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INTERVIEW – HISAYO[a flood of circle]

  • Interview:Zine Hagihara

ベストなノイズを作るためいろいろ試したので、
どれを使ったのかわからなくなっちゃいました。

━━「2020 Blues」は、4コードの循環になっていると思うんですが、部分的に経過音を入れたりメロディを差し込んだりしていて、これもアンサンブルのバランスを取った絶妙なアプローチですよね。

 そうですね、でもこれは難しかったです。音を抜いていったプレイではあるんですけど、やろうと思えばもっと弾くアプローチもできたと思うんですよ。でも、曲としてなんかカッコよくならなかったんですよね。短い曲だし、あっという間に終わるので、曲を聴いたときの印象をひとつに絞ったほうがいいなと思って。佐々木のなかでも(その次の)「Beast Mode」を聴かせるための曲っていうイメージがありましたし、それならばベースは“一筆書き”でいこう、と。基本的にフレーズのループを弾いて、サウンドも「Beast Mode」と同じくこだわりの歪みサウンドでガーっと攻めて、強めにピッキングしてアグレッシブな音色を聴かせるようなプレイになりました。だから、一番簡単な演奏です(笑)。

━━「Beast Mode」ではギター・リフとユニゾンしていたかと思えば、その直後には歌メロとユニゾンしていたりしていますが、楽曲を華やかにするアプローチとして遊びが効いていますね。

 そういった部分はわりと佐々木のアイディアで、デモにすでに入っていたフレーズなんです。位置やニュアンスは調整しましたけどね。私は全体の音数を整えて、シンプルなところはシンプルにしてバランスを取っていきました。そのなかで、サビはもう少しだけメロディアスになるようにルートとルートのつなぎ目にメロディを入れて華やかに聴こえるように意識しています。

━━「2020 Blues」と「Beast Mode」、「ヴァイタル・サインズ」などは歪んだサウンドが印象的でありながら微妙にキャラクターが違っていて、同じ歪みサウンドでもそれぞれのこだわりを感じました。

 まず、基本的なベース・サウンドは(テック21製)サンズアンプ(ベース・ドライバーDI/プリアンプ)を使って作っています。「2020 Blues」、「Beast Mode」はアースクエイカー・デバイセスのパリセイズ(オーバードライブ)が大活躍でしたね。もう無敵の歪みペダルって感じでお気に入りなんです。「ヴァイタル・サインズ」も似たイメージで最初は作っていたんですけどどうもハマらなくて、結局いつもの歪みと同じように(ボス製)ODB-3(ベース・オーバードライブ)で作ったんですよね。

━━「ヴァイタル・サインズ」のイントロのノイズもかなり印象的ですが、これはどのように作ったサウンドですか?

 その部分だけはどうやって作ったのかは忘れちゃいました(笑)。あのノイズの部分だけは実は別録りなんですよ。ベストなノイズを作るためにサンズアンプ、パリセイズ、ODB-3をいじってみたり、アンプをハウらせてみたり、いろんなパターンの歪みを作っていって。そのなかのひとつなのでどれなのかわからなくなっちゃいました。この曲だけクリックを使わずに録っているので、ノイズを込みで一発録りするとみんなで入れなくなっちゃうんです。だから、ノイズの部分だけはみんなが終わったあとに録りましたね。

━━録音時はアンプのマイキングとライン音はどれぐらいの割合でミックスするんですか?

 たぶんアンプの音を多めに生かしていることが多いと思います。でも、結果的にそうなっていることが多いですかね。スピーカーが揺れている感じまで録れているのはa flood of circleのロック・サウンドにはちょうどいいんです。あと、自分が普段から聴いている音でもあるので、それをそのまま使ってほしいところもあります。録音するときのモニターにライン音を混ぜていただくことがあるんですけど、“すみません、アンプの音のみで……!”とお願いして(笑)。弾くときは自分のアンプの音を聴いていたいですね。

昨年の秋頃から使用しているヤマハ製BB434。ボディに対して垂直に差し込んだ4本のネジに加えて、45度の角度でネック・エンドからもネジを差し込んだマイター・ボルティングにより豊かなサステインを実現する。“骨太でガツンとパワーがある”というメイン器の同社製BB2024に対して、ミドルに特徴のあるふくよかな低音感が持ち味。「天使の歌が聴こえる」、「人工衛星のブルース」の2曲で使用され、それ以外の楽曲ではメイン器が使用された。

━━新作アルバムについて話を聞いていきましたが、改めてどのような作品になったと思いますか?

 このアルバム、よくできたなと思います、“あっぱれ!”っていう感じ(笑)。作っていったらこうなったというものではなく、“こういうのが作りたい!”と思って作業していったので達成感がありますね。“圧倒的なロックンロール・アルバム”というキーワードを有言実行できたところが良かったです。

━━では最後に、今後の展望は?

 そうですね、ベーシストとしてすごいプレイヤーになりたいという思いもあるんですけど、もっと広い視点で、ミュージシャンとして自分の可能性を広げたいなと思っています。自分の枠を決めずに活動できたらなと考えていますね。ミュージシャンとしての成長がベーシストとしての幅広さにもつながると思いますし。

◎Profile
ひさよ●10月23日生まれ。2000年にニューウェイヴ・ガールズ・バンド、tokyo pinsalocksを結成。その後、GHEEEや近藤智洋&ザ・バンディッツ・リベレーションなどさまざまなバンドに参加する。2006年に東京都でa flood of circleが結成され、2010年に前任ベーシストと入れ替わりでHISAYOが正式に加入。その後、メンバーの脱退を経ながらも精力的に活動する。a flood of circleは2019年の『CENTER OF THE EARTH』までに9作のフル・アルバムなどをリリース。2020年10月21日には10作目のフル・アルバム『2020』を発表した。

◎Information
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