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    Black Smoker TRAD MASTER SERIES × 高木祥太(BREIMEN)

    • Photo:Takashi Yashima

    GEAR CHECK by 高木祥太(BREIMEN

    ここからは“TRAD MASTER SERIES(TMS)”より、5弦仕様のPB/JBモデル、計4本の実力をプロ・ベーシストの試奏とともに検証していく。試奏を担当するのは、自身がベース・ヴォーカルを務める5人組ファンク・バンド、BREIMENをはじめ、TENDREやCharaといった第一線で活躍するアーティストのサポート・ワークもこなす高木祥太だ。多彩なプレイが魅力の若手ベーシストのホープの目に、Black Smokerはどのように映ったのだろうか。

    TMS BETA-P5C Old Green Metallic Light Aged

    “5弦PB”に革命を起こす、パッシヴの鳴り

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     まずはPBタイプからチェックしていこう。先述のとおり、TRAD MASTER SERIESにはエイジド加工のレベルに合わせ、“Light”“Medium”“Heavy”の3つのバリエーションが用意されており、グリーン・メタリックのマッチング・ヘッドが印象的な本器には“Light Aged”が採用されている。モダンなカラーリングとの組み合わせがクールな印象を抱かせる。

     本器はアルダー・ボディ、メイプル・ネック、ローズウッド指板という王道のウッド・マテリアルで構成されており、ネック・カラーは色焼けしたリアル・ヴィンテージ楽器さながらの、アメ色よりやや濃い色合いに仕上げられている。ピックアップは同社オリジナル製のPBタイプを一基マウントしており、そのサウンドは抜けが良く、ローB弦のニュアンスもクリアに再現してくれる。他ブランドも含めて、市場でもモデルの少ない“5弦PB”であり、さらにパッシヴで仕上げている点にこだわりを感じる。

     ネック・シェイプは一般的なPBタイプのものと比較すると、やや厚みの薄いCシェイプ形状に削られているため、JBタイプがメインのプレイヤーはもちろん、女性など手が小さいプレイヤーでもスムーズなフィット感を味わうことができるだろう。トラディショナルなルックスのなかに、ブランドのこだわりが随所に詰め込まれた一本だ。

    − Detail −

    ピックアップにはオリジナル製のPBタイプが1基マウント。低音弦側から3:2のバランスでコイルが配置されている。
    細やかなグロスの摩耗が表現された、濃いアメ色のメイプル・ネック。薄めのCシェイプでグリップ時のフィット感は抜群だ。
    コントロールはヴォリューム、トーンというシンプルなレイアウト。ノブにもカスタムメイドのエイジド加工が施されている。
    305ラジアス、20フレット仕様のローズウッド指板には、ミディアム・ジャンボ・サイズのフレットが打たれている。
    ヘッドには1〜3弦対応のオリジナル製テンション・ガイドが設置。最上部にはモデル名“BETA”の頭文字の“β”が記されている。
    ペグにもエイジド加工が施された、ゴトー製GB528を採用。ヘッド下部にレーザーで記された同社のロゴが印象的だ。

    Specifications
    ●ボディ:アルダー●ネック:ハード・メイプル●指板:ローズウッド●スケール:34インチ●フレット数:20●ピックアップ:オリジナルPBタイプ●コントロール:ヴォリューム、トーン●ペグ:ゴトー GB528●ブリッジ:ゴトー 205B-5●カラー:オールド・グリーン・メタリック(ライト・エイジド)●重量:約4.10kg●価格:345,000円

