Impression
山田貴洋（ASIAN KUNG-FU GENERATION ）

多彩な歪み感を駆使し、バンド・アンサンブルの根幹を支える山田貴洋（ASIAN KUNG-FU GENERATION）に、JACKAL MIDNIGHT ADD CBFを試奏レビューしてもらった。

これ1台でどんな歪みサウンドも作れてしまう。

　緻密に音を作り込めるし、何より作れる音の幅がすごく広いなと思いました。軽いクランチっぽい音から、激しい歪みまで1台で対応できますね。歪みのキャラクターはチリチリした成分が強いのですが、全体としてはスッキリと聴こえる印象でした。そのあたりは歪みを上げていっても破綻しない感じでうまくまとまりますね。歪ませるときは3バンドのEQで音色を作っていくのですが、なかでもミドルのツマミが特に良いです。上げていくとゴツッとしたニュアンスと同時に、音の一体感も演出できます。

　ベースの歪みペダルって、歪み成分とベースの芯となるトーンが分かれてしまうものがけっこうありますが、このペダルはそういう感じがしない。音程感もくっきり出てくれて、特にガッツリと歪ませたときの高音の質感が良くて、個人的にはハイ・ポジションを弾きたくなる感じでした。バンドではあまり過激には歪ませないのですが、このペダルを使っていると歪ませたくなりますね。ただ僕としては、ゲインをカット気味、トレブルとミドルは1時、ベースは2時程度と、控え目気味のセッティングにして、それをADD CBFで整えてあげる感じが好みでした。

　プリアンプ・モードはドライブ・モードとは全然違うキャラクターを持っています。多少クランチっぽくも歪ませられますが、基本はクリーン・トーンで使うイメージでしょうか。オンにしただけで音がキュッと締まるというか、まとまった音になりますね。僕はけっこう低域の音量感があるほうが好きなので、EQのベースをかなりブーストさせつつ、ADD CBFをフラットの状態にしたら好みの感じになりました。

　新しく搭載されたこのADD CBFのおかげで、かなり幅の広い音作りができますよね。僕が普段使っているような、少しだけ歪みを足した感じのベーシックなサウンドは、低域の質感調整がけっこう難しいのですが、ADD CBFではそこが細かく調整ができるので、理想に近いニュアンスを出すことができます。ただ、少し使い方にクセがあるというか、ブレンドで原音の量を増やした状態だと、3バンドEQの可変幅も少なくなります。なので原音のブレンドをゼロにして音を作って、あとから原音を混ぜるほうがスムーズかもしれませんが、僕は先にブレンドやローパス・フィルターの値を決めてから、音作りするほうがしっくりきました。

　いずれにしても、出したい歪みのイメージがあるのであれば、これ1台でどんな感じの歪みサウンドでも作れてしまう、とても優秀なペダルだと思いました。

山田貴洋のセッティング

Profile
やまだ・たかひろ●1977年8月19日生まれ。静岡県出身。1996年4月、関東学院大学軽音楽部内にてASIAN KUNG-FU GENERATIONを結成する。2003年にミニ・アルバム『崩壊アンプリファー』でメジャー・デビュー。2023年7月5日『サーフ ブンガク カマクラ (完全版)』をリリース。9月から本作を携えた全国ツアーを開催中。
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