NOTES

UP

第27回 – 毎日やりたいフィンガリングの基礎練習【ベース初心者のための知識“キホンのキ”】

  • Text:Makoto Kawabe

この連載では、“ベースを始めたい!”、“ベースを始めました!”、“聴くのは好きだけど僕/私でもできるの?”というビギナーのみなさんに《知っておくと便利な基礎知識》を紹介します。

今回は、毎日のルーティンとして取り組むことをお薦めしたい“フィンガリングの基礎練習”をレクチャーします!

はじめに

動きのあるフレーズやテンポの速い楽曲は指がちゃんと動いてくれない……と悩むベーシストには、これしかない!

ということで、毎日ちょっとずつでも良いので基礎練習をしましょう(笑)。

とはいえ難しいフレーズや覚えにくいフレーズだと練習意欲も萎えてしまいますので、覚えやすい(けど難易度はやり方次第な)基礎練習のアイディアを紹介します。

前回記事で紹介したクリックは必ず活用してください。まずは遅いテンポから、丁寧に、じっくりと取り組んでくださいね。

フィンガリングの基礎練習の前に

今回はフィンガリングに焦点を置いた基礎練習ですが、基礎練習だからこそ演奏のクオリティにはこだわりたいものです。

今回取り上げる練習フレーズはすべて休符のない単音弾きです。奏法はピック弾きでも指弾きでも構いませんが、各音の粒立ちや音色を揃え、重なったり途切れたりしないように丁寧に弾きましょう。

これには弦を押さえる位置や指の使い方など、フィンガリングの基礎がとても重要ですので、必要に応じて関連する記事(第4回第18回第19回)にも目を通してくださいね。自分の演奏を客観的に判断することも大切です。できれば鏡の前で演奏してフォームを確認したり、録音したりして演奏を聴いてみるのが良いでしょう。

基礎練習フレーズにはこれ!

さて今回取り上げる練習フレーズは、ずばり“メジャー・スケールの上行&下行”です。

過去記事(第12回)でも取り上げた“ドレミファソラシド”ですね。Cから始まるCメジャー・スケールの各音はCDEFGABであり、♯も♭も付かない音名が並びます。

フィンガリング練習ではCメジャー・スケールでなくても良いのですが、すべての指をバランス良く使えますし、指板上のポジションを把握するトレーニングにもなるので最初に取り組むスケールに最適です。

何より覚えやすいし、音程感(メロディ感)があるのが良いですね。習熟度に応じて異なるキーのメジャー・スケールやそれ以外のスケールでも練習しましょう。

CDEFGABと並べればCメジャー・スケールになりますが、まずは以下の2ポジションで1オクターヴ分を上行&下行するフィンガリングを確認しておきましょう。

3弦3フレットからのポジションでは4指3フレットのフォームで適宜ポジション移動を併用、4弦8フレットからのポジションでは4指4フレットのフォームでポジション移動は併用せずに弾くのが良いでしょう。

フィンガリングの基礎練習ではあくまで指を動かし、素早く的確にポジションを移動するトレーニングとして余弦のミュートは右手に委ねるのが良いでしょう。

2ポジションのCメジャー・スケール指板図
3弦3フレットからのフィンガリング
4弦8フレットからのフィンガリング

“なんだぁメジャー・スケールか、じゃあ弾けるし、おもしろくないから違う練習探そ”って思ったそこのあなた!

ちょっと待って。本当にちゃんと弾けてます? 1オクターヴ分を昇るだけでは確かにおもしろくないですね。自分で工夫してフレーズを作るのがポイントなのです。本題はここから!