    【Takagi’s Impression】

    これ一本を持っていけばどんな現場でも対応できる。

     僕は普段1966年製の4弦PBをメインにしているんですが、このベースは特に違和感なく自然に弾くことができるので、4弦ユーザーにもぜひ触ってもらたいです。特にCシェイプのネックが手に吸い付くようで、すごく握りやすいんですよ。
     サウンドはサステインが伸びやかですごくいいですね。PBって僕のイメージではどこか詰まったようなサウンドの印象もあるけど、このベースにはそういったネガティヴなイメージはまったくなくて、伸びてきてほしいと感じる部分がしっかりと出てくれる印象です。PB特有のニュアンスを的確に表現してくれるので、ソングライターやエンジニアに求められるような、“出すべき”PBサウンドが鳴ってくれます。レンジ感はフラットで重心も低いので、アンサンブルのなかでは特に生きてくれるサウンドを持ってますね。僕みたいなサポートでの現場も多い場合、PBの音を求められたらこれ一本を持っていけばどんな現場でも対応できると思います。
     グリーン・メタリックのカラーもカッコいいし、やり過ぎないエイジド加工もクール。ボディのウェザー・チェックもマッチングしてますね。コントロール・ノブやブリッジにも同様にエイジド加工がしてあるので、見た目も楽しめる一本ですね。

    TMS BETA-P5 Vintage White Heavy Aged

    大胆なエイジド加工が施された、“現代版”ヴィンテージ・サウンド

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     ヴィンテージ・ホワイトのボディ・カラーに鼈甲のピックガードという王道の組み合わせのルックスに、大胆なエイジド加工が施された、なんとも言えない渋さを醸し出す一本。こちらもおなじくアルダー・ボディ、メイプル・ネック、ローズウッド指板という組み合わせだ。

     本器には3段階あるエイジド加工のなかでも最も強い“Heavy Aged”が施されており、リアル・ヴィンテージのような長年にわたる経年変化を思わせる、あくまでも自然なルックスに目を惹かれる。また極薄のオール・ラッカー塗装で仕上げられているため、使用していくなかでの新たなルックス変化も楽しむことができる一本だ。

    Specifications
    ●ボディ:アルダー●ネック:ハード・メイプル●指板:ローズウッド●スケール:34インチ●フレット数:20●ピックアップ:オリジナルPBタイプ●コントロール:ヴォリューム、トーン●ペグ:ゴトー GB528●ブリッジ:ゴトー 205B-5●カラー:ヴィンテージ・ホワイト(ヘヴィ・エイジド)●重量:約4.10kg●価格:345,000円

    【Takagi’s Impression】

    まるでリアル・ヴィンテージの楽器のような雰囲気です。

     このモデルは“Heavy Aged”ということで大胆にダメージが付けられていますけど、まったく不自然さを感じないですし、カッコいいです! まるでリアル・ヴィンテージの楽器のような雰囲気ですね。
     温かくもあり優しいサウンドなので、R&Bのようなジャンルの音楽には特にマッチするのではないでしょうか。強いサウンドというよりは、柔らかさと太さが欲しいときにはもってこいの一本ですね。ローB弦も含め、各弦ともにフラットな鳴りで使いやすいので、広いライヴ会場でも処理しやすい的確なサウンドだと思います。僕のメイン器である1966年製のPBと比較すると、より自然に鳴ってくれるモダンなサウンドなので、現代の音楽にもマッチする汎用性の高い楽器だと思います。テンション感も全弦違和感なく的確に保たれていて、弾き手のこともしっかり考えて作られていると感じますね。弦の鳴りやネックの握りも含めて、4弦の感覚で弾くことができるので、4弦から持ち替える際も抵抗感がないですし、スムーズに手に馴染んでくれると思います。
     僕は以前、5弦のPBを探していたことがあって、その際“PBの美味しい部分を5弦のレンジで出せるパッシヴ・モデル”を求めていたんですけど、その答えがこれですね。

    TMS BETA-J5AC Candy Apple Red Light Aged

    “スタンダード”を超越した、プレイアビリティと鳴り

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     続いてはJBタイプの2本をチェックしていこう。マッチング・ヘッドのキャンディ・アップル・レッドが色鮮やかな本器には、“Light Aged”の加工が施されている。本器にはボディ材にアッシュが採用されているが、非常に軽量でアルダー・ボディのものと比較しても重量に違和感はないだろう。極薄のラッカー・フィニッシングということもあり、近くで見るとうっすらとアッシュ特有の木目を確認することもできる。

