UP

アダム・クレイトン(U2)が語るフェンダー製シグネイチャー・アンプ

  • Interpretation:Tommy Morley

ここからはU2の新作アルバム『Songs Of Surrender』について聞いた。

僕らの音楽をまた違った側面から知ってもらえるはず。

━━U2の新作『Songs Of Surrender』は新解釈によるセルフ・カバー・アルバムです。アコースティックな質感のアレンジが多いですが、このタイミングでこのような作品を制作した経緯を教えてください。

 いくつかのアイディアがあってこのアルバムに至っている。ボノ(vo)はロックダウン中に回想録に取りかかり、彼のストーリーを40章に渡って綴っていくことにした。そしてそれらのストーリーを語るうえで重要なU2の曲を選ぼうとしたのが始まりだった。ジ・エッジもそれらの曲選びに参加し、僕らはロックダウン期間中に会うことさえできなかったんだけど、ジ・エッジから、”これらの曲をほかのアレンジでやれないか考えてみたい。ピアノを入れたり、アコースティック・ギターも入れてみたい。古い曲は今年で40年目を迎えるわけだし、これらを再解釈してみたいんだ”と言われてね。キーを変えることでボノは異なる歌い方ができるようになり、感情をもっとダイレクトに伝えられるようになった曲もあった。そして歌詞のテーマの解釈が変わってきたものもあったみたいなんだ。二十歳くらいの頃に書いた曲っていうのはどこか未完成なところがあったみたいで、それを40年後の現在の見方でアプローチすることで別の形に仕上げてくれた。結果的に40もの曲を再解釈して録音するなんていう特殊なプロジェクトとなり、ジ・エッジが考えてくれたたくさんのピアノ・アレンジは僕のお気に入りだし、僕らの1stアルバム『Boy』の「Stories For Boys」での彼の歌唱も気に入っているよ。

『Songs Of Surrender』
ユニバーサル/UICY-16150
(1CD通常盤)

━━『Songs Of Surrender』は各メンバーの名前がつけられた4枚のディスクになっています。自身の名前のついたディスクの収録曲の印象を教えてください。

 選曲はかなりランダムな作業だったよ。40曲を選ぶ段階になってどの曲をどのメンバーのディスクに収めるのがベストなのかを話し合い、僕はかなりグッドな選曲ができたと思っている。「Vertigo」は僕にとってハズせない曲で、No.1のロック・ソングだ。オーディエンスを前にしてプレイするのがいつも楽しいよ。かなりルーツっぽいというかアコースティックな感じでプレイしていて、今回のレコーディングでは別のクオリティを与えることができた。「I Still Haven’t Found What I’m Looking For」は『The Joshua Tree』のなかのグレイトな1曲で、もともとゴスペルのような強烈なアイデンティティを持っているから、ほかの解釈でやってみるっていうのがかなり難しかった。ジ・エッジはカウボーイっぽいことをやっていてサウンド的に新しいものにしてくれたよ。「Electrical Storm」はグレイテスト・ヒッツ盤に収録された曲だからヘンな選択でもある。けっこう過小評価されていると思うけど、今回のバージョンはかなりグレイトなものとなったと思っている。

━━「The Fly」はレゲエ・ベースのような分厚い低音が鳴っていますね。

 「The Fly」はとても奇抜な解釈をしていて、ナイトクラブでプレイしているような感じだ。必ずしもすべてをアコースティックにする必要はないと思ったし、一風異なったループやエレクトロニックなものが入っているんだ。「If God Will Send His Angels」もグレイトなU2ソングで、見逃されてきたところがあった。シングルとなるくらいだからポテンシャルを秘めた曲だと思っていたけど、そこまでリスナーたちのハートを掴むには至らなかったようだ。

━━「Desire」はベースの処理がおもしろいサウンドですね。

 「Desire」はかなりヘンなバージョンでプレイしていて、ベースはエレクトロニックなサウンドだし、この曲はジ・エッジがファルセットで歌っているよ。どこかでボノがファルセットで歌っているというレビューを目にしたけど、実はジ・エッジによるものなんだ。「Until The End Of The World」は『Achtung Baby』からの素晴らしい曲で、僕の大好きな曲。「Song For Someone」は『Songs of Innocence』からの曲で、ボノによる素敵なラブバラードでもありグッドなバージョンとなったよ。「All I Want Is You」はU2がヴァン・モリソンをやっているような感じだけど、それは何も問題じゃない。むしろヴァン・モリソンっぽいものが時折少しばかり自分のレコードに入ってくるのは良いことだよ。最後の「Peace On Earth」は『All That You Can’t Leave Behind』からのある意味スウィートなエンディングで、アイルランド北部での武力衝突が終りを迎えることとなったベルファスト合意がやっと成立した日の曲だ。“このまま衝突を繰り返すのではなく、平和を選ぼう”というメッセージの曲なんだ。かくしていい感じの選曲ができたと思っているし、僕はとても満足しているよ。

『Songs Of Surrender』Trailer

━━レコーディングではどんな機材を使用したのですか?

 おもしろいことに多くのパートをマーティンのアコースティックでプレイしていて、これを手に取れば常にグッドなサウンドが得られたのでたくさん使うことになった。ほとんどの場合マイクとDIの両方で録っていて、アコースティック・ベースをメインで使ったアルバムとなったね。エレクトリック・ベースも使ってはみたものの、結局はアコースティックのほうがはるかにベターなサウンドだったからそこに戻っていた。特に「All I Want Is You」でのプレイは気に入っているよ。

━━最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

 もしこれまでにU2のアルバムを何枚かチェックしていたら、今回のこのアコースティック・バージョンもぜひ聴いてみてほしい。これらの曲によって僕らの音楽をまた違った側面から知ってもらえるはずだからさ。

Profile
あだむ・くれいとん●1960年3月13日、イングランド生まれ、アイルランド育ち。高校時代にラリー・マレン・ジュニア(d)に誘われてU2の前身バンドを結成し、1979年にU2としてデビューする。現在までに14枚のスタジオ・アルバムをリリースし、全世界アルバム・セールスは1億7,500万枚以上、グラミー賞を22回受賞と、世界的に活躍。2023年3月には、キャリアを通じて発表してきた楽曲のなかから40曲を新解釈で録音したアルバム『Songs Of Surrender』を発表した。

◎Information
Official HP Twitter Instagram Facebook YouTube