1.5オクターヴの上行&下行

ベースの場合、スケールはブロック状に1オクターヴ分を覚えれば、どこでも(ルート音の位置を合わせて)コピペできるので、これを利用して4弦8フレットのC音をスタート位置にして1.5オクターヴ分の上行&下行を練習しましょう。

2弦10フレットのC音で一旦止まらず(もしくは弾き直さず)、連続して上行&下行すると、スムーズなポジション移動が不可欠になりますし、指板を広く活用するトレーニングにもなるはずです。ちなみに5弦ベースの場合は5弦をルート音にすれば2ブロック分を重ねるだけで2オクターヴ分の上行&下行フレーズが弾けますね。

4弦8フレットからの1.5オクターヴ(指板図)
4弦8フレットからの1.5オクターヴ(譜面)

ところで、2弦7フレットのA音を3弦12フレットに移動するとCDEFとGABCが同じブロック形状に並びますね

Cメジャー・スケールの基本形がしっかりと覚えられたら、このような変形も覚えておくと弾きやすくなるフレーズがあるでしょうし、フレーズのアイディアも格段に増えるでしょう。

Cメジャー・スケールを1.5オクターヴ弾くのに前述の基本形を重ねるポジショニングだけでなく、CDEFと4音弾いたあとにG音からGABCDEFと並べるGミクソリディアン・スケールに移行するというポジショニングも活用しやすいかと思います。

Cメジャー・スケールの変形(指板図)
Cメジャー・スケールの変形(譜面)
イオニアン・スケールとミクソリディアン・スケール

3音パターンの上行&下行

3音弾いたら戻って2音目から弾く、つまりドレミ、レミファ、ミファソ……と弾いていくフレーズです。

3音で止まらず連続して演奏しましょう。便宜上、譜例を提示していますが、楽譜そのものを覚えるのではなく、音の並びのルールを頭のなかで考えながら、できれば声に出しつつ弾くのが良いかと思います。クリックは拍で鳴らしつつ、まずは3音を3連符として弾きましょう。

慣れてきたら連続する16分音符としても練習してみてください。ほぼ同じフレーズですが、拍の取り方で聴こえ方が変化しますね。ドラム・ループのリズムで練習するのも良いかと思います。

3音パターンの譜例①
3音パターンの譜例②

4音パターンの上行&下行

4音弾いたら戻って2音目から弾く、つまりドレミファ、レミファソ、ミファソラ……と弾いていくフレーズです。

3音パターンと同じように4音一括りで止まらず連続して演奏しましょう。クリックに関しても、3音パターンと同じです。クリックのタイミングを変えたり、聴き方を変えたりしながら弾いてみてください。

4音パターンの譜例

ルールを自分で考える

上記の3音パターン、4音パターンだけでも、日課として丹念に取り組めばかなりの練習量が確保できるかと思いますが、もちろん5音、6音でパターンを作っても良いですし、スケールを隔音(一音飛ばし、つまりコード・トーンを弾くニュアンス)で弾くのも良い練習になるかと思います。

教則本やベース・マガジンの練習フレーズを弾くのも悪くないですが、基礎練習フレーズは自分で考えたほうが楽しめると思いますし、上達への近道にもなるでしょう。

最後に

フィンガリングの基礎練習は、どうしても前かがみになったり肩が下がったりと姿勢が崩れてしまいがち。指を大振りさせず、リラックスした姿勢を維持することを忘れずに取り組みましょう。

指の長さや駆動域は人それぞれですがフォームを矯正するだけで、弾けなかったフレーズが弾けるようになる、指が届くようになる、弦をしっかり押さえられるようになることもあります。とはいえやはり楽器に触れる時間が多いほど体が順応して楽に届くようになるのも事実。地道な努力あるのみで特効薬はありません(笑)。

4月から新生活が始まった方も多いかと思いますが、毎日5分だけでも楽器を弾く時間を作りたいですね。

■連載一覧はこちらから。

◎講師:河辺真 
かわべ・まこと●1997年結成のロック・バンドSMORGASのベーシスト。ミクスチャー・シーンにいながらヴィンテージ・ジャズ・ベースを携えた異色の存在感で注目を集める。さまざまなアーティストのサポートを務めるほか、教則本を多数執筆。近年はNOAHミュージック・スクールや自身が主宰するAKARI MUSIC WORKSなどでインストラクターも務める。
Official HP X