     今やパッシヴ/アクティヴ問わず市場でもスタンダードとなった5弦JBタイプであるが、本器にも随所にブランドのこだわりが生かされている。なかでもトーンのコントロール・ノブをプッシュ/プルすることで、ピックアップをシリーズ(直列)/パラレル(並列)に切り替えられる点などは、サウンドとプレイの幅を飛躍させる、プレイヤーにとっての嬉しい工夫と言えるだろう。

     JBタイプのネックもCシェイプの形状となっており、PBタイプのものと太さが統一されているため、両モデルを頻繁に持ち替えて演奏する際もさほど違和感は感じないはず。王道のJBタイプをBlack Smoker独自の概念で発展させた、汎用性の高い一本だ。

    − Detail −

    ピックアップは立ち上がりが早く、ローB弦をクリアに鳴らす、オリジナル製JBタイプを搭載。PUカバーの幅は4弦モデルと同一。
    ボディ表面には美しいウェザー・チェックが刻まれている。縦横の亀裂模様は、見る角度や距離によって表情が変わる。
    コントロールは左から、フロント・ヴォリューム、リア・ヴォリューム、トーン。プレートにも同じくエイジド加工が。
    ブリッジにはゴトー製の205B-5が採用されており、ここにも経年劣化を思わせるエイジド加工が施されている。
    トーン・ツマミをプッシュ/プルすることで、ピックアップをシリーズとパラレルに切り替えることができる。
    ネックは4点止めのボルト・オンで固定されている。プレートとスクリューはともに耐久性に優れたステンレス製のものだ。

    Specifications
    ●ボディ:アッシュ●ネック:ハード・メイプル●指板:ローズウッド●スケール:34インチ●フレット数:20●ピックアップ:オリジナルJBタイプ×2●コントロール:フロント・ヴォリューム、リア・ヴォリューム、トーン(プッシュ:シリーズ/プル:パラレル)●ペグ:ゴトー GB528●ブリッジ:ゴトー 205B-5●カラー:キャンディ・アップル・レッド(ライト・エイジド)●重量:約3.85kg●価格:370,000円

    【Takagi’s Impression】

    ジャンルレスで活躍してくれる一本

     このモデルはアッシュ・ボディだけどすごく軽い。ほかと比較しても重量に違和感がないですね。サウンドは音の立ち上がりが速くて、パワフルな印象です。粒立ちもはっきりしているので、僕がやっているようなファンク系の音楽にマッチする、わかりやすいサウンドが出せます。トーンのツマミを引っ張ることでピックアップを直列/並列に切り替えできるので、パッシヴでもサウンドの幅が広がりますね。個人的にはハムバッカー(直列)にした際の、“ファットなブーミー感”が好きかな。パラレル(並列)にしても音量が大きく変わるわけではないので、ライヴの曲ごとの使い分けもできそうです。
     JB特有のカリカリしたニュアンスをいい感じに出てくれるのでピックでも弾きたくなるし、ハーモニクスやコード弾きでもしっかりプレイを表現してくれるので、テクニカルなプレイヤーにもお薦めできます。各帯域のサウンドがすごくクリアなので、ジャンルレスで活躍してくれると思いますよ。
     キャンディ・アップル・レッドのカラーもカッコいいし、ボディのウェザー・チェック模様もクール。コントロール・プレートにもエイジド加工がしてあって、細かい見た目にもこだわりを感じます。

    TMS BETA-J5 Sonic Blue Light Aged

    王道のスペックで生かされる独自の概念

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     “Light Aged”の加工が施された、パステル調のソニック・ブルーのカラーリングが映える一本。上記のキャンディ・アップル・レッドのJBモデルと同様に、ピックガードにも黄ばみがかったくもりが施してあるほか、独自の手法を用いて経年劣化を再現したコントロール・プレートなど、細かいパーツ部分にまで手を加えることで、より渋みを増したルックスに仕上がっている。

