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INTERVIEW – ローラ・バランス[スーパーチャンク]

  • Question:Koji Kano
  • Translation:Tommy Morley
  • Artist Photo(group): Brett Vilsna

確実にいえるのは家族みたいな存在ということね。

――弊誌2022年2月号では表紙にキム・ゴードンを迎え、1990年代のUSオルタナを特集しています。30年経った現在でも当時のシーンが語り継がれることについてどう感じますか?

 本当に良い音楽だったから、消えてしまわなかったのはよくわかるわ。もちろん、今ちょっとしたトレンドがあって90年代の音楽に興味を持っている人たちがいるというのも肌で感じているの。それに大昔の音楽と違って私たちは今でも生きているから(笑)、音楽を新たに提供し続けているしね。ザ・ブリーダーズだって数年前にリリースしたでしょう? 残念ながらカート(コバーン)は亡くなってしまったけど『Nevermind』みたいなアルバムが消え去ることはないでしょう。レッド・ツェッペリンのアルバムのようにこれからもずっとキッズが通らなくてはならない作品なわけで、ニュートラル・ミルク・ホテルの『In the Aeroplane Over the Sea』だって忘れてはならない90年代のアルバムよ。あの時代はロックの素晴らしいアルバムが本当にたくさん作られていたと思うわ。

――ともに一時代を築いたキム・ゴードンとは接点はありましたか? あれば思い出などを教えてください。

 私たちはそんなに親密な関係ではなかったけど、ソニック・ユースとスーパーチャンクを同じブッキング・エージェントが担当していたことがあって、一緒に彼らとプレイしたことがあったわ。私も彼女もシャイだったし、そもそも私はベースをプレイし始めるよりはるか前から彼女に憧れていたから、どこか恐れ多くて近付きがたいようなところを私自身が感じてしまっていたの(笑)。もはや崇拝していたくらいの感じだったけど(笑)、のちに彼女と実際に話をしてみて全然怖い人でもなかったしとてもナイスな人だった。それでもやっぱり彼女の前に立つと、どうしても緊張しちゃって普段どおりに接することができなかったわね。

――90年代当時、多くのバンドがメジャー・レーベルに行くなか、スーパーチャンクは現在に至るまで主宰レーベルであるマージ・レコードでのDIYなインディー活動を続けてきました。その背景にある思惑などを教えてください。

 マタドールからフル・アルバムをリリースしたけれど、契約が終わってからは自分たちでリリースをするようになったの。マタドールでの様子を見て自分たちでもやれないほど難しいことではないと気づいたのよ。そしてメジャー契約を勝ち取っていったバンドたちの多くを見ていて感じたのは、彼らはアドバンスといった形でお金を貰えたけれども、ニルヴァーナくらいに稼ぐようなアルバムを作れなければ、レコード会社としてはそのアドバンスを回収することはできなかったということ。そうなると結局はメジャーから打ち切られてしまって、もはや葬り去られてしまった。メジャーに行って打ち切られてから成功するようなバンドってほぼ皆無に等しくて、その例外的な存在はマージ・レコードで扱ったスプーンくらいだと思う。

――自分たちの実力を客観的に見たと。

 私たち自身、自分たちにそういったポテンシャルがあると思わなかったし、ニルヴァーナみたいなバンドがそもそも生まれてくることはないだろうと感じていたからね。自分たちみたいなバンドを知っているとメジャーに属する意味を感じることはなかったし、使い捨てのバンドになりたいとは思えなかった。自分たちでやっていったほうがより良い未来が思い描けたということね。

――スーパーチャンクは結成から33年を迎えますが、改めてあなたにとってスーパーチャンクとはどんな存在ですか?

 確実に言えるのは家族みたいな存在だということね。私の人生で彼ら以上に時間をともに過ごしてきた人はほかにいないし、移動車やスタジオのなかで過ごしてきた時間は計り知れない。これは家族や結婚とは違うけれども、かなり特別な関係よね。ライヴをプレイしなくなって残念に思うことは、彼らと昔のようにともに時間を費やさなくなったことね。もちろんときには彼らと一緒にいてストレスを感じたり、それは酷い時間もあったけど、笑い合って過ごした時間もたくさんあった。長い間何かをともに歩み続けるためには適切な人に出会わなければならないし、そこには互いに忍耐し続けることもあるでしょう。それは簡単なことではないし、やり続けられるのは本当に稀なことでしょうね。

――最後に日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

 耳を守ってあげてね。誰しもふたつしか持っていないし、バックアップはないのよ(笑)。健康でいてほしいし、地球温暖化とか社会全体のことにも目を向けて個人が負うべき責任を考えて行動してみてほしい。今の時代、それが一番大切なことだと思うの。

◎Profile
ろーら・ばらんす●1968年2月22日生まれ。1989年にアメリカ・ノースカロライナ州チャペルヒルにて結成されたスーパーチャンクのベーシストで1990年にアルバム『SUPERCHUNK』でデビュー。以降USオルタナティブ・ロック・シーンを牽引し続け、現在でも精力的に楽曲のリリースを展開している。またバンド・メンバーであるマック・マコーン(g,vo)とともにインディー・レーベル“マージ・レコード”も運営している。2022年2月25日に約4年ぶりとなる12thアルバム『Wild Loneliness』をリリースした。

◎Information
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