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第3回:ジャミロクワイ『Travelling Without Moving』【ジョー・ダートの「レコードが僕に教えてくれたこと」 】

  • Translation:Tommy Morley

ミニマム・ファンク・バンド、ヴルフペック(Vulfpeck)のベーシストにして新世代のベース・ヒーロー、ジョー・ダートが、“ルーツとなったアルバム”をテーマに毎回1作品を振り返る本連載。第3回では、ジャミロクワイが1996年にリリースした3rdアルバム『Travelling Without Moving』をセレクトしてくれた。

Episode03:
ジャミロクワイ『Travelling Without Moving』
(1996年)

ファンクのベース・ラインの大部分ってオクターヴでプレイすることだからね。

このアルバムからは「Virtual Insanity」の大ヒットが生まれて、僕はすごく若かったけど、当時ラジオで流れまくっていたのを覚えている。MTVでもミュージック・ビデオがたくさん流れていたね(これはインターネット以前の時代では“ヒットの証”だったんだ)。ビデオではジェイ・ケイは動く床の上を踊りながら歌っているんだけど、とてもトリッピーだから(笑)観たことがない人はぜひ観てほしい。この曲で、僕はスカスカながらもグルーヴがあるところにオクターヴを使ったベース・ラインが入ってくる瞬間にすごくグッときて、この“グルーヴとテンポの関係”ってすごく特別なものだと思ったんだ。

ジャミロクワイ「Virtual Insanity」

「Virtual Insanity」はすごく気に入ったんだけど、兄と一緒に街のCD屋に行ってこの曲が収録されたアルバム『Travelling Without Moving』を買ったのは、発売から4、5年経過してからのことだった。それ以来このアルバムを何度も繰り返し聴いて気が付いたのは、ジャミロクワイはスティーヴィー・ワンダー、シック、シスター・スレッジといったアーティストたちが彩った“1970年代、80年代のディスコ・サウンド”を再パッケージして発信していたってことなんだ。ジャミロクワイのジェイ・ケイ(vo)は、ディジュリドゥを導入してワールド・ミュージックっぽいことをしていたことなんかも有名だけど、初期はDJとしての活動もしていたし、シックのようなディスコ・ミュージックを、僕を含めた新たな世代に彼なりの形で伝えてくれていた存在なんだよね。

そしてもちろん、僕はベーシストのスチュアート・ゼンダーのプレイが大好きだ。彼は独特なスタイルの指弾きで素晴らしいグルーヴを生み、決して“弾き過ぎる”ことはなく、輪ゴムのように弾力がある実に心地良いトーンでベースを聴かせれくれる最高のプレイヤーさ。僕は本当にこのアルバムを何千回と聴いたし、アルバムのすべてを愛している。「Alright」でのオクターヴのプレイはベーシスト的には必聴の演奏で、タイム感を損なうことなくこういうプレイをするための練習曲にしてみてほしい。僕自身ファンクをプレイするベーシストに何かを教えるときは、常にオクターヴでの演奏ができるように手の形を準備しておくことの重要性を説いているんだ。ファンクのベース・ラインの大部分ってオクターヴでプレイすることだからね。

ジャミロクワイ「Alright」

作品解説

“アシッド・ジャズ”を世界に広めたミリオンヒット・アルバム

1990年代前半にインコグニートやブラン・ニュー・ヘヴィーズといったバンドとともに、英国発の“アシッド・ジャズ”ムーブメントを牽引した、ジャミロクワイ。ジェイ・ケイ(vo )が1992年に結成し、1993年に1stアルバム『Emergency on Planet Earth』でデビューを果たした。3作目となる『Travelling Without Moving』(1996年)は、全世界で700万枚、日本で140万枚の売り上げを記録。“世界で最も売れたファンク・アルバム”としてギネス登録された。ベーシストのスチュワート・ゼンダーは次作のレコーディング中にバンドを脱退したため、本作がジャミロクワイでの最後の参加作となっている。(編集部)

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【Profile】
ジョー・ダート●1991年4月18日、米国ミシガン出身。幼少の頃からアース・ウインド&ファイヤーやタワー・オブ・パワーといったストレートアヘッドなファンク・ミュージックに傾倒する。ベースは7、8歳頃に弾き始め、中学では学校のジャズ・バンドに参加、その後ミシガン音楽大学に入学し、ヴルフペックのメンバーと出会った。2011年に結成されたヴルフペックはロサンゼルスを拠点に活動し、トラディショナルなブラック・ミュージックを現代的にアップデートするミニマル・ファンク・バンド。

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