     本器のボディ材にはアルダーが採用されており、メイプル・ネックとローズウッド指板との組み合わせも相まって’60sの空気感を漂わせるが、厳選された木材と、完成時期の気温・湿度に合わせてセットアップされた本ブランドの楽器からは、リアル・ヴィンテージとはまた違った未体験のプレイアビリティを体感できるはずだ。

    Specifications
    ●ボディ:アルダー●ネック:ハード・メイプル●指板:ローズウッド●スケール:34インチ●フレット数:20●ピックアップ:オリジナルJBタイプ×2●コントロール:フロント・ヴォリューム、リア・ヴォリューム、トーン(プッシュ:シリーズ/プル:パラレル)●ペグ:ゴトー GB528●ブリッジ:ゴトー 205B-5●カラー:ソニック・ブルー(ライト・エイジド)●重量:4.35kg●価格:345,000円

    【Takagi’s Impression】

    アクティヴが苦手な人にもお薦めできます

     このモデルはLight Agedとのことですが、すごく自然な感じで好きです。いやらしさがなくて、加工したって言われないと気づかないレベルですよ。
     サウンドはイヤな5弦臭さがまったくなくてすごくナチュラル。5弦のJBだと、僕のまわりではアクティヴ・タイプを使っている人が多くて、もちろんそれもいい音なんですが、このベースはパッシヴだけどパワー感も充分なのでアクティヴが苦手な人には特にお薦めできます。パッシヴの最低限のコントロールのみでここまで汎用性の高いサウンドを作れるのはすごいと思いますね。
     さっきのモデルと同じくトーン・ノブのプッシュ/プルでピックアップの直列/並列の切り替えができて、ハムバッカー(直列)にしたときの硬めでブースターをかましたようなサウンドは、ホーン隊もいるような大所帯のバンドでも負けずに抜けてくれる存在感あるサウンドですね。逆にレコーディングなどではバチッとくるJBの感じを出すために、シングルで使ってみたいかな。しっかりセットアップされていてすごく弾きやすいので、感覚としては4弦JBの感触にかなり近いです。なので4弦から5弦への移行を検討している人にもぜひ試してほしい一本です。

    Other Lineup

    TMS BETA-P5 Black Medium Aged/BETA-J5A Black Light Aged

    TMS BETA-P5 Black Medium Aged/Front
    TMS BETA-P5 Black Medium Aged/Back

    TMS BETA-J5A Black Light Aged/Front
    TMS BETA-J5A Black Light Aged/Back

     ブラック・カラーのボディに鼈甲のピックガードの組み合わせが渋い2本。PBタイプには“Medium Aged”の加工が施されており、その名のとおり“LightとHeavyの中間”といった具合のダメージだ。“エイジド加工が欲しいけど、そこまで強く加工されたものは避けたい”というプレイヤーに最適な一本だろう。JBタイプのモデルには“Light Aged”の加工が施されており、ボディ材にはアッシュが採用されている。アッシュ・ボディにはメイプル指板を組み合わせるケースが多いが、ローズウッド指板が用いられたラインナップが多い部分も同社のひとつのこだわりと言えるだろう。

    Specifications(BETA-P5)
    ●ボディ:アルダー●ネック:ハード・メイプル●指板:ローズウッド●スケール:34インチ●フレット数:20●ピックアップ:オリジナルPBタイプ●コントロール:ヴォリューム、トーン●ペグ:ゴトー GB528●ブリッジ:ゴトー 205B-5●カラー:ブラック(ヘヴィ・エイジド)●重量:約4.10kg●価格:345,000円

    Specifications(BETA-J5A)
    ●ボディ:アッシュ●ネック:ハード・メイプル●指板:ローズウッド●スケール:34インチ●フレット数:20●ピックアップ:オリジナルJBタイプ×2●コントロール:フロント・ヴォリューム、リア・ヴォリューム、トーン(プッシュ:シリーズ/プル:パラレル)●ペグ:ゴトー GB528●ブリッジ:ゴトー 205B-5●カラー:ブラック(ライト・エイジド)●重量:4.35kg●価格:360,000円

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