち はこのボードについて、“サンダーキャットとかが使用するエフェクターを調べあげて、自分で気になるペダルを購入していった”と語る。

――ひなっちさんの音作りに関しても聞かせてください。全篇通して、持ち味でもある多数のエフェクターを駆使したエフェクティブなサウンドが楽しめる一枚でもありますが、ひなっちさんはHHMMではどのような考え方で音作りをしているのでしょうか?

日向:まずフィルター系は多いよね。HHMMだとフィルター系を使うのがもう楽しくて仕方ないんですよ。

松下:“この前一瞬だけ出したあの音、また使ってよ”って俺がオーダーしちゃうこともありますよ。この前のセッションでもベース・シンセの音がすごく良くて、ワンショウのなかで20分ぐらいシンセだけでやってたしね。

日向:そうそう、もうウワモノとしてね。完全にベースの役割じゃないんだけど(笑)。逆にマサナオが鍵盤でベース・パターンを出したりするときだと、俺はギタリストみたいにずっとソロを取ってたりもしますから。

松下:個人的に、ディストーションをかけたベース音がすごく好きなんですよ。だからそういう音を鳴らしてくれるとアガるんですよね。

日向:ぶっちゃけHHMMだと、テナーとかナッシングスのときよりも歪んでるかも。ギター・ソロを弾いているような歪みというか、ファズを使うことも多いですね。

――エフェクティブなベース・サウンドが飛び道具的に唐突に繰り出されると思いますが、その際ドラマーとしてはどんな気分なのでしょうか(笑)?

松下:もう何でも全然OK! たまに音色が俺が行きたい方向じゃないときもあるけど、そういうときは俺も無理に付いていかない。それが唯一即興的な側面かもしれない。お互いにフォローし合わないっていうのが逆に安心感になるというか、5年前の3月に初めて町田ノイズでやって以来、コロナのとき以外は毎月セッションをやってますけど、感覚的に合わないなって思ったことは一度もないからね。ビートが裏返しになったりすることもあるけど、それは俺らが飲みすぎてるだけだし(笑)。

日向:ははは(笑)。それはそれで聴いてくれている人は楽しんでくれているからね。

松下:どっちかが唐突にスピードを変化させたとしても、どこかで合わせることが俺らにはできる。間違いか間違いじゃないかが曖昧な部分ではあるけど、ふたりだからこそコード進行も自由にできますからね。

――さて、昨今“セッション”というものがより身近になって、ある種ブームになっているようにも思っています。おふたりのようなセッションができるようになるために、大事な考え方を教えてもらえますか?

日向:まずはバックボーンが定まってないとできないかな。しっかりしたスタイルを確立させてないとグラグラになっちゃうからね。

松下:そうだね。“自分はこういう者です”って名刺も必要だし、俺らで言えばお客さんのサポートもすごく大きいと思ってるんです。だから俺らもほかで見られないものをみんなに提供したいし、絶対に適当なことはできないと思ってやっています。

日向:まぁ、あとはとにかくいい相方を探すことだよな。

松下:その出会いをどれだけ求めているか、そしてそのラッキーをどれだけキャッチできるか、かな。

日向:セッションってアカデミックじゃなくてもできるし、もちろん最低限の知識は必要かもしれないけど、知らなくてもセッションは成立するんですよ。だから8ビートしか叩けないドラマーだってパートナー次第でどこまでもおもしろくなると思うんです。

松下:うん、だからこそパートナー次第なんだよね。

日向:せっかくのセッションなんだから楽しくやりなさいよって思う。マサナオはたまにヘコんじゃうけど(笑)。

松下:何か今日は違うんだよな〜って。大体飲みすぎてるときだね(笑)。

――最後に、HHMMにおける今後の展望を教えてください。

日向:まずはやっぱりフェスですね。

松下:野外フェスとかで俺らがセッション枠として常駐して、その日出てるたくさんのミュージシャンと合わせるっていうのをやりたいんですよ。海外だとそういう文化はありますけど、まだ日本にはないので。あと次回はヒップホップ・アルバムを作りたいかな。ラッパーをフィーチャーして、同じくライヴ録りしたものをミチくんにアレンジしてもらうものをやりたいですね。まぁでも、とにかくHHMMを続けていくことに俺は何よりも重きを置いていますよ。

日向:そうだね。引き続き音源は出していきたいよね。

松下:読んでくれているみんなに言いたいこととしては、信頼できるパートナーを見つけたら、物怖じしないでいろいろなところで腕試ししてほしいなと思います。

日向:むしろ腕を上げて、俺たちのところに来てほしい。

松下:そういうガッツがあるかどうかはめちゃくちゃ求められる部分だよね。家でパソコンの前で曲を作ることと並行してやるべき。

日向:いろいろなことを理解してないとできないし、形にもならないけど、どんどんチャレンジしてきてほしいですね。

松下:実際すでに挑んできてるヤツらもいるから、今後盛り上がっていくのが楽しみですね。

日向:そういうときは俺らマジでやるからね。楽屋ではあんな平和だったのに、みたいな(笑)。

Live at Blue Note Tokyo with Beautiful Friends Full Movie 6/28/2021(2nd set)

◎Profile
ひなた・ひでかず●1976年12月4日生まれ、東京都出身。2002年にART-SCHOOLでデビュー。その後、ZAZEN BOYS、ストレイテナー、FULLARMOR、Nothing’s Carved In Stoneといった数多くのバンドのメンバーとして活躍する。また、米津玄師やTK from 凛として時雨、MIYAVIといったアーティストのスタジオ・ワークもこなす。愛称はひなっち。

まつした・まさなお●1983年2月24日生まれ、長野県飯田市出身。17歳でドラムを始める。大学卒業後に渡米し、ラルフ・ハンフリー、ジョー・ボーカロに師事。2年間武者修行をする。帰国後の2009年にインストゥルメンタル・バンド、Yasei Collectiveを結成。その他、数多くのアーティスト・サポートに加えGentle Forest Jazz Bandなど、多方面で活動を展開している。

◎Information 
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