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  • NOTES

    関係者が語る渡辺直樹 – 01

    船山基紀の証言

    ポップでど真ん中のベーシストだから、
    右にも左にも振れられる

     僕はアレンジする段階で、ミュージシャンを頭に置いてアレンジする。ピアノは誰でギターが誰でベースが誰って、アーティストや音楽に合わせてね。なぜなら、たとえばファンキーなものが得意じゃない人にファンキーなものを頼んじゃうと「もっとファンキーにプレイして」って指示しても無理なんです。それで、この人だったらこういうことをやってくれるだろうって予測してアレンジするわけです。それが僕の場合は、90%以上は間違いなくてね。

     それと僕は、相性がいいとプレイヤーをあんまり変えないタイプなんです。だから一時期はAB’Sの(芳野)藤丸(g)とオカモッチ(岡本郭男/d)と直樹っていう組み合わせが多い時期がありました。あと直樹と長谷部徹(d)だったりとかも。直樹はわりといつも呼んでた記憶がありますね。

     ベースというパートに関しては、一番大事なのがドラマーとの相性ですね。ボトムを支える人たちなんで、ベース単体っていうより、ドラムとベースをセットで見てます。土台を構築して、そこから逸脱しないっていう意味でね。直樹とオカモッチをセットで起用するっていうのはそういうこと。特にこのふたりの場合は、すごいビートがはっきりしてて、グルーヴが同じなんで、やりやすかったし、その結果いい作品が多いと思うんです。だからこの組み合わせは僕は気に入ってますね。

    ふなやま・もとき○1951年生まれ、東京都出身。1974年にフリーの作編曲家としてデビューして以来3,000曲近くのアレンジを手がけ、日本を代表するアレンジャーのひとりとなる。耳を奪う斬新なイントロには定評があり、ヒット曲を量産した。沢田研二「勝手にしやがれ」では日本レコード大賞を受賞。1980年代は一時的に米国に拠点を移し、帰国後シンセと生演奏とをミックスさせた新たなスタイルを確立。C-C-BやWink、中山美穂、小泉今日子など、80年代アイドルの全盛期を音楽面であと押しした。手がけた楽曲を収録したCD4枚組の豪華ボックス・セット『船山基紀サウンド・ストーリー』(2020年)がリリースされている。
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     僕は、演歌から歌謡曲、ジャニーズみたいなポップスとかいろんなタイプのアレンジを引き受けてますけど、わりと同じ人たちでなんでもやってもらってた。それでみんな、それについてこれるっていうか、直樹をはじめオールマイティで、引き出しの多い人ばかりでしたね。そのなかでも直樹は、1周目はおとなしくやって、2周目でいろいろ繰り出すみたいなことを、いつもやってましたね。

     直樹ってね、どっちかっていうとポップなんですよ。ジャジィでもないし、ベタベタでもない。どちらかに片寄ってるってんじゃなくて、ど真ん中なんです。ど真ん中だから、どっちにも振れられるんです。右の人に左のことをやれって言っても無理だけど、直樹の場合はど真ん中だから、どっちにも振れられる。彼は正統派ベーシストだから、歌謡曲っぽいものでもダンサブルなものをやっても、どっちもいける。だから僕にとってはありがたいっていうか、なくてはならないベーシストなんですよ。

    関係者が語る渡辺直樹 – 02

    渡嘉敷祐一の証言

    直樹と一緒だったら、
    どんな現場に放り込まれても大丈夫!

     直樹は歳は下だけど、人生全般においては先輩だと思ってます。いろいろ教わったりするし、実はものすごくいろんなことを考えてる。将来のことも若い頃から考えてた。やっぱり10代で芸能界デビューしたからかな。芸能人って、そのとき売れてても、いつまでもそうじゃないってのがわかってるんでしょうね。先のことを考えて、計画を立ててやってる。それでも考えどおりにはいかないのが人生だけど、そんなときも、いち早く立て直せるやつなんです。

     頭のいい人。勉強ができるって意味じゃなくて、頭の切れるすごい人ですよ。生き方が賢い。まあ苦労もしてるんだろうし、嫌な思いもしてるんだろうけど、それでも常にしっかり進んでいく力があるっていうか、今も進んでる。

     いろんな一流ベーシストがいるけど、その人によって違う。いい悪いじゃなくて、それぞれの味だから。ひとりとして同じ人はいないから、だからおもしろいんですよ。そんななかでも直樹は、すごい上手。それでメロディアス。ベーシックなリズムの上にラインっていうか、ちょっとしたメロディアスなフレーズを、スッと入れてくるんです。彼はもともと自分が歌うからか、ベースのフレーズにも歌心が出るんだと思う。

     あとね、小曽根真(p)くんのライヴを、僕と直樹で何本かやったことがあったんです。ライヴだからソロとかがあるんですよ。そうすると直樹がね、なんとも言えない、いい感じのソロをやるんですよ。歌がうまいから、歌うベース・ソロって感じでした。モニター・スピーカーに座っちゃって、お客さんに聴かせるようなね。カッコよかったですよ。

    とがしき・ゆういち○今成進、小津昌彦両氏に師事し、高校在学中よりディスコ・バンドなどでプロ活動を開始。1976年、杉本喜代志グループに参加すると同時に、スタジオ・ミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせ、多様なジャンルのアーティストのレコーディング、コンサートに参加している。1977年にはザ・プレイヤーズに参加し、7枚のアルバムを発表。並行して、松木恒秀バンド、吉田美奈子バンド、松岡直也グループなどにも参加。その後、渡辺貞夫グループのワールド・ツアーへの参加のほか、ケイコ・リー、玉置浩二、徳永英明などヴォーカリストのサポートも多い。現在、自身のジャズ・セッションでも活動中。『渡嘉敷祐一コードレスナイト』(2020年)、『ジャズ研部長 渡嘉敷祐一』(2021年) というライヴ・アルバムもリリースしている。
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     直樹と一緒だったら、どんな現場に放り込まれても大丈夫だと思う。ドラマーの場合、曲によっては雰囲気に合わせてプレイできる場合もあるけど、ベーシストは、絶対に間違えられないじゃないですか。ドラムはごまかしがきいても、ベースは間違えたらすぐわかる。でも直樹は間違えないですから、ちゃんとした譜面さえあればね。たまに間違える人もいるんですよ、誰とは言わないけど(笑)。

     レコーディングで直樹はね、一番先に帰っていく。可愛くないですよね(笑)。気がつくといないですから。ギリギリに来て、サッと帰っていくという。それが直樹の特徴です。人によっては1時間前から来て、なんかやってたりする人もいるけど、直樹はギリギリに来る。こっちはドラムだから、セッティングやチューニングがあるでしょ? だから1時間前にはドラムを搬入するし、早くからいるからわかるんですよ。それで開始時間が迫ってきて、直前になってもまだベースが来てないときとかは“ああ、この時間で来てないってことは、今日のベースは直樹だな”ってわかるという(笑)。

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