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    【ベース初心者のための知識“キホンのキ”】第24回 -ハーモニクスを理解しよう(ハーモニクス 理論篇)

    • Text:Makoto Kawabe

    ここでは、“ベースを始めたい!”、“ベースを始めました!”、“聴くのは好きだけど僕/私でもできるの?”というビギナーのみなさんに《知っておくと便利な基礎知識》を紹介します。

    今回は前回に引き続き“ハーモニクス”について学びましょう!

    はじめに

    今回はナチュラル・ハーモニクスが鳴る原理を解説しますが、予備知識として音域や基準音、基音と倍音、音律などについても解説しています。

    ハーモニクスが鳴る原理を知っているとハーモニクスを演奏する際に活用しやすいだけでなく、正確なピッチ(音程)での演奏や、的確な音作りにも役立つでしょう。かなり座学的な内容ではありますが、ベース練習の合間に御一読ください。

    楽器のピッチと音域について

    ハーモニクスが鳴る仕組みを理解するために、まずは楽器のピッチ音域についての知識を深めましょう。

    前回の冒頭で記述した4弦ベースの最低音“E1音”などは、音名だけでなくオクターヴの違いも示すことができる表記方法です。

    基準となるのは“中央ハ音”と呼ばれるC4音で、これは88鍵のピアノの中央にあるA音から見てすぐ左側にあるC音を意味します。

    図のようにピアノとベースの音域を見比べてみると、やはりベースはピアノの左手の音域を担当する低音楽器であることがよくわかりますね。

    ピアノとベースの音域

    ほかの楽器と一緒にアンサンブルで演奏する際はチューニングを合わせないといけませんね。これには基準となる音の高さ、つまり基準音が必要ですが、基準音はA4音の周波数で表わし“A=440Hz”などと表記するのが通例です。

    電子楽器や電子チューナーのデフォルトはA=440Hzであり、特に指定がなければA=440Hzで問題ないですが、オーケストラや生ピアノの調律ではA=441HzやA=442Hzとしていることも多いので、ほかの楽器とアンサンブルで演奏する際には必ず“A音はいくつか?”と確認するようにしましょう。

    ちなみにA4=440Hzの場合、E1は約41.2Hzとなります。

    各音のピッチ

    楽器の音の高さと音色の違い

    ところで、“ベースで鳴らすE1音”と“ピアノで鳴らすE1音”を聴き比べると、それぞれ違う楽器の音だと判別できますが、音の高さが同じでも楽器の違いを判別できるのはベースとピアノの音色が違うからですよね。

    では音色の違いはどこから発生するのでしょうか?

    ベースとピアノを発音方法で分類すると、ベースは弦を指やピックでハジいて音を出す擦弦楽器であり、ピアノは鍵盤に連動したハンマーで弦を叩く打弦楽器ですが、DAWなどでベースを録音するとベースの波形を視覚的に見ることができ、ベースの音はアタック音と持続音で構成されていることがわかります。

    アタック音の主な成分は弦を指やピックでピッキングしたことによる衝撃音であり、発音方法は音色の違いを生じる大きな要因のひとつです。

    ピック弾きによる4弦開放E1音の波形

    一方で、持続音は弦の周期的な振動によるものです。弦の振動は弦の張力、長さ、単位長さ当たりの重さ(言い換えれば各弦のチューニング、押さえるフレット、弾く弦の太さ)に応じた固有振動数で振動し続けますが、固有振動数はひとつではなく最も低い周波数の振動を基音としてその整数倍の倍音も同時に発生します。

    弦楽器はたいてい基音が音の高さを示し、各倍音の大きさ(倍音構成)は音色を決定付ける要素になります。倍音構成や減衰量は発音方法や弦を弾く位置、楽器の構造や材質などによっても異なります。ちなみに衝撃音は多くの周波数成分を含んでいますが、持続音の基音と倍音のような規則性はありません。

    ピック弾きによる4弦開放E1音の周波数成分と時間変化

    またベースのピッキングは、指弾き<ピック弾き<スラップ奏法の順で高音域の成分が多いトレブリーな音色になりますが、これは鋭いアタック音ほど周波数分布が広範囲になるためです。

    ベーシストであれば経験的にブリッジ寄りでピッキングするほどトレブリーな音色になることを知っていると思いますが、これは持続音の高次倍音の割合が多くなるためであり、逆に高次倍音の割合が最も少ないのは弦長の半分(開放弦の場合12フレット)の位置です。

    以上を大雑把にまとめると、基音は音程、倍音は音色を支配するといえるでしょう。ベースは低い音域を担当する楽器ですが、ベース・アンプをはじめとするベース用イコライザーが低音域だけでなく幅広い周波数帯域を調整できるようになっているのは、基音だけではなく倍音成分を調整するためであり、まさに音色調整(トーン・コントロール)するためのアイテムというわけですね。

    ハーモニクスが鳴る仕組み

    開放弦を弾くと肉眼でも弦が細かく振動している様子が観察できるかと思いますが、その際ナット付近とブリッジ付近の振幅は小さく、12フレット近辺の振幅は大きいように見えますよね。

    振動状態にある弦の最も振幅の大きい位置を“腹”、まったく振動しない位置“節”と言い、基音は弦の両端だけ節となりますが、倍音は弦の両端と弦長の“整数分の1”となる位置も節となります。

    例えば開放弦を弾いたときの12フレット近辺は基音の腹であり、偶数倍音の節となるわけですが、節は振動していないため触れても弦振動は止まりません。

    ハーモニクス奏法はこの特性を利用し、倍音の節となる部分に触れて倍音のみを残す奏法なのです。前回の当連載で説明したハーモニクス・ポイントは弦振動の節というわけですね。

    ハーモニクスのピッチと平均律

    ところで、各音の音の高さの相対関係を定義したものを音律といい、現代の音楽では平均律を用いるのが一般的です。

    平均律とは1オクターヴの12音を均等な比率で当分したもので、隣り合う音の周波数比はすべて1:1.159(正確には2の12乗根、12回かけて2になる数)となります。

    一方で、ハーモニクスで得られる倍音の各音はすべて基音の整数倍の周波数(純正音程)であり、このように各音の周波数を整数比で定義する音律を純正律といいます。

    当然、純正律と平均律で得られた音程を比較すれば、基音と同音名の音以外はピッチが一致しません。

    ハーモニクスと平均律のピッチ差

    まとめ

    というわけでハーモニクス奏法の鳴る仕組み、ご理解いただけたでしょうか?

    前置きばかりが長くなりましたが、今回の本題はむしろアンサンブル演奏や音作りのために不可欠な前置き部分の情報かもしれません(笑)。

    純正音程の倍音は常に実音に含まれているので、あまり神経質になりすぎてもいけませんが、倍音ばかりが目立つ弾き方や音作りをするとアンサンブル全体のピッチ感が不安定に感じる可能性もゼロではありません。

    基音を重視した弾き方や音作りの具体的な手法を書き出すとさらに長くなるので割愛しますが(笑)、まずは楽器やエフェクターに頼らず丁寧に弾くことを心がけましょう!

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    ◎講師:河辺真 
    かわべ・まこと●1997年結成のロック・バンドSMORGASのベーシスト。ミクスチャー・シーンにいながらヴィンテージ・ジャズ・ベースを携えた異色の存在感で注目を集める。さまざまなアーティストのサポートを務めるほか、教則本を多数執筆。近年はNOAHミュージック・スクールや自身が主宰するAKARI MUSIC WORKSなどでインストラクターも務める。
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