PLAYER
世代を牽引する若きグルーヴマンが唱える
楽曲とテクニックの相互関係
圧倒的な演奏力と洗練されたアンサンブルで、国内外から高い評価を得るDEZOLVE。最新作『Biblion』は、バンドのさらなる進化を見せつけると同時に、ベーシスト兼子拓真の“プレイヤーとしての底知れぬ深み”を証明する1枚となった。世代トップクラスのセンスとスキルを備える兼子は、ポリリズムや複雑な拍子が交錯する楽曲群において、テクニックに溺れることなく、常に“グルーヴ”という命題に向き合っている。
ベース・マガジン2026年5月号では、『Biblion』の制作の裏側/ベース・プレイにまつわるインタビューのほか、最新機材の紹介、そして本人直伝による収録楽曲の奏法解説などを掲載しているが、ベーマガWEBではそのアウトテイクを特別公開する。Adoのサポート・ワークを経たプレイヤーとしての立ち位置、そして“テクニックの在り方”などについて自身の考えを語ってくれた。

キングレコード
KICJ-885
単純にスラップを入れても
ベーシストが書いた曲っぽくならないと思った
━━『Biblion』は前作から約一年半ぶりの作品となりましたが、この間は兼子さん個人としてサポートワークなど、さまざまなプロジェクトに関わってきたと思います。どのような期間だったと振り返りますか?
昨年はAdoさんのワールド・ツアー(Ado WORLD TOUR 2025 “Hibana”)に参加させていただき、4ヵ月間日本にいなかったりとDEZOLVEから離れていた時期があったんです。その時に現地の文化とか、各地のお客さんの熱量とかを受け取って、いろんなものを吸収したことで、それまでの自分にはなかったものを掴みかけた感じがありました。その中で、Adoさんのワールド・ツアーで経験したものをDEZOLVEに還元できそうだなと思ったけど、いざやってみると、やっぱりまだまだ課題も見えたというか、前回のアルバム(『Asterism』)の時は、完成形じゃないにしろ、DEZOLVEにおける自分のベース・プレイがハマったなって安心感を強く感じたんです。
だから『Asterism』の時に感じた安心感はぬか喜びというか、ちょっとわかった気になってたのかもしれないって印象を受けました。Adoさんのツアーは自分的には修行期間というか、帰ってきてすぐにビルボード東京でDEZOLVEのライヴがあったので、“修行して強くなって帰ってきたぞ”っていうのを見せたい気持ちもありましたね。
━━歌モノの現場とDEZOLVEでは求められるプレイが大きく違いますよね。だからこそ、4ヵ月間離れていて、いきなりDEZOLVEのステージだと戸惑いもあったんじゃないですか?
やっぱりDEZOLVEとは全然違うので、帰ってきていきなりは弾けなかったです。“あ、そうだ、こんな難しかったわ”みたいな(笑)。グルーヴで重心を支えるというか、そういう方向性はサポート現場で強化されていると思うんですけどね。定期的にDEZOLVEでのプレイをやってないと対応できないというか、久しぶりにメンバーで音を出した時、“もう3人ともめちゃくちゃやってくるじゃん!”って(笑)。インプロビゼーションも含めて目が醒めるというか。

━━『Biblion』には“12編のストーリーを収めた短編集”というコンセプトが掲げられていますが、兼子さんは「Realm」の作曲を担当されています。この曲はどのような思いで作った曲なんですか?
