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INTERVIEW- 鳴瀬喜博、IKUO、村田隆行[THE CHOPPERS REVOLUTION]
- Interview:Kengo Nakamura
時代を経たあとで、ベースの歴史に居続けたい。(村田)
━━「Pink Punk Funk 2022」は鳴瀬さんのソロ作『BASSQUAKE』(1983年発表)の収録曲で、ライヴでもやっている曲ですね。ベースのソロ回しの部分は、バッキングのベースもキーボードもなしで、ドラムとベース・ソロだけという展開ですね。
村田 これねぇ……あのセクションって、実はソロじゃなくて、あのブルースみたいなコード・チェンジで、おのおのの“バッキング”を表現するっていうのが、鳴瀬さんのコンセプトだったんです。実は10年やってきて、去年か一昨年に、IKUO先輩は初めてそのことに気づいたんですよ。
IKUO そう、バッキングだったんですよ……。
村田 でも、IKUOさんは8年くらい、あそこはソロだと思っていた。
鳴瀬 ははは(笑)。そう、だから最初の頃から、“IKUOってすげぇな、バッキングでも速弾きなんだな”ってな(笑)。
IKUO そんなバッキング、ないだろって……。
村田 それで何かのときに、“IKUOさん、今さらなんですけど、ここってバッキングなんですよ”って言ったら、“え、そうなの!?”って。
IKUO 完全にソロだと思ってましたね。だから、今回もソロっぽい感じというか、微妙なところを狙いましたよね(笑)。
━━まさかそんな流れがあったとは(笑)。一方、ピアノ・ソロのバックは、それこそベースがひとりずつバッキングして入れ替わっていきますが、それぞれの色が出ていますよね?
村田 そうですね。僕はテクニック的にはナルチョさんチルドレンだと思うんで、素直にいくと、いわゆるファンクのベース・ラインをやるんですけど、やっぱりナルチョさんとは音圧というか厚みが違う。それで逆に音源に関しては、わざとミネアポリス系というか、ダウン/アップで攻める感じのファンクのバッキングを狙いました。
IKUO 僕はあえて、今っぽいパターンというか。YouTuberのベーシストとかがよくやるパターンというか、若々しいパターンを入れてみました。
鳴瀬 俺は、あえてラリー・グラハムの「Release Yourself」。実は、もともとあの曲はグラハムに捧げる曲だったのよ。
IKUO & 村田 そうなんですか!?
鳴瀬 そう。もともと「Hello Mr. LG」みたいなタイトルで作り出した曲でさ。でも作っていくうちに、あんまり言葉が出てこねぇなって思って、適当に“Pink Punk Funk”とか“Can you see me”とか、わかりやすい中学英語にしたって感じだったんだよ。それで今回、“ここでグラハムだな”と思ってやったんだ。そういう曲に、今、ふたりの解釈が入るとまたおもしろいし、作ってよかったなっていうか、今もやっていてよかったなと思ったよ。
━━限定盤には「Pink Punk Funk 2022」の別バージョンが収録されていますが、IKUOさんが10弦(複弦仕様の5弦)、村田さんが8弦(複弦仕様の4弦)を弾いているんですよね?
村田 そうなんです。これ、どう聴こえました?
