プランのご案内
  • NOTES

    UP

    【第52回】初級者こそテンポが速い曲を練習するべし/石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜

    • Text:Jun Ishimura

    ビギナーとか初級レベルの人で“速い曲は難しそう、もっと上手くなってからやろう”と思ってる人もいるかもしれませんが、実は初級者こそ速いテンポの曲を練習するといいんです。

    ①テンポが遅い曲はリズム・キープが難しい

    テンポが遅めの曲って簡単そうに思えますよね。実際、フィジカル面ではあまり難しくないかもしれません。でも実は、テンポが遅ければ遅いほど正確にリズム・キープしたりグルーヴを出すのは難しいんです。ごまかしが効かないというか、演奏のアラも目立ちます。
     
    逆に、テンポが速いと指を速く動かさなきゃいけないのでテクニック面では難しいとも言えるけど、実はリズム・キープという意味ではテンポが速い曲のほうが簡単なんです。

    例えば、“4分音符を弾くのに必要な精度”を、テンポごとに見てみます。

    BPM=320みたいな相当速いテンポだと、1拍に入れられる音符の数は8分音符2個が限界です。3連符は入れられないくらい速いテンポですね。こういうテンポだと、“8分音符を2個入れられる長さの4分音符”を弾く、そういう精度が必要です。

    少しテンポを落とすと、1拍に3つ音符が入れられるようになります。“3連音符を3個入れられる4分音符”を弾くには、より高い精度が必要です。

    もう少しテンポを落とすと、1拍に16分音符が4つ入れられるテンポになります。“16分音符が4つ入れられる4分音符”を弾くには、さらに精度を高くする必要があります。

    もっと遅くなって、“6連音符6個分の長さの4分音符”を弾こうとすると、さらなる精度が必要です。

    こういう風に、テンポが遅くなればなるほど1拍に入れられる音符の数は増えていくので、より高い精度が必要で、リズム・キープしたりグルーヴを出すのが難しいんですね。リズム面で一番簡単なのは速いテンポの曲なんです。なので、初級レベルの人は速いテンポの曲から取り組んだほうがいいんですね。

    ②テンポが遅い曲は筋トレにならない

    初級レベルの人は、“演奏に必要な基礎体力”を身につける必要があります。でも、テンポが遅くて音数が少ない曲をいくら練習しても、一音一音を鳴らす瞬発力とか、長時間弾き続けるためのスタミナみたいな基礎体力はなかなか身につきません。逆に、“テンポが速い曲は筋トレになる”のでお勧めなんです。

    ただ、テンポが速ければなんでもいいわけではないんです。

    どんな練習にも当てはまる基本のルールがいくつかあります。効果的な練習をしたいなら、そのルールを守ってやったほうがいいです。そのひとつが、“シンプルなことから始めて、少しずつレベルを上げていく”というルールです。つまり、最初からいきなり複雑なことや難しいことに取り組むな、ってことですね。

    ということで、初心者が取り組むといいのは“テンポが速くてシンプルなフレーズ”です。特に、リズム面でシンプルなのが大事です。いろんな長さの音符や休符が入り混じったフレーズじゃないほうがいいですね。リズムが一番シンプルなのは、“休符がなくて、すべての音符が同じ長さのフレーズ”です。たとえば、BPM=300以上のジャズのウォーキング・ベースとか、BPM=150以上の8ビート8分弾きがいいですね。

    そして、練習のやり方にもこのルールを当てはめます。

    ポイントは、“最初は、指弾きなら1フィンガー、ピック弾きならダウンだけで練習する”ということです。2フィンガーより1フィンガー、オルタネイトよりダウンだけのほうがシンプルだからです。

    もうひとつのポイントは、“最初はゆっくりていねいに練習して、慣れたら少しずつテンポを上げる”ことです。完成形のテンポが速いからって、いきなりそのテンポで練習すると間違えたりドタバタしてしまうので、最初は“今の自分が間違えずに弾けるテンポ”から始めて、その“できている状態の演奏”を少しずつ速くしていくのがいいです。こうすることで、基礎体力もていねいさも身につきます。

    ということで、初級レベルの人は速いテンポの曲を練習しましょう! 石村順でした。

    石村順
    ◎Profile
    いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライヴや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。

    ◎Information
    HP Twitter facebook Instagram