僕は 1年半ぐらいのサポート期間を経てからDEZOLVEに正式加入したんです。元々DEZOLVEのリスナーだった自分が、サポート・メンバーになり、本メンバーになったっていうのは、世界で僕ただ一人だけだと思っていて。だからこそ、僕にしかない感性みたいなものがあると思っているし、メンバーよりかは客観的にバンドを見れるというか、そういう自分にしかない領域・世界観という意味合いで“Realm=領域”ってタイトルを付けました。アルバム・タイトルの『Biblion』は、ラテン語で“本”という意味で、今作は短編集を読んでいるかのようなコンセプト・アルバムなので、それに合わせて詩術的な表現の「Realm」を採用したんです。この着想から曲を書き始めましたね。
━━なるほど。結果的として、勢いと疾走感のあるDEZOLVEらしいアッパーチューンになりましたね。
僕が今まで見てきたDEZOLVE、そしてほかの3人にはない自分のルーツとか、そういう要素をとにかく入れて具現化しようという感じでした。気持ちのままにバーっと書いていって、気づいたら勢いのあるアグレッシブな曲になっていましたね。
━━兼子さん作曲と言われると、テクニカルなベース・フレーズを連想してしまう部分もあるんですけど、テクニックとは違う目線でベースを楽しめる楽曲だと思いました。メインのバッキングを中心に楽曲が構成されていることから、ハイレベルなユニゾンを聴かせたい楽曲なのかなと。
まさにその通りです。むしろあのイントロのベース・フレーズがないと、曲全体を通してちょっとサポートチックなプレイになってしまうというか。自分の主張もあり、引っ張っていく部分もあり、支えるところもあり……そのうえでみんなのとんでもないすごいプレイも聴きたいというイメージで構成しました。
━━ということは、メインのバッキング・フレーズから楽曲を組み立てていった?
そうです。最初に自分の手グセのEマイナーやEドリアン系の、カッコよくてちょっと変拍子チックなバッキング・フレーズをバーっと入れたあとにドラムを打ち込み、それを主軸に作っていきました。ちなみにいうと、ベーマガさんの企画で二家本(亮介)さんと二重奏させていただいた「Weave」がモチーフにあるんです。だから“ちょっと似てるかも?”って思う人もいるかもしれない。「Weave」をモチーフに、インプット/アウトプットして生まれたバッキング・フレーズでありますね。
━━代名詞のスラップは、サビ前で装飾的かつポイント的に使われている感じですね。
はい、あの1小節のベース・フィルからサビに入る流れを取りました。どこかにスラップを入れたかった、という思いもあったと思います。メンバーから送られてきたデモ音源を聴いていると、めちゃくちゃ作り込まれていて、他のパートの打ち込みもめちゃくちゃ上手いんですよ。スラップのパターンまで記載されているものもあって、そのパターンがめっちゃ良かったりする。だから単純にスラップ入れても、ベーシストが書いた曲っぽくならないと思ったし、元々サビ前でスラップ・フィルを入れることはイメージしていたんです。なのでベーシストが思いつきそうな少し難易度の高いスラップ・フレーズをワンポイントで取り入れることにしました。
DEZOLVEは、常に音楽的に使うことを意識しながら
テクニックに挑戦し続けています
━━バッキングの面だと、「Func and Sync」が興味深かったです。スラップでバッキングも弾き切っていて、この16分スラップが全体の疾走感に起因してると思いました。
ファンク寄りなんだけど、ちょっとモジュレーションしたり、五つ割りになったり、六つ割りになったり……簡単には解釈できない奥深い曲ですよね。僕的には16分なんだけど、ちゃんとファンキーにもする、でも重くしすぎない、みたいなテーマでベース・フレーズを構成していきました。
━━長尺のベース・ソロは、高速スラップからハイポジでの2フィンガーに移行し、最後スラップで落とすという、一連の流れになっています。どのようにインスパイアしたのでしょうか?
曲全体の流れをソロでも継続させたかったんですよ。16分で細かく鳴らしながら、80年代ファンクのようなノリも崩したくなかった。だからファンクだとしても休符を生かした感じではないなって最初に思いました。休符を生かしたメロウすぎるプレイだと、勢いが止まるじゃないですか? だからノリは変えないにしろ、最初からある程度ボルテージを上げ、緩やかにクレッシェンドさせていく展開を考えました。
後半からは、いかにもな“THEスラップ”から、コード進行も出てきてメロウな感じになるし、きらびやかなコード進行だったこともあって、指弾きで弾き倒しながら雰囲気を変えています。そして最後にスラップをピックアップしてエンドするってイメージです。その中で、ちゃんと“歌ってる感じ”は出さないといけないという、テンション的にも難しかったソロですね。弾き倒す中、だんだん上げていかないといけないけど、その中間で指弾きが来るから、また別のベクトルになる。でもソロ全体を見渡した時には最初と最後で高低差がちゃんとついてるように、でもその高低差が激しすぎないようにって意識がありましたね。
━━スラップと指弾きの切り替えなど、作曲者の北川(翔也/g)さんからリクエストみたいなものはあったんですか?