━━IKUOさんと村田さんが、筋トレの重りをつけられているような感じと言いますか。
鳴瀬 ダハハハ!(笑)
IKUO そんな感じですよね(笑)。不自由な感じ。僕は昔、“アカッパチ”(編註:鳴瀬にとっての最初の8弦ベースで、シグネイチャー・モデルとして市販もされた)は所有していたこともあって、複弦のベースを弾いたことはあるんです。アレでも大変でしたけど、ローBの複弦は、師匠の言葉を借りるなら、さすがに“ないわ~”って。ダウン/アップもできないし、左手のゴーストも鳴らないし、僕の得意技が何もできない(笑)。でもなんとか1テイクでやったんですけどね。自分の技ができないままシンプルな形になっちゃいましたけど。
村田 いや~、一応言っておくと、アレはね、鳴瀬さんの自宅のスタンドに何の調整もされていない状態でかけてあったものを僕が見つけて、ろくに調整もしないまま電池だけ入れ替えて、“はい、弾いてください”って渡して録った1テイクのものですからね(笑)。ネックの状態とか弦高がどうかもおかまいなしに、なかば遊びでやったものなんです。それにしても、今回8弦を弾いてわかったのが、開放弦の処理が本当に難しいってこと。ナルチョさん、よくこんなの弾いているなって(笑)。
━━上岡まこと&ザ・チョッパーズアイレス名義でアルバムの最後に収録されている「追いかけて関東」は、村田さんがヴォーカルのムード歌謡という感じで、ベースは鳴瀬さんとIKUOさんが同時にバッキングを弾いています。そして限定盤では、鳴瀬さんだけのバージョンとIKUOさんだけのバージョンがそれぞれ聴けると。
村田 今回、ファンクがテーマで、言ってみれば“アメリカのファンク”をやっているわけなんですけど、最後に“日本のソウル・ダンス・ミュージック”をやろうと思って。だからふざけているわけじゃなくて本気で作っているんですよね。ナルチョさんの複弦のあのボトム感から曲を作って、そこにIKUOさんに絡んでもらうというときに、今作ではIKUOさんにローBの下のほうを弾いてもらっていることが多くて、この曲でも鳴瀬さんの邪魔にならないところで、ボトムでIKUOさんの存在感を出してもらいたいっていうことで、ふたりにお願いしたんです。
━━個別で聴くと、ベースが変わることによっての楽曲全体のグルーヴの違いも感じられますし、合わさったものを聴くと、またそれらとは違った印象のアンサンブルになりますね。IKUOさんはローBのボトムはありつつ、鳴瀬さんのベースを挟んで上のほうでのパーカッションっぽい雰囲気もあって。
IKUO そうですね。わりとローBのルートはドンと鳴らしつつ、ダブル・プルとかもけっこう入れていたし。僕的なテーマはムード歌謡meetsマーク・キングで、「Lessons in Love」の感じでやりました。もともと村田くんのデモに“ドゥットゥク、ドゥットゥク”っていうピック弾きっぽいものが入っていて、そのリズムの感じが、これはマーク・キングだなと。けっこうテンポ的には限界なんですけどね。
村田 だからあの曲は、日本のラリー・グラハムと日本のマーク・キングを挟み込んだ曲なんですよね。決してふざけているわけではないんですよ(笑)。
━━さて、10周年を経ての今後の展望は?
IKUO チョパレボはルールがないし、誰かがアイディアを出したら、“いいね! やろうやろう!”っていうスタンスなので、堅苦しい感じの“トリプル・ベース”ではないんですよね。ベーシストしか聴かないようなイメージのものではないし、もっとエンターテインメントなバンドとして、何かをやってくれそうな存在として見てもらえるといいのかな。今後もおもしろいことをやっていきたいですね。
鳴瀬 今回の曲もライヴでやると、いろんなことを発見しそうだしな。
村田 そうですね。ライヴもストイックな感じで“トリプル・ベース”をやるのではなくて、プロデューサー感覚のあるクリエイター3人が集まって、ふざけたところやカッコいいところから泣かせるところまで、全部エンターテインメントにするっていうところで10年やってきていますから。3人のキャラクターがちゃんと出たものになっていると思うし、今回のアルバムでは、それを音にも詰め込められたと思います。次への挑戦も感じてもらえるだろうし。やっぱり、時代を経たあとで、ベースの歴史に居続けたいと思うんですよ。“トリプル・ベースのユニットでこんなのがいた”って。それぐらいのことをやっている自負はありますからね。
◎NEWS◎
昨年、錚々たるベーシストたちが集い話題を呼んだライヴ、“チョパレボ & Bass Friends”! 今年もBass Day Special Monthとして、11月21日(月)にビルボードライブ東京での開催が決定!
チョパレボ & Bass Friends Vol,2
●日時:2022年11月21日(月)
●会場:ビルボードライブ東京
●出演:
・THE CHOPPERS REVOLUTION
鳴瀬喜博(b&vo)
IKUO(b&vo)
村田隆行(b&vo)
・サポート・ミュージシャン
坂東慧(d)
川口千里(d)
白井アキト(k)
and…
Super Bassist(後日発表)
◎Live Imformation
チョパレボ『FAN×K』ツアー九州編
〜ナルチョロス・ナイト〜
チョパレボ&I.T.R夢の共演2022
10月27日(木) 熊本ぺいあの
10月28日(金) 福岡INSA
▼メンバー
IKUO(b&vo)
村田隆行(b&vo)
坂東慧(d)、ほか
※鳴瀬喜博は今回は参加いたしません。
※詳細はチョパレボ、各メンバーのホームページでチェックしてください。
▼昨年の“チョパレボ & Bass Friends”のレポートはこちら!▼