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INTERVIEW – YU-KI [NOISEMAKER]

  • Interview:Koji Kano

ロックの変革を予感させる
シンベ/エレベのコントラスト

2000年代ラウド・ミュージックを独自のフィルターで昇華した唯一無二のサウンドで、国内外問わず支持を集める4人組、NOISEMAKER。結成以降、精力的なリリースを展開し続ける彼らの最新作、EP『AXIS』での新たなサウンド・アプローチは、彼らの目指す次なる到達地点とその野心を確かに示している。バンドにおける最善なアプローチを忠実に追い求める生粋のベースマンYU-KIは、その太く、鋭い重低音でバンド・アンサンブルの中核を担っている。シーンを牽引する重要バンドへと成長を遂げた彼らの現在地と、そこに込められたベース・サウンドの正体を、本誌初登場であるYU-KIに聞いた。

“ロック・シーンを更新してやろう”みたいな野心は
俺らのなかにずっと満ち溢れている。

――ベース・マガジン初登場ということで、バイオグラフィから聞かせてください。ベースはどんなきっかけで弾き始めたんですか?

 小学生のときに親父がどっかからエレキ・ギターをもらってきて、それに兄貴が興味を持ったんですよ。でも速攻で飽きたみたいで、俺が拝借する形でまずギターを始めました。それでLUNA SEAを一生懸命耳コピしてたんですけど、俺がコピーしてたのはギターじゃなくてベース・ラインだったんです(笑)。そこからベースに興味を持つようになって、本格的にベースを始めました。たしか小6くらいですね。

――当時はどんなバンドに影響を受けていたんですか?

 始めた頃にハマってたのはLUNA SEA、BLANKEY JET CITY、Hi-STANDARDでしたね。俺の地元は北海道の田舎で閉鎖された空間だったので、流行ってる音楽とかもわからなかったし、先輩とか学校の先生がお薦めしてくれたものをひたすら聴いていた感じですね。高校卒業後に札幌にある音楽の専門学校に入るんですけど、一個上の先輩にAG(vo)がいて、そこでNOISEMAKERのメンバーに出会ったんですよ。

――なるほど。NOISEMAKERはもともとどんな音楽性を目指したバンドなんですか?

 俺らはどっかのカテゴリーに入れられることはあまり好きではないんですけど、やっている音楽は今でも結成当初からの延長線上にある感覚はあります。俺は結成時のメンバーではなくて、最初はお客さんという立場で出会ってるんですけど、そのときの印象のまま今も来ています。もちろん進化はしてますけどね。

――参考にしているバンドやサウンド感はどういったものでしょう?

 具体的に言えばリンキン・パークやリンプ・ビズキット、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとかの2000年代のヘヴィ・ロックやミクスチャー・バンドの音に影響を受けてますね。

――YU-KIさんもそういったヘヴィ・ロックを聴いていたんですか?

 専門学校に入ってから聴き始めました。音を聴いて、気に入って、どういう人たちなのかを知った結果、ハマるっていう流れ。なかでもレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンは自分のなかで一番来るものがありました。NOISEMAKERも近い感じのサウンドではあるので、そういったニュアンスのベースをバンドに取り込もうとはしています。個人的にリンキン・パークのベースを聴いてベースを始めるヤツってあまりいないと思うんですけど、リンキン・パークにティム・コマーフォードみたいなベースがいたらめちゃくちゃカッコいいなって思うんです。だからNOISEMAKERでもそういったマインドのベースを弾きたいなと思って参加しています。

左から、YU-KI、AG(vo)、HIDE(g)、UTA(d)。
『AXIS』
バップ/VPCC-80704

――ベース・ラインの作り方を教えてください。

 以前は自分の弾きたいフレーズを弾きたいという思いがすごく強かったんですけど、意見がぶつかったりするうちに考えも変わってきて。例えば曲を一本の映画作品に例えて自分がそれに出ている役者だとすると、自分がこう演じたいっていう思想をそのまま表現してしまうと、監督の頭にあるものと作品の印象が変わっちゃう場合もありますよね。だから作曲者の意図や考えをすごく意識するようになりました。今現在のベース・ラインのハメ方としては、HIDE(g)がデモを作ってくれるので、そこに対して自分のフレーズとかアプローチを共有しつつ、全体像を完成させていくって感じですね。

――HIDEさんの作るデモ音源はどの程度作り込まれたものなんですか?

 かなりレベルの高いデモで、“もうこのままでいいんじゃない?”って思うときもあります(笑)。HIDEはあくまでもトータルのバランスとして楽曲を見ているけど、俺はやっぱりベーシストだしこだわりも強い性格なので、そこでのせめぎ合いはやっぱりありますよ。NOISEMAKERは同期音もガンガン鳴っているので、ベースのフレーズを凝っても全体で聴くとマスキングされているなって思うことも結構あるので、あくまでも全体としていいバランスになることを最優先にしています。

――新作『AXIS』はこれまでのNOISEMAKERのイメージにはなかった新たなアプローチを感じました。シンセやトラップ系の同期音が主体となっていますが、バンドとして変化を提示するという思惑もあったのでしょうか?

 変化を見せたいっていう思いはそこまでないかな。さっきも言いましたけど、俺らはずっと結成してからの延長線上にいるので、なるべくして今の形になってるなって思うんです。“ロック・シーンを更新してやろう”みたいな野心は俺らのなかにずっと満ち溢れてて、その現在地が今作であって、あくまでもこれが今の俺らの形なんです。

――昨今のUSポップスやダンス・ビートといったサウンドが積極的に取り入れられている印象です。

 そうですね。普段聴いている音楽はどんどんそっち寄りになっていくけど、寄せすぎてもバンドじゃなくなっちゃうし、みたいなバランス感と良い落としどころを追求してでき上がった作品だと思います。

――では今作に込めた思いとは?

 さっきも言った“ロック・シーンを更新してやる”という気持ちがまずありつつ、“AXIS”は和訳すると“軸”という意味になるので、今のロック・シーンの軸になるようなアルバムにしたいし、リスナーの人たちにこのアルバムを軸に音楽ライフを過ごしていってもらいたいっていう思いも込められています。

――ベース的にはシンベとエレベのコントラストも聴きどころのひとつだと思います。

 そうですね。基本的にはシンベとエレベの両方が鳴っています。俺らとしてはシンベはエレベで出せないスーパー・ローの部分を補うっていう狙いがあるんですよ。まぁベーシスト泣かせではありますよね(笑)。

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