いただいたデモだと、前半がスラップ、後半が指弾きになっていたんですけど、後半の指弾きがメロウに休符とかを使うようなプレイだったんです。それもめっちゃいいんだけど、前半のスラップ・パートから勢いをあまり消したくなくて、一回弾き倒してやってみたらうまいことハマってくれた。やっぱりスラップが指弾きに変わろうとも、クレッシェンドで徐々にテンション感と熱量が上がっていってるほうがこの曲には合っていると思ったし、北川さんに提案したところOKをいただけたので。
━━「A Way Yet to Step」はしっとりとしたミディアム・テンポですが、メロディアスなベース・ラインが良いハマり方をしていて美しい楽曲だと思いました。
この曲はまさに普段のサポート・ワークなどの現場経験で得た音の太さや重心の低さみたいなものを意識しつつ、メロウに歌う部分は自分らしく鳴らしていくというスタイルですね。そういった緩急を大事にした曲です。下を支えながらグルーヴさせる、みたいな。
━━サポート・ワークでの経験が生かされた楽曲だと。
ええ。DEZOLVEは4人全員がスタジオ・ワークやサポート・ワークをたくさん手がけていることもあって、各楽器の差し引きや、“この楽曲はこういうバランスが良い”みたいなことが阿吽でわかり合えると思っています。「A Way Yet to Step」はその代表例かなと思いますし、普段のサポート業が生きた曲ですね。
━━では、いろんな現場をこなしている中、兼子さんにとってDEZOLVEとはどういう場所だと認識していますか?
まず、そもそもテクニックは、音楽を表現するための手段でしかないと思っています。ただのテクニックではなく、“音楽を表現するためのテクニック”を研究できる場所は、ただのテクニックを研究する場所よりも、年老いていくに連れてどんどんなくなっていくと思うんです。その中でDEZOLVEは、常に音楽的に使うことを意識しながら、テクニックに挑戦し続けています。こんな場所はほかにはないと思っています。今ふと思ったんですけど、これって自分のルーツでもあり、本当に大好きなヴィクター・ウッテンの考え方に近いのかもしれない。

━━と言いますと?
彼はテクニックが凄まじいけど、本当に凄まじいのはそのグルーヴ感であって、グルーヴを表現するためにテクニックを使っている。そう考えると、音楽を表現するためにテクニックを使い、そして音楽とテクニックの両方を追求できる場所は、自分にとってDEZOLVEしかないんですよ。だから本当にすごい場所だと思うし、外現場から帰ってきた時にちょっと兜の緒を締めるというか、ケツを叩かれることもあります。そういう意味でも帰ってきて安心するというか、実家感がありますね。僕が“いろんな現場での経験をフィードバックしたい”って思うのは、“強くなった自分を見せたい”っていう意味合いでもあるんです。
━━そのうえで、常に自分自身がレベルアップしていかないとDEZOLVEのアンサンブルに対応できない、と。
その通りです。みんな僕より年上だし、経験も豊富なんですけど、“まだスキルが上がるの!?”みたいに思うこともありますから。“もうそろそろ止まってくんねぇかな”って、追い疲れちゃうみたいな気持ちになります(笑)。“メタルスライム100匹ぐらい狩んないとレベル上がんないじゃん!”みたいな(笑)。メンバーながらヤバいバンドだなって思いますけど、これからも追いつけ追い越せで頑張っていきます。
Profile
兼子拓真(かねこ・たくま)●1998年生まれ。中学生でベースを始め、高校生のときにYouTubeに投稿した「U Can’t Hold No Groove」(ヴィクター・ウッテン)のカバー動画で注目を集める。現在は、Ado、アイドルマスターシンデレラガールズ、IDOLY PRIDE、DIALOGUE+、東山奈央、柿原徹也、やなぎなぎ、Sou、りぶといったアーティストのサポート・ワークを展開するかたわら、2022年11月に4人組インストゥルメンタル・バンドDEZOLVEへ加入。2026年3月18日に8thアルバム『Biblion』を発表した。
Information
兼子拓真
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DEZOLVE
HP X Instagram
別内容のインタビューが2026年5月号に掲載!


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